#035 : スライム

こんにちは!カエデです!


とつぜん異世界に召喚されて、勇者だとか言われました。

そして…どうやら元の世界に戻るには…魔王を倒すしかないようです…。

家族のみんな…元気かな…。

就活頑張って入社したばかりなのに…やっぱりクビかなぁ…。


何よりも親友のサクラに会いたいなぁ…。



そんな勇者としての訓練や勉強が続く日々ですが、今日はモンスターと戦うという実戦訓練の日なのです。


…どうしよう………。


はっきり言って、モンスターと戦うとか無理です!

家に【G O K I B U R I☆】が出現しようものならナベを被ってナベの蓋を盾にして殺虫剤を1本全部使い切るくらい吹きかけるような臆病な私にモンスターを倒せるわけがない!


…でもね…いくら無理と言っても「勇者なので大丈夫。」という謎の根拠で皆さん全然…私の話を聞いてくれないのです…。



今は騎士団長の【ヨハネ】さんと近くのダンジョンに向かって歩いています。


(無口なヨハネさん…気まずいなぁ…何か話しかけた方が良いのかなぁ…)


「あ…今日は良い天気で…」

私が気まずい空気をなんとかしようと、とりあえず無難に天気の話をしようとしたところ、ヨハネさんが話しかけて来ました。

「カエデ様。」

「ひ、ひゃい!」

びっくりして声が上ずってしまいました。恥ずかしい…。


「あそこにスライム型のモンスターが居ますね。準備運動にちょうど良さそうですので、戦ってみましょうか。」

ヨハネさんが前方を指さしながら言いました。


「スラ…えええ…?」

とうとうモンスターが現れてしまいました…。

スライムは人間の私くらいの大きさです。


「ははは。訓練通りにすれば大丈夫ですよ。そしてカエデ様には何よりも勇者としての光の加護があります。スライムくらいならカエデ様に傷一つ負わせることは出来ませんよ。」


「そ…そうは言っても…。」

ヨハネさんはそう言うけど、私には勇者の自覚も無く…。


恐る恐るスライムに近づこうとすると、ヨハネさんが言いました。

「いつ見てもプニプニしてますね。」


この言葉を聞いた私は今までの全てがヨハネさんの演技だと確信しました。

「…は?…プニ!?…えッ!ヨハネさん!?こんな時にどこを見てるんですか!?」

私は胸を隠しながらヨハネさんに言いました。

驚きです!こんな時にも胸です!そうだ!この人も男だった!


「え?スライム…のこと…ですけど…?」

必死に取り繕おうとするヨハネさん。


そんな苦しい言い訳を私が信じるわけがありません。

「わ、私の胸はスライムという名前じゃありませんからッ!」


「は…い…?…私はそこのスライムの事を言ったの…ですが…」


「うそだッ!男はみんなそう言うんだッ!男はみんなッ!例外無くッ!胸を見ながら会話をするんだッ!」


「えぇ…スラ…イム…?」


「そこのスライムと戦うようにと…私に言ったのだって…私のシャツをビショビショにさせて…そして…その濡れシャツに密着した胸を見るためなんでしょう!?…このケダモノめッ!!!」


「ちょ…待っ…お、落ち着いて話を聞いてください…カエデ様…?鎧を着てますよね?」



「それからッ…それからッ!粘液で少しづつシャツが溶けて…あんなことや…はッ…こんなことを!?…ほんでもってッ…ほんでもってッ!……あッ…まさか…風邪をひきますよとか言ってそんなことまでーッ!?…けて……助けてよーサクラーーーーー!!!」


「すみません!なんかすみません!」



—— 今日は中止になった。



(つづいてもいいのですか?) ※問いかけ

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