第5話

「ほら、船長かライアンと呼んでくれ」




「パパ」




「いや、パパじゃなくって」




「ぱぱ?」




「うっ」




オーフェリアに抱えられ上目づかいでこちらを見てくるサクラに言葉を失くしてしまった。




「さくちゃんを困らせちゃだめですよ、パ・パ」




「初期起動したてのAIは子供ですから一度認識した呼び方を変えるのは難しいですよ。あきらめることですね」




双子姉妹にからかわれてしまいあきらめてしまった。




「はあ、もういいよ」




「初期設定は正常に終わりましたね。初期学習が必要ですのでもう一度ポッドに入ってもらいましょう。初期学習が終わる間そのほかの施設を案内します」




サクラをポットに戻して担当者に案内されてそのほかの施設を案内してもらった。




食堂、トレニーングルーム、格納庫と次々と案内してもらい、各それぞれの個室の振り分けしていった。


「それでは最後にエンジンルームへとご案内します」


10畳ほどの部屋入り皆部屋の中にあるカウンターから飲み物を取り出し一息ついていると担当者から声がかかった。


「わかりました。移動ですね」


部屋を出ていこうとすると慌てて担当者が止めて入り口近くのパネルを操作し始めた。


「待ってください。この部屋がエレベーターになってますので、このまま椅子にでも座ていてもらえれば大丈夫です」


そういって、パネルを操作し終わると壁に外の風景が映し出された。


「このように外部の風景も映し出すことが可能となっております」


格納庫の中に入っている状態のためあわただしく動き回る機械や人が映し出されていた。


「通常時でも100mあり、最大貨物を運搬中では300mもエンジンルームと離れてしまうためこのエレベーターでの移動を推奨いたしております」


エレベーターの中では加速や減速が一切感じることもなくエンジンルームへとたどり着いた。


「ここがエンジンルームです。とはいっても核融合炉を使用していますのでエンジンルームでの仕事は破損時の交換がメインとなると思われます」


「交換期間は?」


「理論上1世紀の使用に耐えうるとなっておりますので、船の買い替え時に新しくすると考えていただければ問題ないかと」


「電力はすべてここから船首に送ってるんですか?」


「はい、そうなります。先ほど乗っていただきましたエレベーターの軸となっていました竜骨内部を鏡面化させ骨子の先に備わっているバリアー発生装置にも送れるようにしてあります。もし竜骨が破壊された場合でも非常用発電として船首にも予備の核融合炉が積んでありますが、推進器を動かすことのできる電力を発電することはできませんのでご注意ください」


そういって重力装置が起動していないエンジンルームを1番推進器から順番に案内してもらい最後に中央に設置されている5番推進器まで案内された。


「ここで最後になります。1つの推進器が全長100m、それがこの5番推進器を挟んで対角線上に2基ずつ設置されております。推進器と言ってはいますが、この推進器は太陽圏においては太陽に向けることにより理論上永遠に加速することができるように加工もされております。またワープ機能も従来の『星の街道』を使用するワープ法と異なり現在地A点を目的地B点を観測点C点を起点に空間を曲げることによりつなげる最新理論のワープ法を採用しております」



「それはどのような?」


「現在主流となっていますワープ法では時間軸を無視することによりワープを実現しておりますが、その距離を移動していることには変わりありません。ですので『星の街道』を設置しなければ、ワープ中に進路上に障害物があった場合避けることができないのです」


手に持っていたた端末を床に置きホログラムを出現させ説明をしだした。


説明に興味津々な双子と機関士を除く4人は、船の広さや部屋の多さに疲れ果てていた。


「今回の新しいワープ法は斜め軸に働きかけることで空間を平面だと認識して観測点Cを起点に紙を曲げるように空間を無理やり湾曲させることで現在地A点と目的地B点を隣合わせることによりワープを実現させております」


「あの、そろそろ疲れてきたので難しい話はやめにしてくれない?」


「ああ、すみません。自社の商品になるとつい」


苦笑いを浮かべる担当者を促し船内の観覧が終了した。



ーーーTIPSーーー


ワープ補足


現在地A点と観測点C点、目的地B点と観測点C点の距離が同じであればほぼ一瞬でのワープが可能

距離が違う場合1光年離れるごとに1日時間がかかる

上記の通り時間軸に手を加えてないので移動中は船内での生活を余儀なくされる

移動中通常空間ではなく無理やり曲げた空間の間を航行するため船外は光が一切ないので観測できない

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