#006 : 地上へ

レベル上げを開始してから数日、エスト様と私は順調にレベルが上がっていた。


今日もこれからレベル上げに出発するところだが、その前に私はずっと抱いていた疑問を思い切ってエスト様にぶつけてみた。


「エスト様、質問宜しいでしょうか?」

『うん☆ いいよー☆』

エスト様はそう答えると紅茶を口に含む。


「あの…私…モンスターを全て素手…主にパンチで倒してますが…なんというか、その…武器とかないんか?手荒れが酷いんだわ。ここはブラック企業なんか?…お?」

私は地団駄を踏みながらエスト様を問い詰めた。


『…ファッ!?』

エスト様の表情から『た、たしかに!』と聞こえた気がした。


「まさか、忘れてたとかその発想は無かったとか言いませんよね?」

満面の笑みで問い詰めた。


『…。』

エスト様のティーカップが小刻みに震えている。


『ごめーんね☆ 忘れてた☆てへぺろ☆』

「あ"?」

私の怒髪が天を突いたのは言うまでも無い。

今まで素手で戦わされていたのである。


「こ、こっちに武器庫があるから、好きなの選ぶと良いよ☆」

「ほーん…」



エスト様に案内され武器庫に入ると、そこには高級そうな武器・防具が並んでいた。


中を進んでいくと、立派な台座に刺さっている剣があった。気のせいか光を放っているようにも見えた。


『あ、これは勇者にしか抜けないと言われてる という聖剣だからお姉ちゃんには関係n…


スポッ!!!!!


「あッ…」

『あッ?』


エスト様が説明をし終える前に私はエクスカリバーを抜いていた。

だって勇者だし。抜けるよね。


ペカーーーーーッ☆


エクスカリバーから溢れる光がとても眩しい。


『えっ?』

「えっ?」


ペカーーーーーッ☆


エクスカリバーは静かに私たちを照らしていた。

『…。』

「…。」


「シ…シュッ!」

すかさず私は レベル 135 の超高速ジャブを繰り出した。


「エクスカリバッ☆」

エスト様の顎から チッ という掠れた音が聞こえると、エスト様は気絶した。


(テレレレッテッテッテー♪)

そして天の声が脳内に鳴り響く。


(サクラのレベルが 140 に上がりました。)


(サクラは を習得しました。)


(サクラは を習得しました。)


「おおう…なんかチートっぽいのきた…」


(スキル のレベルが最大に達しました。 の進化が可能です。実行しますか?)


「しねーよ!レベルという概念があったのに驚きだよ!」


私は天の声にツッコミを入れると、急いで エクスカリバー を台座に戻し、エスト様が目覚めるのを待った。



『う……ん…?…あれ…?私…寝てた?』

「おはようございます。急に寝るのでビックリしました(笑)」

エスト様が目覚めた。良かった。


『…えっと…お姉ちゃん?…エクスカリバーを抜いて無かった?』

「いいえ。夢でも見たのかと(笑)」

私は笑顔で答えた。


『そうか…夢だったのかな?…うーん? まぁいいか☆そんなわけないしね☆ じゃあ武器を選んじゃおうか☆』

「はい。そうですね。」


私はやっぱり こいつ ちょろい と思った。


そして私は数ある武器・防具の中から のような服を選んだ。


「ふふ…鬼と言えば日本。日本と言えば刀と着物。」

『かっこいー☆』


私は格好から入るタイプである。


「小娘が!美しいと言いなさいッ!」

『怒りの沸点が分からないよ…』


『あとさ?お姉ちゃん…私のアゴ狙わなかった?』

「いいえ。」



こうして私は装備を得た。

これで手荒れとはおさらばである。


そして私はもう一つ提案をしてみた。


「エスト様。私の配下を集めるためにもダンジョンの外に出てみませんか?」

『え…?私の……配下…だよね…? …えっと!えっと!うん、そうだね☆ レベル上げも兼ねて行ってみようか☆』


「お風呂にも入りたいし、調味料とかも欲しいし、布団でも寝たいので、人間の街を襲撃しましょう。汚物は消毒ですよーヒャッハー!!!!!」

私は最高の笑顔で素晴らしい提案をした。


『お姉ちゃん…?』


「冗談ですよ。そうだ。エスト様は転移魔法とか使えないのですか?」


『使えないのよねー☆』


「ちっ…」

思わず舌打ちが出た。


『えっ?』

「えっ?」


「まずはこのダンジョンのモンスターを完全に制圧し、死兵にして人間の街を襲わせましょう。胸に七つの傷の男に告ぐ!貴様が逃げている間、この処刑は続く!ヒーハーーーーー!!!!!」

私は最高の笑顔でまたもや素晴らしい提案をした。


『お姉ちゃん…?』

「冗談です。」



—— ここはダンジョン最深部である。

こうして私たちはダンジョンを逆に攻略する事になった。



(つづく)



ーーーーー

★勇者・サクラの現在のステータス

  ・名前:サクラ

  ・種族:鬼

  ・レベル:140

  ・スキル:怪力(Lv140)

       暴食(Lv7)

       冬眠(進化可能)

  ・称号:ぺったん鬼女

       → 全ステータス 20%ダウン

      勇者

       → 成長補正[極]

       → エクストラスキル解放

  ・魔法 : ライトアロー(光)

      フラッシュ(光)

      ライトヒール(光)

  ・エクストラスキル :

      光魔法解放(勇者専用)

      神眼(Lv1)

       → 一定確率で相手のステータスを確認可

ーーーーー


ーーーーー

★魔王・エストの現在のステータス

  ・名前:エスト

  ・種族:魔神族

  ・レベル:50

  ・スキル:魔力増幅(Lv50)

       魔法耐性(Lv25)

  ・称号:魔王

       → 成長補正[極]

       → エクストラスキル解放

  ・魔法 : バリア(無属性)

      アロー(光を除く全属性)、ほか

  ・エクストラスキル :

       ヘル・シール

       → 全魔力を消費する事で一定確率で勇者を地獄に封印可

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