第3話 部屋の外に出てみよう
知識を増やすためには、実地が一番だ。村の中を見てまわろう!そう考えていると、扉の向こうから、ナコを呼ぶ声が聞こえてきた。
「ナーコー、体調はどうかな?少し良くなってきた?」
そう言いながら次男のトーマが扉から顔を覗かせている。
「トーマお兄様!大丈夫だよ、頭痛いのもなくなったからちょうど起きようと思っていたところ!」
「そっか。よかった。なかなか起きてこないから心配したんだよ。お腹減ってない?サラおばさんが、お粥を作ってくれたんだけど、食べられそう?」
「わー、食べたい!ずっと寝てたからお腹空いてたんだー」
「部屋まで運んでこようか?」
「もう起きられるから、リビングに行くよ!」
トーマと2人リビングへ行くと、家事をしていたサラが振り返る。
「あらあら、ナコ様。おはようございます。体調はいかがですか?」
「サラおばさん、心配かけてごめんなさい。たくさん休んだからもう大丈夫だよ!」
心配してくれるサラにそう返すナコ。サラはカズマの部下のケリーの奥さんだ。カズマはこの村を賜った時に数人の部下を連れてきており、その中の1人がケリーである。
どういう経緯でこの村に来ることになったのかは聞いていないが、今はカズマの家で乳母件家政婦のようなことをしてくれている。
フィール村は決して裕福ではないため、村長やその嫁だとしても、指示を出すだけと言うわけにはいかないのである。
カズマとリナは村のみんなと働いているため、サラが自分の子どもたちも含めて、ナコたちの面倒も見てくれている。
「他のみんなは?」
「グレイ様はカズマ様たちと畑の様子を見に行っています。ソフィー様はうちの子たちと一緒に広場に遊びに行っていますよ。さあさあ、お粥をどうぞ。熱いから気をつけてくださいね。」
そんな話をしながら、お粥をよそって持ってきてくれた。
「ありがとう。いただきます。」
(うーん、薄味。前世の記憶が邪魔をして薄く感じてしまう。贅沢だよなあ)
味付けに使うだろう調味料は高く、そもそも調味料自体が数が多くないのだろう。自然の味であることが多い。
村長の娘であるナコが食べるものは、この村としては豪華な部類になる。それでも、たくさんの美味しいものを前世で食べていたナコとしては、物足りなく感じてしまう。
(薄いだけで美味しいは美味しいんだけどね。この味もどうにかしたい。改善したいことはいっぱいだなあ)
そんなことを考えながらもしっかりと完食したナコ。サラはみんなのことを考えてなるべく栄養を取れるものをと考えてくれている。そんなサラへ感謝の気持ちをちゃんと伝えるナコ。
「ごちそうさまでした。すごくおいしかったよ!サラおばさんのご飯はいつ食べても元気になる気がする!」
「そういってもらえて、こちらこそありがとうございます。夕飯も楽しみにしていてくださいね。」
「ありがとう!ちょっと散歩してくるね。」
「はい、ナコ様お気をつけて。念のためゆっくり過ごしてくださいね。」
「はーい!いってきまーす!」
ご飯を食べた後は少し家の中の探検をすることにしたナコ。ナコの家は平屋の一戸建てである。というよりできたばかりの村では二階建てなどはまず見られない。しかし、辺境の村では土地が余っているため、平家としては大きい。
その家の中には各自の部屋とキッチン、リビング、トイレ水浴び場など一通りのものが揃っている。
その中でナコの興味を惹くもの、カズマの書斎である。書斎には、大事な書類以外に本が保管されている。ナコはその本が読みたいのである。
「まあ、そもそもお父さんが入れてくれないし、文字も読めないんだけど。」
本には村の生活水準向上に必要なものがたくさん書かれているはずである。そのためなによりも本が読みたいナコ。生活水準をあげるための第一目標として、文字を読めるようになるという目標を立てるのだった。
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