第2話
車に乗り込んだ戸田は、好きな海外のアーティストの楽曲を聴きながら車と心を走らせた。ついに自分が…!夢が叶った!などと考えていた。微塵もバディのことや事件のことなど今の戸田の心にはなかった。そんなことを考えていたらすぐに現場に到着してしまった。
現場は普通の閑静な住宅街の一軒家。上司からの簡単な説明によると、ここには夫婦とその息子と祖母の4人住んでいたらしい。そして今回その息子が夫婦を殺害したということだった。通報者は祖母。犯行に及んでいる姿を見て通報をしたそうだ。なぜ祖母を殺さなかったのかは分からない。とのことだった。他にも殺害の際の異常行動が〜や、遺体は目も〜などと上司が言っていた気がするが、浮かれていたため聞いていなかった。そんなこんなで現場に入ろうとすると突然
「おい」と、低く太い声で呼び止められた。
もしかして…と戸田は思い振り向くと予想は的中し、稲毛がそこにいた。
「あ、稲毛さん今回はよろしくお願いします」と縮こまりながらも挨拶をすると、ふん。とだけいい現場へ入ってしまった。何がしたかったんだと思いつつ戸田もついていこうとした。すると稲毛が
「お前…覚悟はできてるんだろうな。今回が初めてだと聞いたが今回は俺でもキツいと思った現場だ。それでもお前は現場に入るか?」と聞かれた。
戸田はよく考えもせず。自分が殺人事件に関われるという気持ちだけで、はい。と答えてしまった。それが戸田のここ数年の中で一番な不幸だったと後々実感した。
中に入るとまず形容し難い汚臭が戸田の嗅覚を襲った。血の匂いってこんなにはっきりわかるもんなんだなと思いながらも先に進んだ。しかしその匂いは血の匂いだけでなかった。遺体のあるリビングに到着した。まず入ると目についたのは遺体ではなく、リビングのプロペラに巻き付く謎の赤いリボンだった。戸田は怪訝に思いながら近づくと、それが何かを理解するのには多くの時間は必要なかった。腸だ。これは人間の腸だ。そうわかった瞬間ただは腰を抜かし刑事にあるまじき悲鳴をあげてしまった。戸田は短い絶叫の後我に帰りハッ、っと口を塞いだ。それを見た稲毛は「お前が言っていた愚痴の内容は知っている。これが、殺人事件だ!まだやるか?それとも変えてもらうかどっちだ。」と聞いてきた。戸田は考えた。この一瞬でここ数年分の脳を使ったんじゃないかと思うほどだった。なんであんな所に腸が、どうする離脱するか?、でも夢が…、だから夢とかいう考えをやめろって稲毛さんが言ってるんだ。熟考の末わずかにやりたいと気持ちが戸田の中で勝った。「やれます。やらせてください」と涙まじりで言った。稲毛はやれやれ。というような顔をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます