第7話
『カーナベル印のマックスバーガー、戦場にお届け』
オープンチャンネルから流れる陽気な音楽と可愛らしい声を聴きながらげっそりとした表情でハンバーガーを食べるライアルとライアルの膝の上を陣取りポテトをつまみ食いしているオフェーリアがブリッジにあった。
『ライアル船長、次は2つ東のGDRー5006番艦につけてくれ』
「了解、店長」
アイシャに手を振ると船が接続していた軍艦から離れ次の軍艦へと向かっていく。
けして近くはないが、そう遠くないところに大量に展開している軍艦を眺めながらどうしてこうなっのかと頭を抱えた。
それは、初仕事を終え、グルーフェンへの折り返しの仕事を終えた後のこと、以前時間の折り合いがつかずに先延ばしになっていた、ビンセルを誘い飲みに来ていた。
「そういえば、ライアルの船は中型貨物の運搬に切り替わったんだよな」
「ああ、そうだが」
「実は紹介したい奴がいるんだが」
「お、女か?」
「やめろ、お前のとこの嬢ちゃんに殺されるだろが」
慌てたビンセルが店の中を見渡しほっとしていた。
「そうじゃなく、仕事の話だ」
「ほう、聞こうじゃないか」
「カーナベル印のマックスバーガーは知ってるだろ?」
「ああ、あのカウベルの中にサンタみたいなおっさんが書かれたロゴの?」
「そうそう、そこが新たにブロックを作ってライトバル小惑星群工業基地に移設するために輸送屋を探してるんだよ」
「なるほどね、別に受けてもいいが、俺の船は外壁ないぞ」
「ああ、それは問題ない。見ればわかるが外装を宣伝に用いるために凝ってしまった結果、他の会社が受けてくれなかったらしい」
「そうか、いいぜ」
「ありがとうよ」
指をL字型にすると端末を呼び出しメッセージを送ってきた。
「港社勤めのお偉いさんはいいよな。高価なハンドフォンを買えて」
「良いだろ。10年ローンだけどな」
手を振って自慢してくるビンセルを適当にいなして残りの酒を流し込む。
「そんじゃ、ここに連絡してみるよ。」
「おう」
追加の注文をしているビンセルを横目に会計をせずに店を出るとその足で端末に送られてきたブロックへと足を運ぶことにした。
「先ほど電話したライアルですが・・・」
「ああ、ライアルさんようこそおいでくださいました」
移動の間に連絡を入れたところ社長がいるとのことで、急いできたところである。
「ビンセルから輸送のことで相談があると聞いてきたのですが」
「ええ、そうなんですよ。ここグルーフェンで製作しまして、惑星ハイランドで営業予定でしたが、営業許可を無効にされてしまい仕方なくライトバル小惑星群工業基地に増設させてもらえることになったのですが、なんせ遠いもので、受けてくれる運び屋が居なのですよ」
「なるほど、私でしたら問題なく移送できますよ」
「本当ですか。それでしたら、追加で惑星ハイランドで仕入れる予定でした牛を購入するために惑星エイフェルトによっていただきたい」
「良いですが、カーナベル印のマックスバーガーは培養肉を使っていますよね?」
「ええ、ここでは培養肉を使用しておりましたが惑星ハイランドでは最高級のレジャー惑星として売り出しておりますので培養肉を禁止しておりますので仕方なくですね」
社長がテーブルをタップすると空中にデフォルメされた白い髭を蓄えた優しそうな笑顔のおじいさんが映し出された。
「外装はこのようになっていますが、内部は、最下部に有機物を電力や肥料へと変換するバイオ施設。その上に牛を収納させる牧畜室。その上には水耕栽培を用いた野菜室。その上には各食材を処理、加工する調理室。その上には販売を手掛ける店舗があり最後に各セッションを管理する管理室。と、すべて惑星ハイランド基準で設計したのに完成した段階で許可を無効にさせたんですよ」
「そ、それはお気の毒に」
ホログラム上では各セッションの紹介と稼働し始めた時の予想映像が流れていた。
「さすがにこのまま放置するわけにはいきませんので、目を付けたのが最近新たな合金を完成させたライトバル小惑星群工業基地なわけです。連絡を取ってみると二つ返事で許可が下りたものですから」
それから会社の歴史から社長の自慢などに付き合わされ、見積もりを作成するためにとブロックから出れたのは2時間後であった。
ーーーTIPSーーー
惑星ハイランド
惑星全体がリゾート地として一からテラホーミングされた惑星。
この惑星のラグランジュポイントにいくつものホテルが乱立しており人工物に覆われた特殊な惑星となっている。
金を積めばラグランジュポイントのホテルや2つある月の商業施設と娯楽施設を利用できるが、惑星の地表に降りるには惑星ハイランドを運営する一族とのコネが必要となっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます