#039 : ガチップ

こんにちは!カエデです!


あ!今度はちゃんと紹介しますね!

この子はウィルソン556世。

とてもとても大切な友達の良い形の石です。


きゃあ!?またモンスターだ!

「くらえ!ウィルソン☆ファイヤー!」


ふぅ。なんとか逃げ切れました。

「あ。…ふふ…これはまた良い形ね。あは。こんにちは。ウィルソン557世。」


(カエデのスキル : ウィルソンを投げつける のレベルが 556 になりました。)


「あ!わーい!またレベルが上がった!」

凄いんですよ!このスキルのレベルが上がるたびに狙ったところにウィルソンが飛んでいくようになってるんです!


大抵のモンスターは目、眉間、鼻の下、顎のどれかにウィルソンをぶつければ簡単に逃げられるんですよ!

でも、良い子はマネしちゃダメですよ?



それよりも王都から放り出されて何日経ったのかな…?


お風呂入りたいなぁ…ちゃんとした布団で寝たいなぁ…

草はもう飽きたなぁ…ちゃんとしたご飯が食べたいなぁ…


この街道はどこまで続いてるのかなぁ…



そしてさらに数日後…素晴らしい光景が私の視界に入ったのです!

そう!待望の街です!街を見つけましたー!やったー!


「やったよ!街だよー!ウィルソン835世!」

私は街までスキップしました。その辺のスキップじゃないです。

両手を腰にあてて笑顔で首を左右に振るちゃんとしたスキップですからね!


そして街の入り口には衛兵さんが居ました。

衛兵さんは剣を抜き、身構えていました。


「あの…街に入りたいのですが…」

私はおそるおそる衛兵さんに話しかけました。


「あ…ああ…言葉は話せるのか……み、身分を証明するものはあるか?」

「いえ、ありません…。」


「あんなガチスキップで街に来た奴は初めてでな…少し調べさせてもらうぞ。」

なんということでしょう!ガチスキップが仇になるとは!


「まずは持ち物を確認させてもらう事になるが構わないか?」

「あ、はい。持ち物はこの袋だけです。」

私は唯一の持ち物である袋を見せた。


「この袋には何が入っている?」

衛兵さんはいぶかしげな表情で私に確認してきます。


「少しのお金とウィルソン…いいえ、良い形の石が1000個ほど…」

お金は国外追放される時にヨハネさんがくれました。


「む。確かにこれらは良い形だな。石屋なのか?」

ウィルソン達が褒められた。少し嬉しかった。


「いえ。違います。通りすがりの巨乳です。」

「……そ、そうか…。」


「ん?そういえばお前はどこから来た?」

「はい。オサカの王都からです。」


「え?ここまで徒歩で?1人で?危険なモンスターだらけだが…」

「あ、はい。まぁ…なんとか…」


「まぁいい。他に持ち物は無いのか?」

「まさか!?尋問からのボディチェック!?…そうやってチェックするふりをして…あんなことやこんなことを!?」


「…いや…ただの持ち物検査…まぁ良い。武器になるような物は持って無さそうだしな。通って良いぞ。」


「…それから!それから!そこでジャンプしてみろとか言って胸が揺れるところを…小一時間…見て……あ、あれ?…あ、ありがとうございます!それから武器はこのダイナマイトボディです!」


「…ほぅ。」

衛兵さんが爽やかな笑顔で剣を抜いたので私はそそくさとにげました。


—— こうして私は無事に街にたどり着くことができました!


「街……街!街だあーッ!もうビクビクしながら生活する必要は無いんだ…安全なんだー!」


「わーい!まずは宿屋に!お風呂!ご飯!布団!」

私はガチップで街を進みました。

街がざわついた気がしましたが、嬉しさでそんなの気にもなりませんでした。


そして!とうとう念願の宿屋を見つけました!


「嬉しい!嬉しい!嬉しい!」


私のガチップの速度が上がります!

あとに聞いた話だと、左右に振る首が高速すぎて振ってないのかと思ったという人もいました。


—— その後、私のガチップ姿を見ていた宿屋の店主から怪しいと言われて宿泊NGをくらい、ウィルソンと野宿しました。




(つづく)

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