第8話

「ワープアウト完了。時間誤差は30時間16分、目標との距離誤差300km。」


「エンジン等にも異常なしです」


「それでは惑星エイフェルト向けて通常航行開始します」


AIの桜と双子の姉妹の掛け合いを聞きながら椅子に深々と腰かけた。


すでに数回経験しているが、今まで違う技術を使用しているこの船のワープを行う際は安全だとわかっていても、知らずに気が張ってしまっている。


「貨物につないでくれ」


『これは、船長どうされました?』


「今現在惑星エイフェルト近郊へ問題なくワープアウトしました。予定では3日ほどで到着いたします」


『それはそれは、ありがとうございます』


「連絡を取るのであればこちらの高出力通信をお貸ししますよ。この距離であればリアルタイム通信が可能です」


『ありがとうございます。ですが、お構いなく。こちらも新型の高出力通信を積んでいますのでお気遣いご無用です』


「そうですか。それでは到着までお待ちください」


通信を切ると、今度は船内放送に切り替えた。


「今回も喜ばしいことに、無事にワープアウト完了できた。惑星エイフェルトまで3日間、寄港の直前には持ち場に居てほしいが、それまでは自動航行をさくらがバックアップするからゆっくりしてくれ」


「それでは完全自動航行に移行します」


「おねぇちゃんお疲れ様」


「ほらさくちゃんもシャワー浴びに行こう?」


「私はパパとがいいです」


「じゃあ、私も」


「紅茶に安い方でいいからブランデーを加えたものをくれ」


「ダメです。船長は航行中飲酒禁止ですよ。それとおねぇちゃんとさくちゃんも汗臭いんだからさっさと行くよ」


アイシャは唇を尖らせる姉のオフェーリアとAI少女のさくらをそれぞれ両脇に荷物のように抱えて出ていった。


「兵士のときは少しの飲酒なら推奨されてたのにな。そこだけは当時の方がよかった」


注文したの紅茶をちびちび飲みながら船長室で愚痴をこぼしながら、大艦戦という宇宙を舞台にしたチェスのようなゲームを行っていると時間が過ぎていく。


途中、飯を持ってきたアイシャにシャワーを浴びるように強制的に追い出されたり、オフェーリアとさくらが膝の上で覇権を争ったり、機関室に逃げ込みラーゲルと高級品の職人仕立ての駒を使ったチェスを行っているうちに3日立った。




惑星エイフェルトの衛星に寄港すると何事もなく積み込みも終わり、次の目的地であるライトバル小惑星群工業基地に向かう前に店長からある提案があるとのことで、船内の会議室で会うこととなった。


部屋に入ると、店長はすでにきており、案内をしたアイシャと私とともに入室したさくらを席に着かせると、店長が資料を投影させて説明を始めた。


「先ほど、牛飼いから聞いた話なのですが、ここ商業連盟圏に対して隣国の帝政クリストバル帝国が宣戦布告を行ったとのことです」


「ほうほう、そうなるとライトバル小惑星群工業基地はもろに戦闘空域になるわけですね」


「そうなるとのことです。そのためライトバル小惑星群工業基地は小惑星帯を一時離れ雲隠れしてしまい連絡を取る方法がないとのことでして」


「これはまた災難が続きますな」


「こればかりはどうしようもないですからね。その代わり宣戦布告されたのが1日前でまだ、戦闘が始まっていませんのでここで商売ができないかとの相談なのですが」


計画自体は簡単で、布陣から実際に戦艦を同士が沈むような戦闘が始まるまでに通常の戦法であれば1月以上はかかることが普通で、戦闘が始まっても後方の補給艦や控えで待機させられている艦隊に関しては危険が少なく、商人が売り込みをかけることはよくあった。


それに対して、長引く戦闘に部下の士気を保つためにも現地で嗜好品を手に入れることのできる商人を各国家は黙認していた。


それでも、戦闘中であることから危険がないわけではなく、戦闘に巻き込まれて命を散らす商人もいた。


今回はまだ布陣が完了する前なので、危なくなる前に商売ができるだろうということで輸送費に加え危険手当として売り上げの1割を受けてることで、戦場へと向かうことにした。



ーーーTIPSーーー

商業連盟圏


銀河系すべてのが商人の本拠地であり、国家としての体制を取っていないため国家と名乗らずエリアと名乗っている。

商人の連盟組織であり、金を持っている者の発言力が強い組織となっている。

それと同時に、各商人は太陽系を所持しており、自分の太陽系で住民を養っている王としての側面を持っている。

各惑星を発展させ、飢餓がないことと慈善事業を行えることは強さの証でもあるため、他の銀河から逃げ込んでくる者は多い。

商人の中には傭兵や医者などもいるため、傭兵惑星や医療惑星などもありここからいろんな国へと最新技術の手ほどきが有償でされている。

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