#003 : レベル上げ

魔王なのにこれからレベル上げしなければならないという超絶めんどくさい事実を告げられ、私は愕然としていた。


「え…レベル上げ……ですか……?」

『そうだね☆』


「私の嫌いな言葉は一番目が で二番目が なのですが…」

『KUZUGA☆』


『まぁいいや、まずは現状を確認してみようよ。ステータスオープンって言ってみて☆』


「は?なんでですか!?いやですよッ!!」


『めんどくさいなお前ッ! 良いから言えよッ!』


「仕方ないですね… ぁ!ステータスーッ!オープンッヌ!」


『ノリノリやないかーい☆』

このツッコミはまだまだだな…ちゃんと教える必要があるな…と私は落胆した。


そして、私の目の前にゲームに出てくるようなウィンドウが開かれた。

「おおー…凄い…!」



ウインドウには私のステータスのようなものが書かれている。


——————

   名前:サクラ

   種族:鬼

   レベル:1

   スキル:怪力 (Lv1)

       偏食 (Lv1)

   称号:ぺったん鬼女

      →全ステータス 20% ダウン (笑)

——————


「oh …。」


「可憐な私が怪力?そして…ぺったん…? 20% ダウンとか酷すぎない…?」

私は目を疑った。システムにハラスメントされているのである。シスハラである。


まぁこれで異世界無双はできないと理解できた。

私はもともと最強とかチートとかには全く興味がない。

いかに 面白おかしく生きるか巨乳になるか?私はこれにしか興味がないのだ。

そして、今の私にはなんといっても最強の魔王様がバックにいる。

私自身は弱くても全然問題無いのだ。

魔王様!ファイト!


とは言え、これから ちまちま とレベル上げをするのは性に合わない。

そこで、エスト様に とある提案をしてみる事にした。


「エスト様。レベル上げの件ですが、私に考えがあります。」


『なんだーい?聞くよー☆』


「エスト様は魔王なので、言わば超レアキャラなのです。だから経験値とか凄いと思うのです。そこでですね…。2人でスパーリング的な事をしてたらレベルが上がらないですかね?」


『なるほど。もっともな意見だね☆ いいよ!魔法でバリアを張るから思い切り殴ってみなよ☆』


「思い切り……ですか? 良いのですか?」


『レベル 1 の鬼に殴られたところでなんともないよ☆』

エスト様はふんぞり返り余裕の笑みを浮かべている。


「めっちゃフラグが立ってますけど…」


『フラグ?』


「未来予知みたいなものです。」

『ほーん☆』

私は面倒な事は雑に流す事にしている。


「では………思い切り…いかせてもらいます。」


『あいよーこいこい☆』


私は昔、読んだ事のあるパンチの聖書の漫画の一文を思い出し、呪文のように唱え………


「ぶつぶつ… ぶつぶつ… 明日のためのその1 …やや内角をねらい…えぐりこむようにしてッ!…打つべしッ!」


………パンチを放った!!!



ドガアッッッ!!!!!


—— なんと!

私のパンチは魔法バリアを貫通し、絶妙な角度でエスト様のアゴを貫いた。



『ジョーッ☆』

エスト様は謎の奇声と共に地面に膝をついた。


『…ホセ………メンドーサ…☆』

そしてまた謎の奇声をあげるとそのまま 良い表情かおをしながら地面に倒れ込み、失神してしまった。


私はそんなエスト様を見下ろしながら、泪橋のおやっさんに感謝していた。



—— その時である!



(テレレレッテッテッテー♪)


「わわッ!」

私の頭の中でファンファーレが流れ、アナウンスが聞こえた。


(サクラのレベルが 100 に上がりました。)


「ひゃ…?いーや!上がりすぎー!エスト様!美味しすぎぃー!」


(サクラは魔王を倒したので「 : 」を獲得しました。)


「ん"…んん…?…勇者に…なった…?」


私は考えを巡らせる。


「うーん…?……なるほど。魔王を倒したのだから勇者だよね…。」

私は手をポンと叩いた。納得の理由である。


「そうだ。ステータスを見てみよう。 ぁ!ステータスーッ!オープンッヌ!」


目の前にステータスウインドウが展開される。


——————

  名前:サクラ

  種族:鬼

  レベル:100

  スキル:怪力 (Lv100)

      暴食 (Lv1) ← New ※偏食が進化

  称号:ぺったん鬼女

     →全ステータス 20% ダウン (笑)

     勇者 ← New

     →成長補正[極]

     →エクストラスキル解放

——————


「oh …。」



—— かくしてここに勇者が誕生したのである。



「えぇぇ…めんどくさ……。」



(つづく)

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