第5話 魔法があるなんて
夕方になり暗くなってきたため、ナコたちは自宅に戻った。
「ナコ様、ソフィー様おかえりなさい。まだ皆様は戻ってきていませんので、先に水浴びを済ませてはいかがでしょう?」
「サラ、ただいま!じゃあそうしようかな。」
「では、ソフィー様は私がお手伝いいたしますね。」
「うん、サラありがとう!」
ミズルとわかれて水浴びをしながら、サラにトイレについて聞いてみる。
「ねえ、サラ」
「ナコ様、なんでしょうか?」
「王都のトイレとうちのトイレはやっぱり違うのかな?」
「どうかしましたか?」
「ふと思っただけなんだけど、違うの?」
「そうですね。違いはあります。」
「やっぱり」
「といっても、貴族であるかどうかによっても変わってきますが」
「例えば?」
「例えば…王族や領主様になりますと、排泄物からも体調などを観察することもありますので、引き出し式のトイレを使っております。しかし終わればすぐにクリーンで掃除します。」
「なるほど」
「次に、貴族の方々は引き出し式などにはせずに、排泄後すぐにクリーンをかけることが多いです」
「………」
「それ以外の者たちでいいますと、王都では、堆肥として使うことはありませんので、定期的に掃除をしているようです。ですが、王都以外の村や町では、我々のように堆肥として使用することが多いかと思います。」
「うーん、えっと…」
「はい、なんでしょう?」
「クリーンって何?掃除するってこと?」
「そうですよ。クリーンという魔法で色んなものを綺麗にすることができるのです。」
「ま、まほう…魔法があるの?」
「はい、ございますよ」
魔法がある世界であることに衝撃を受けると同時に、自分も使えるのかもしれないと興奮状態のナコ。その後も、水浴びをしながら魔法について話を聞く。
魔法とは誰でも使える可能性がある。人の身体には魔素を作る器官があるが、魔素の保有量は人によって異なる。人が使う魔素の塊を魔力という。王族や貴族は、代々保有量が多く、魔法が使える者が多いとのこと。つまり、昔から魔力が多いものが魔力の少ないものを守り先導してきたため、今の貴族社会が生まれたのである。
「あれ、ということはお父様は一応貴族でしょ?魔法使えるの?」
「はい、使えますよ。なんならこの村の中では魔力保有量が多いはずです。そもそもカズマ様と一緒にこの村についてきた私たちは皆、魔法が使えます。」
「そうなの?!じゃあ、トイレの掃除とかもできるってこと?」
「人には魔法の適性というものがございます。適性ごとに使える魔法が違うのです。そして、魔法適性がある者は待遇がいいこともあり、王族や貴族に使えるか、冒険者登録して、フリーで働くことが多く、フィール村のような村での定住は難しいのです。」
「え、じゃあ、サラも王都にいたかったの?」
「いえ、私はケリーと結婚していたのもありますが、なによりカズマ様には家族ごと命を助けていただいた恩があるのです。だから魔法が使える云々は関係なくこの村で皆様のお力になりたいと思っております。」
「そうなんだね。魔法の適性っていうのはなんなの?」
「魔法には火属性、水属性、緑属性、地属性、風属性、光属性、月属性、無属性の8つに分かれております。その属性ごとにまた魔力量ごとに使える魔法も異なります。」
「じゃあ水魔法なら水浴びも楽になるね!」
話を聞いていたソフィーが楽しそうに話す。
「そうですね。」
「でも、みんなが魔法を使っているところなんて見たことないよ?サラおばさんはどんな魔法が使えるの?」
「あら、先ほどソフィー様がおっしゃっていっていたではありませんか。この屋敷で使う水は私が魔法で用意しているのですよ。といっても、水を出すだけなら大丈夫ですが、それを別の用途で使うことは魔力量的にできません。」
「そうなんだ。でも、すごいねサラおばさん!いつもありがとう!」
「とんでもございません。ですが、家族以外の者に、魔法属性を聞くことは基本的に失礼にあたりますので、お気をつけくださいね。」
「「「はーい!」」」
魔法についていろいろ聞いたところで服を着て水浴び場を後にした。
夜になり、カズマやリナが帰ってきて、みんなで食卓を囲んでいると、カズマがナコに話しかけてきた。
「ナコ、体調は大丈夫か?家に帰れなくてすまないな。」
「大丈夫ですよ。もう痛いところもないし、よくなりました!お父様とお母様は、何をしてきたのですか?」
「我々は、柵の外に広がっている畑と牧場に行っていたんだ。」
「なんでですか?」
「野菜はうまく育っているか、動物たちに異変はないかを見てきたんだ。他にも民が何か不満や不安を抱えていないかも確認する必要があるからな。」
「ふーん、何か問題はあったの?」
「順調だったよ。しかし順調すぎて、人手が足りないらしい。だから見回りなどがない兵士とともに手を貸していたんだ。」
「それもお父様の仕事なの?」
「本来の貴族としては、あまり褒められたことではないな。嫌がる貴族も多い。でもな、私はまだ小さいこの村だからこそ、民と多く関わっていきたいのだ。村が大きくなるにつれ、やる仕事も増えて現場に行けなくなるだろう。だから、今のうちに村中を見て回っておきたいんだよ。」
貴族は自身の手を汚すことをよしとしない者が多い。しかし、兵士だった時代に平民たちと接することが多かったカズマは、村人たちをとても大事にしている。ナコはそんなカズマを誇らしく思うのだった。
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