時計屋の魔女と死にたがりの少女

神崎來夢

第1話


「ありがとう、そしてさようなら。」



今日もまた昨日の自分と別れを告げる。


毎日がそんな日々の連続でまた新しい自分と生きていく。


似たような日々の繰り返しの中で未来ではぼんやりとしか残らない思い出を作り次の日を迎える。


昨日の自分を殺さないように思い出に残す。少しでも意味のある時間を生きるために。


そんなことをしている間にも秒針は自分のことなんか待ってくれなんかしない。


決まった速さで毎日同じ時間すすむ。


時計は自分の寿命が尽きるまで同じ速さで時計の中を回り続ける。


人間は自分のペースで決められた時間を歩んでいく。


だがその途中で電池が切れたり、自分や何者かによって壊したり、壊されたりもしてしまう。


時計も人も同じ仕組みで回っている。


















「お母さん!あたしね大きくなったら魔法使いになりたいの!」



お母さんはクスッと笑って「あらどうして?」と優しい笑顔で聞き返してくれた。



「だって魔法が使えたらなんだってできるんだよ!お菓子を沢山出したり、壊れたおもちゃだって治せるし!他にも色々すごいことできるんだよ!」


私は夢中でお母さんに話していた。

お母さんもずっと聞いていてくれて私は魔法が使えたらどんだけ素敵なことかをずっと語っていた。


家の手前の交差点まで来たところで家の庭から手を振っているお父さんが見えた。


夢中になっていたこともあり信号はよく見ていなかった。


私はお父さんの方に向かって走った______。














その瞬間後ろからドンって大きな音と誰かに押された感覚があって…頭から血を流してるお母さんが倒れていた。


とても濃い血液の匂いでむせかえりそうになる。


あの時の私は状況がよくわからなかった。

お父さんが急いで駆け寄ってきてお母さんの名前を叫んでいた。


近くで歩いていた人に救急車を呼んでもらいそこでやっと頭の整理ができた。


私はお母さんを殺してしまったんだ‪。


私があの時信号をよく確認していれば、お母さんはこうならなかったかもしれない。


私はこの時いままでよりも強く願った。








「魔法が使えたらな。」









この日からちょうど10年が経った。

今日は6歳だった私が母を殺した日。


和室に置かれている仏壇に手を合わせる。


父さんの冷たい視線を浴びながら静かに自分の部屋に戻る。


部屋に帰ってベットに横たわる。


「人って簡単に死んじゃうんだな…」


そう独り言をつぶやき6歳の頃の自分を恨んだ。


あの時から父さんは私に冷たくなり、私は人殺しと周りからも避けられる。


私はつけている時計を見ながら


「魔法なんて大っ嫌いだ」


と呟いた。


この時計は母が亡くなった時身につけていたもの。ベルトの部分が桜色のとても綺麗な時計。


10年経った今でも大切に身につけている。


ぼんやりと眺めていたらいつの間にか眠ってしまっていた。


起きて時計で時間を確認すると午後4時になっていた。


外をふと窓越しに見上げるともう日は出てなかった。


スマホの時計を見ると午後6時だ。


時計をもう1回よく見てみると秒針が動いてなかった。


「……壊れちゃったか。」


10年も動いてたのだから壊れても仕方ないだろうと思い、明日近くの時計屋に修理に出そうと腕から外し机の上に置いた。


リビングに降りてみると置き手紙と共に500円が置いてあった。


手紙には純玲(すみれ)へ

夕飯作れなくてごめんな。

これでなんか買ってきて食べてくれ


とだけ書かれていた。


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