#016 : 火竜

目的の北の山が見えてきた。


山からは煙がのぼっている。

「ん…火山…なのか…」

「それで火竜が棲みついたわけですな。」


「なるほど…ね。…さてっと、山登りは疲れるから辰夫に乗っていきますか。」

「そうですな。我も登りたくは無いです。」


「ドラゴンに戻って、私を乗せても空は飛ぶなよ!高いところ怖いんだから!歩けよ!貴様!その足はなんの為に付いてんだッ!?」


「り!理不尽!」


その後、口論を重ね…


「…だから!」

「…いや!そもそも!……なので!」

「……じゃあ!……そうする!!!」


…仕方なく低空飛行するところで折り合いをつけたので、山を登った。



山頂付近にまで行くと、冒険者パーティーが火竜と戦っているのが見えた。


「ん…あの3人は…?」

私はすぐにリンド村の酒場で絡んできた冒険者達だと分かった。

何故なら私の復讐リストに載っているからである。

嫌いなヤツには一生をかけて嫌がらせをするのだ。


「うーむ。敗戦色濃厚ですな。」


「じゃあ☆負けるまで待ちましょう。」


「サクラ殿…。」


「だって嫌いな奴らだし?…あ!………チッ!」

火竜がブレスの溜めに入り、冒険者パーティーがいよいよ壊滅しそうになった瞬間!


ー 私は辰夫から飛び降りていた!


「…はは。ですよね。」

そう言うと、辰夫の口角が上がっていた。


「美しく可憐で儚く!そして…とっても婉容でお淑やかで奥床しいッ…私のーーーーー!んッ!!スキル 肉体強化ッ アーンド 怪力全開ッ!右ストレートッ!んーーーーー!どっせーーーーーいッ!」


ズドンッ………


右ストレートが火竜の顔を打ち抜いた!

火竜はその衝撃で弾き飛ばされて行く!


「凄い!ここまで形容詞が全く当てはまらない攻撃は始めて見た!」

辰夫はこれは形容詞ではなく、掛け声の一部なんだと思う事にした。


すぐさま弾き飛んだ火竜に視線を移す。

「良いツッコミね辰夫!ノってきたわよッ!!!縮地ッ!」


シュッ…!


弾き飛ぶ火竜に一瞬で追いつき、火竜の右足を掴み内側にきりもみ状態で倒れ込む。そう。ドラゴンスクリューだ!


「むっとーう☆けぇーいじッ!!!!!おつかれッ!!!!!」


ドガーンッ………

火竜の巨体がスクリュー回転しながら、地面に突き刺さった。


「ッはーはーはははははーッ!またまた奇襲大成功ッ☆ ッてゃあつぉーァッ辰夫ーーーーーッ!!!!!」


「は!はいッ!」

瞳孔が開き、アドレナリンが完璧にキマって戦闘ハイになってる鬼の女がこちらを睨んでいる。


どっちがモンスターだ?敵なんだ?辰夫は震えが止まらなかった。

下手な返答をすると、次に地面に刺さるのは自分だ…辰夫の本能が警鐘を鳴らす。


「本物のドラゴンにドラゴンスクリューをキメたったわー!異世界広しと言えども私が世界初なんじゃないのー!?ふはーはー!これがホントのドラゴンスクリューよッ!」

私は手をパンパン叩きながら起き上がり、辰夫に言った。


「勉強になりました!ありがとうございます!」

辰夫はこの場をどう切り抜けるかだけを考えていた。



地面に深く突き刺さった火竜が顔を出す。


「…ぐうぅ…いったい…何が起きた…?ダメージで…か、身体が動かん…」

声からするとメスのようだ。

「お?メスなのね。」


火竜を覗き込みつつ、抜いた刀を火竜の目の前に突き出しニヤリと笑う。


「あはは!火竜さん!これでテ,チェックメイチョ!…よ…」


「え…まさか…最高の見せ場なのに…噛ん…ええ…?」

火竜は怯えた。


「刀は脅しに使うだけ!脅迫する時に抜くだけ!やっと理解した!」

辰夫は手をポンと叩いた。



「ふふ…戦う私は美しい……さてと、貴女の選択肢は私の配下になるか死ぬかよ。」

火竜の頬に刀をゆっくりと当てる。


「噛んだのを無かったことにしている…」

火竜は心の強さに怯えた。


(…いいからッ!…頷いとけッ!…はやくッ!)

辰夫は火竜にとにかく命が惜しくばYESと頷けと合図を頑張ってる。


火竜は目をつむり、身体の力を抜いて言った。


「…そこにいるのは竜王リンドヴルムか?…はは…どう足掻いても詰んでるな…。ふん。配下にでもなんでもなるわ…好きにしろ…」


「ふふ。よし。決まりーっと!んッ…!よいしょっと!………よし!お前の名前は?私はサクラ、こいつは辰夫よ。」

私は地面に埋もれている火竜を引き抜きながら、自己紹介をした。


「え…竜王リンドヴルムが…え?…た、辰夫?…わ、わわ、私の名前はドライグよ。」


「ふーん… 【グ】が言い難いから で良いな?な?辰美。」


「えぇ…辰美…?」

「……。」

辰夫は下を向いている。


そんなこんなで火竜の辰美を配下に従えた。



ー その時である。


(テレレレッテッテッテー♪)


(サクラのレベルが 295 に上がりました。)


(サクラは を習得しました。)


(サクラは を習得しました。)


(スキル のレベルも最大に達したけどwww の進化しないの?www)


(引き続き スキル 調 も進化が可能ですwww実行しますかwww)


「進化しねーよッ!」

天の声に煽られながらレベルが上がった。



「…ん?」

私は辰美の埋まっていた地面の穴から水が滲み出て来ているのが見えた。



「お…んー…?………あッ?…た、辰夫!ちょっとこっち来て!はやくはやく!」

「あ、はい。どうしました?」



辰夫が近寄ってくると、すかさず…

「辰夫スクリュー☆サクラ式ーッ!どっせーい!」

辰夫の右足を掴み内側にきりもみ状態で倒れ込み、ドラゴンスクリューをキメた。


「グレートムタッ!」

辰夫は謎の奇声をあげ、錐揉み回転しながら火竜が刺さった更に深くに突き刺さった。



…ドーンッ…!



「え…仲間…じゃ…なかったの…?」

辰美は怯えた。



辰夫が刺さった地面からさらに水が湧き出してくる。


「わ!わ!サクラ殿、これはお湯ですぞ!」

「やっぱり!?これ下に温泉があるんじゃない?」


「よし!辰夫!もう一回やろう!」

「ゲーム感覚みたいに言ってる!無理です!」


「じゃあ辰美!はやくはやく!」

「いや、今はちょっとお腹が痛くて…」


「じゃあお前たちが掘れッ!むきー!」

「「…はい。」」


辰辰コンビが穴掘りをしていると、先程の冒険者達が近寄ってきて話しかけてきた。

「あ、あの…」


「なんだ居たのか三馬鹿。感謝しろよ?私が助けなければ死んでたぞ?お?ん?金輪際、私に足を向けて寝るなよ?私はどこに居るか分からないだろうから毎日逆立ちして寝ろ!」


「「「ありがとうございました!」」」


「え?ん…あ、はい。」

私は完全に意表をつかれた。


1人が言った。

「その強さに惚れました!俺たちも姐さんの配下にしてください!」



「え?いや…要らない…」

私は最高に不満な顔をした。


「絶対に役立ってみせます!」


「………うーん………?ま…まぁ、人間の配下が居ても良いか。よし。私はサクラ。お前たちの名前は?」


「スヴィーヴです!」

「セヴァスヴァンです!」

「ヴァイヴゥヴルムです!」


「だから!【ヴ】が言い難いんだわ!お前らワザとだろ!!親を連れて来い!!!」


「「「親は関係ありません!親の悪口はやめてください!」」」


「あ……そ、そうだよね…ごめんね………じゃあお前たちはイチロー、ジロー、サブローな。」


「「「えぇ…」」」


「まずはそこのドラゴン達と穴を掘ってこい。」



ー そして数時間後、2匹と3人は温泉を掘り当てた。



(つづく)



ーーーーー

★勇者・サクラの現在のステータス

  ・名前:サクラ

  ・種族:鬼

  ・レベル:295

  ・スキル:怪力 (Lv295)

        →肉体強化 (Lv25)

       暴食 (Lv22)

       冬眠 (進化可能)

       体温調節 (進化可能)

       光合成 (進化可能)

       格闘 (Lv90)

       刀技 (Lv60)

       縮地

       辰夫シールド

       エストミサイル

       辰夫ロケット

  ・称号:ぺったん鬼女

       → 全ステータス 20% ダウン

      勇者

       → 成長補正[極]

       → エクストラスキル解放

      竜王を従えし者

       → 全ステータス 50% アップ

       → エクストラスキル解放

      火竜を従えし者 ←New

       → 全ステータス 30% アップ

       → エクストラスキル解放

  ・魔法 : ライトアロー(光)

      フラッシュ(光)

      ライトヒール(光)

      ライトレイン(光)

  ・エクストラスキル :

      光魔法解放(勇者専用)

      神眼(Lv30)

       → 一定確率で相手のステータスを確認可

      光の加護

       → 徐々に傷が回復する

      聖なる加護

       → 徐々に魔力が回復する

      紅葉 ←New

       → 全身に火を纏い火属性となる。さらに火属性攻撃無効

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