#019 : 少年
—— 僕は今日、生まれ変わったんだ。
…
(やーい!やーい!本の虫ー!)
(返せ!返してよ!)
(あっははははは!ほらほら!この本を返して欲しかったらかかって来いよー!)
(それはお母さんとお姉ちゃんが一生懸命働いて…僕に買ってくれた大事な本なんだよ!返して!返してよ!)
…
「…うっうっうっ……ひっく…ひっく…」
僕は丘の上で村を見降ろしながら泣いていた。
(あなたはとても賢い子。だから私たちの仕事の手伝いよりも、勉強してて良いのよ。)
(そうだよ!この家のことはお母さんと このお姉ちゃんに まっかせっなさーい!)
とても優しいお母さんとお姉ちゃんの事を思い出すと余計に涙が出てきた。
「…うっうっ…うううー…!」
(おお!凄いな!こんな難しい本を読めるのか!さすがは俺の息子だ!あ!賢いから違うか!?わははははは!お前は俺の自慢だ!こりゃあ将来は王都で司書かー?わははははは!)
僕はお父さんがいつも
だけど、あの温もりには二度と触れる事が出来ない事が分かるとさらに涙が溢れた。
「……お…お父…お父さん……ううう…お父さん…に…会いたいよ…うっうっ……」
…
どれくらい泣いただろう。
「どうした?少年。」
突然、僕の背中から声が聞こえた。
「…ッ!?」
慌てて涙を拭き、振り向くと、そこには鬼の女の人がいた。
僕はすぐに最近村に引っ越してきたサクラさんだと分かった。
「な、なんでも…ないです…。」
涙の跡を見られないように伏目がちで答えると、サクラさんが僕の方に近寄ってきた。
「散歩してたら森の中に1人で入っていく子供がいたのよ。でね…危ないよって追ってみたら………へぇ。キレイな景色ね。村が見渡せる…こんな場所があったのね。」
サクラさんも村を見降ろしながら言った。
「…あら?本を読めるのね。まだ小さいのに凄いじゃない。」
サクラさんはボロボロにされた僕の本を見て言った。
「……本が…本が…好きなんです…。」
僕は風になびくサクラさんの長い黒髪に目を奪われながら答えた。
「そっか。いじめられてた……ってとこかな?…ホント…どこの世界も変わらないのね…。」
「……え?…どこの世界…も?…それってどういう事ですか?」
「あぁ…ふふふ。私はね…転生者なのよ。……これでも前の世界では人間だったのよ…。」
サクラさんは少し寂しそうに言った。
「…ええッ!?す!凄い!転生者に会ったのは初めてです!」
「ふーん。その口調からすると…私の他にも転生者が居るかもしれないってことか…。」
「はい。古い言い伝えとかは残っています。」
「へぇ。転生者を探してみるのも面白いかもな。」
サクラさんはボソッと言った。
「…あ!あのッ!よ…良かったら…前の世界の話!教えてくれませんか!」
「うん。いいわよ。」
そう言うとサクラさんが僕の隣に座った。
僕はドキッとした。
そしてサクラさんからはとてもお酒の臭いがした。
「どこから話そうか…私の前の世界は…そうね ーー…」
そして僕はサクラさんの前の世界…地球の話…日本の話を聞いた。
時間も忘れるくらいに夢中になって聞いた。
…
「おっと。私はこれから用事があるから長居はできないのよね。」
「はい!是非また話を聞かせてください!本当に凄かったです!プロレス!お笑い!漫画!日本酒の種類!うわー…僕も日本に行ってみたいなー…」
「こんな話で良いならいつでもいいわよ。その代わりね?私にこの世界の
「そっか!転生者ですもんね!喜んで!」
「あ…まだ君の名前を聞いてなかったわね。私の名前は…」
「はい!サクラさんですよね!村ではとても有名ですよ!」
紅い瞳を見つめながらサクラさんの言葉を遮った。
「まぁ…鬼だから目立つしね。ふふふ。」
サクラさんは少し照れ臭そうに言った。
「僕の名前は
「……また【
サクラさんは憤慨して地団駄を踏んだあとに、僕に変な名前を付けた。
二重人格なのかな?とも思った。
でも…そう——。
僕は今日…生まれ変わったんだ——。
—— 後の世の歴史に
(つづく)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます