第2話

私は高めの位置で髪を結って高校のジャージを着てサイフをポケットに突っ込んで外に出た。


外は暗くジャージだけでは少し寒かった。


「さむっ…」


と声が出るほどの寒さだ。


寒いせいか目と鼻の先のコンビニが少し遠く感じる。


中に入ると暖房が効いていて

「いらっしゃいませ」という声と共にふわっと暖かい空気が自分を包む。


ツナマヨのおにぎりとエナジードリンクを手に取り、足早にレジに向かった。


店員さんは少しパーマのかかった少し歳が上くらいだろうという多分アルバイトの兄ちゃんだった。


その店員さんに肉まんを頼み会計を済まし外に出ると、とても冷たい風が自分を包み込んだ。


買ったばっかりの熱々の肉まんを頬張りながら家に帰る。行きよりも道のりはとても短く感じる。


家に着き玄関をあけて誰もいない家に


「ただいま。」


と静かに言った。


お父さんは夜勤の仕事をしているのでもちろん返事はなかった。


そんなことは気にせずに乱雑に靴を脱ぎリビングの机におにぎりとエナジードリンクが入った袋を置く。


おにぎりだけでは少し物足りないのと外が寒くて温かいものが食べたかったので棚に常備してあるインスタントの味噌汁を作る。


マグカップに味噌汁の素とお湯を注ぐ。


「いただきます。」


この声だけがリビングに響く。


今日も1人の食事。


最近はまともに人と食事をしていない。人の作った食事を食べたりもろくにしていない。


そんなことをぼんやりと考えながら食べる夕ご飯は美味しく感じなかった。


夕ご飯を食べ終わると少しボーっと考え事をしていた。


自分があの時あんなことしていなければ今も母さんは生きていたし、温かいご飯も食べられたし今でも父さんは優しかったはず。


この10年間この日が来るといつもこのことを思っている。


「あんなことしてなければっ…。」


思わず声に出てしまっていた。


なんにもやる気になれず、風呂は明日入ればいいやと思い今日はもう自分の部屋に行くことにした。


ベットにダイブし、ふと自分の机の上を見ると月明かりで照らされた母の時計があった。


それを眺めていると不思議と大粒の涙がこぼれてきた。


これまであの事故以来ずっと自分を自分で責め続けて、父さんや親戚など周りにも責められた。


もうこんな日々に疲れてしまった。


「私なんていなければ…」


あの時以降からこれが口癖になってしまった。


だけれど最近は本当に限界に近づいてきていた。


いつまで経っても学校では「人殺し」と言われみんなから避けられて攻め続けられて、ろくな扱いもしてもらえない。


友達も1人すらいない、父さんとも必要最低限のことしか喋らない。


そんな日々が嫌になった。


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時計屋の魔女と死にたがりの少女 神崎來夢 @kanzaki_raimu

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