#031 : 実技試験

辰夫達が確認してきた情報によると、冒険者になるには、登録用紙に自分の種族やレベルを書いて提出する必要があるようだ。


私たちは早速登録用紙に記入を行い、受付に提出した。


 【サクラ / 美しい鬼族 / レベル300 / 備考:Fカップあります。】


 【辰夫 / 竜人族 / レベル330 / 備考:人に優しくされたい。】


 【辰美 / 竜人族 / レベル250 / 備考:サクラさんLOVE♡】


 【エスト / 魔人族 / レベル200 / 備考:魔王だよ☆】


「え?皆さん…?これ…レベルが高すぎませんか?ギルドのエースでもレベル100くらいなのですが…って!……ま、魔王?」


「「「えッ!?」」」

驚く私と辰夫&辰美


「…う!…受付のお姉さん…ち、ちょっと待ってくださいね!あははは…エストちゃん?…ち、ちょっとこっちに!」

私はエスト様の登録用紙を回収すると、エスト様をギルドの隅に連行した。


「…小娘ッ!お前はバカなの!?魔王なんて書いたらパニックになるし、何よりも命を狙われますよ?」


『だ…だって嘘はついちゃダメなんだよ?』


「…ぐぅ…た、正しい…そうなのですが…ここはちょっと誤魔化さないとエスト様の命が危なくなるのです。」


『そっかー…わかったよー…』

(なんでこんな純粋な子が魔王なのだろう…?)


そして私は受付に戻り、訂正した書類を出した。

「ごめんなさいね。この子はちょっと…そういう時期なだけです…」


「あぁ…それなら仕方ないですね…」

私がフォローすると、受付嬢は気の毒な顔でエスト様を見た。

『?』

エスト様はキョトンとしている。


「あと、サクラさん?嘘はやめてください。」

受付嬢は私の胸を見ながら言った。


「…う、嘘じゃ…ないもん……」

私は胸を隠すようにおさえた。


『お姉ちゃん?嘘はダメなんだよ…?』

エスト様が真っ直ぐな目で私を見てきた。

「…嘘じゃ…は、はい…ごめんなさい…。」


最終的に登録情報はこうなった。


 【サクラ / 美しい鬼族 / レベル300 / 備考:Fカップあります。…か?(問いかけ)】


 【辰夫 / 竜人族 / レベル330 / 備考:人に優しくされたい。と…思っていた時期がありました…今はとても幸せです。】


 【辰美 / 竜人族 / レベル250 / 備考:サクラさんLOVE♡LOVE♡】


 【エスト / 魔人族 / レベル200 / 備考:魔王だよ☆ ※そういう時期】


「……えと…うーん……うん!……はいッ!それではこちらで冒険者としての登録は完了です。この後は皆さんの強さを確認する為の実技試験を行います。」

受付嬢は書類を重ねてトントンしながら言った。

「色々言いたいけども!めんどくさいと判断したリアクション!」

私は受付嬢の微妙な表情を見逃さなかった。


「それよりも…実技試験があるんですね…」

「はい。虚偽のレベル報告をする方が稀にいまして…それを防止する為です。」

「なるほど…。」


「試験はギルドマスターと模擬戦をしていただく、実戦形式となります。」


そうこうすると、1人の男がやってきた。

「お!こないだのモンスター領主騒動の皆さんじゃないか!これは楽しみだな!俺の名はモブワン!ここのギルドのマスターだ!宜しくな!」


「はい。宜しくお願いします。」

(…うーん…大丈夫かな?)

私はギルドマスターの命の心配をした。


そして実技試験が始まった。



まずはエスト様の試験だ。

「さぁさぁ!お嬢ちゃん!かかってこい!」

ギルドマスターは子供と遊ぶ気分のようだ。


『いっきまーす!バリア☆ そしてー!ダークアロー☆』


シュンッ…!ボキンッ…!

闇の矢がギルドマスターの剣を破壊した。


「え…魔法のスピード速すぎ…そしてこれ…ミスリル製の剣だぞ…?…これ…高かった…のに………ご!合格!」

エスト様はギルドマスターの剣と心を折って合格した。



そして辰美の試験

(省略)

「ふん。」

「がはッ!…ご!合格!」

ワンパンで合格。



そして辰夫の試験

(省略)

「ふむ。」

「げへッ!…ご!合格!」

ワンパンで合格。



最後に美しい私の試験だ。

「ふふ…おじさま…?…壊せるものならどうぞ。…ヤドカリモード!」

私はヤドカリの殻を作ると、そそくさ と中に入り込んだ。

「…おじさま…ちょっと待ってね?…よいしょっと…」


ゴソゴソ…


『殻の中に入る姿がマヌケで笑える☆』

「サクラ殿らしいですな(笑)」

「こういう締まらないところが良いのです(笑)」


ゴソゴソ…


「さぁどうぞ!」

ヤドカリから声が確認できると、ギルドマスターはヤドカリに攻撃するが、一向に壊れる気配が無かった。


「…はぁはぁ…か、硬すぎる…ご、合格!」


「ふふふ…戦わずして勝つ…私は美しい…。」

私は ニョキっとヤドカリから顔だけ出すとドヤ顔で言った。


『「「その姿キモいけど、そのスキル凄くない!?」」』

一同は驚いた。


「ふふふ!こんな事も出来るのよ!…見てなさいッ!」

調子に乗った私はヤドカリから飛び出し、密かに練習していた憧れのあの技を披露した!


「サクランマン!!」

深紅の貝殻の鎧が私の全身を覆う。


『「「…おおお!?」」』


「……キュイーン…ガチャン!…キュイーン…ガチャン!」

「Hi !! 調子はどう?ジャーヴィス。」

「コンニチハ サクラサマ キョウモ ウツクシイ デスネ」


『「「…おおお!?し、喋った!?」」』


ちなみに効果音含め、全て私の声だ。

何を隠そう私もそういう時期なのだ。

もっと言うと拗らせてさえいる。


「ふふふ…手のひらと足の裏からビームを出せれば完璧。それを応用すれば空も飛べるのよッ!」

『「「…す!すごい!!!」」』


「さらにもう一つ、仮面サクラーというのもあってね?…こうしてベルトに風を当てると…」

『「「…おおお!!!かっこいい!!!」」』


「それからサイク◯ン号というバイクを貝殻でね…」

『「「…バイク?」」』


「早く帰れよ!」

『「「「はい。」」」』

ギルドマスターに怒られたので帰った。



—— こうして、私たちは無事に冒険者となった。




(つづく)

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