#015.5 : 乱れる眼

辰夫と北の山の火竜退治に向かっているところだが、私にはどうしても気になる事があった。


それは、先日の冒険者とのトラブルで感じた である。


「辰夫?先日ね。冒険者と揉めたのですが、その時、冒険者の攻撃がゆっくりに見えたのよ。そういうのに何か心当たりある?」

私は歩きながら腕を組むと首を傾げた。


「ふむ。…聞いたことはありませんな。」


「ちょっと気持ち悪いのよね…。うーん…スキルの神眼の効果かなー?とは思ってるんだけどね。」


「なるほど。確認してみてはいかがですかな?」


「あれから何回も確認したんだけどねぇ……うーん…まぁ見てみるか……ぁ!ステータスーッ!オープンッヌ!」

私は立ち止まり、ステータスウインドウを表示した。


「!?」

辰夫はビクッとした。



ステータスウインドウが目の前に表示され、スキルの神眼を見てる。

やはり特に気になる説明は無い。


「うーん…何回見ても同じ…………ん…?…これは…タッチパネル………?もしや?」



私は恐る恐る…二本指でタップしてみた。

すると、神眼のプロパティを確認する事ができた。


「マルチタッチ対応デバイスッ!!」

私は第七の世代の粗い品を処理するようなツッコミをした。


「ええっ…ざ、雑な設定!!」



プロパティを表示すると、そこには衝撃の事実が記されていた。





私は生来からの酷い乱視持ちなのだ。

普段はメガネをかけないとマトモに物が見えない。


「あッ…そう言えば…めっちゃ目が見えるッ!?」

私は目をパチクリし、周囲を見回しながら言った。


「気付くの遅ッ!?」


「辰夫と戦った時も、なーんか周りがよく見えるなー?身体がいつもの倍は軽いなー?と思ってたのよね。」


「乱視が治ると倍強くなるのですか!?」


「そりゃあ…他を気にしないで済むからね。当然だと思うけど?」


「め、めちゃくちゃだ…」


「乱視が治ったのなら、攻撃もゆっくり見えるわよね!あー!スッキリした。」


「………。」

この人は化け物だ…絶対に逆らってはいけないのだと辰夫は心に刻んだ。



「うーん!良い天気!よーし!光合成をいっぱいしちゃうぞー♪」

「…!?」(光合成スキルを受け入れてる!?)



私たちは旅路をゆっくりと進んだ。

春の陽がとても優しかった。



(つづく)

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