#029.5 : 籠
読者の皆様こんにちは。辰夫です。
本日は諸事情によりサクラ殿に代わり、語り部として物語を進めさせていただきますので、宜しくお願いします。
さて、我が主であるサクラ殿が10億リフルの借金を作り、パニックとなり、我と辰美のドラゴン2体をサーカスに売ろうとしたところまでお話しているかと思います。
それではその直後のお話から語らせていただくとしましょう。
…
「そうだ!こうしましょう?…辰夫と辰美をサーカスに売るけど、その後は暴れて脱出して、ここに戻ってくれば良くない?ブレスをゴオオオオオ!って!」
サクラ殿はそう言うと、我と辰美にウインクをしました。
「売るような人のところに、なんでまた戻って来ると思ったのですか!?」
我はサクラ殿に反論しましたが、辰美は頬を赤らめながら言いました。
「…いや…私は戻るかも…」
やはり辰美は壊れてしまったようです。
「…じゃあ…じゃあ…どうすれば良いの……あッ!…竜の鱗って1枚いくらかな?ねねッ!?全身の鱗の数って何枚あるの?1人5億枚あると助かるのだけど…」
サクラ殿は申し訳なさそうに尋ねてきました。
「「殺す気か!」」
「えーん…もう私は終わりよー…終わりなんだわー…地下労働施設で働かされて、夜は班長と外出権を賭けてサイコロを振る人生を送るんだわー…たまに飲むビールを飲んで、犯罪的だ…って言うのよー…これは言わないわけにはいかないのよー…」
サクラ殿は頭を抱えながら部屋を転げ回っていました。
『壊れてるwww』
「サクラ殿……。」
「やっぱり面白いなーw」
「私の知る限り、10億を稼ぐには血液を賭けた麻雀くらいしか無いのよー…そしてその血液を賭けた麻雀は終わるまで20年かかるのよー…」
サクラ殿は次に部屋の隅で体育座りを始めました。
『あははwww』
「何を言ってるのか分かりませんな…」
「守ってあげたい…」
こうして錯乱していたサクラ殿でしたが、その後、懐から一升瓶の【鬼ころし】を出して飲みはじめました。
最終的には酔ったのか泣き疲れたのかは分かりませんが、とにかく寝てくれました。
…
事件はその翌朝に起きました。
『お姉ちゃん!お姉ちゃーん?』
「サクラさん!サクラさん?」
朝からやけに隣の女子部屋が騒がしいので見に行ったのです。
『お姉ちゃん?どうしたの!お姉ちゃんってばー!』
「サクラさん?大丈夫ですか?返事をしてください!」
コンコン…
「…失礼します。いったいどうしました?……なッ…こ…これは……さ、サクラ殿…ですか…!?」
『辰夫!なんとかしてよ!お姉ちゃんが!』
「辰夫さん!サクラさんが!」
「えええ…?」
部屋に入ると、我は驚き…後ずさりをしました。
竜の王である我が…です。
なんと…そこには…部屋には…巨大な【ヤドカリ】がありました。
そのヤドカリはサクラ殿の貝殻生成スキルで作られたものだとすぐに分かりました。
なぜならヤドカリには表札のような物があり【サクラ】と書いてありましたので。これを見たときはイラッとしました。
そうです。
なんと…サクラ殿は引き籠もりはじめてしまったのですー。
話しかけても叩いても返事がありません。
我達は巨大なヤドカリを見つめ、途方に暮れていました。
『うーん。困ったなー…』
「うーむ。」
「サクラさん…」
しばらくすると…ヤドカリがゴソゴソと動き始めました。
そして中から手紙が出てきたのです。
スッ…
『ん…?手紙が出てきた。』
「お?」
「なんですかね?」
エスト様が手紙を拾い上げ、手紙を開封しました。
…その手紙にはこうありました。
【お腹すいた。ご飯まだ?早く持ってきてね。】
『「「知るかッ!!!餓死しろッ!!!」」』
我達はヤドカリを放置して部屋を出て、ジル殿の居る食堂に向かいました。
少ししてからヤドカリが食堂に現れたので、外に投げ捨てました。
先に食堂に居たジル殿が驚いて言いました。
「い、今のヤドカリ…?ま…まさか…サクラさん…です…か?」
ー そんなジル殿の目は大きく見開いていました。
(つづく)
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