第4話

「こちらがブリッジになります」




案内されてついた先には中央に大きな椅子があり、周りには操舵席の他に8つの席が設けられていた。




「ご注文通り船長席は座ったまま船長室へと降下します」




「ありがとう」




「ここがあいちゃんの席で、ここが私の席」




妹を操舵席に座らせた後、俺を船長席に座らせてその膝の上に座ってきた。




「お嬢さんお席はあちらですよ」




「ここでいいんですぅ」




新しい船でテンションが上がっているのか膝の上で鼻歌まで歌い始めた。




「この後お前たちの部屋を決める予定だったが見なくてもいいんだな」




「行く」




膝の上から飛び降りて手をつかんでブリッジから出ようと引っ張ってくる。




「はいはい、少し待ってな。説明の続きどうぞ」




「ええ、このブリッジの重力設定は船長席と通信席そのほかの席でも設定をいじれる使用にしてありますが、初期設定を船長席ですることで他の席でもいじれるようにしてあります」




担当者が船長席の横から端末を引っ張り出して起動する。




「自動展開させるために初期設定します。今後椅子に座るとこの位置に展開されます」




左側のひじ掛けに当たらないくらいの場所に端末を置いて操作していく。




「次にAIを起動します。初期設定後はAI人権法に法りのっとりボディーを保護者が用意しなければいけませんがよろしいですか?」




担当者が自分の端末についているカメラをこちらに向けて聞いてきた。


この質問はAIを手に入れる時に必ず求められる行為で、AIを購入することは子供を授かる事と同じとして世間に浸透していた。




「ええ、ボディーはどちらに?」




「船長席の後ろにAI用ボディーを休ませるポッドが収納されています」




担当者が、船長席の横に出ている端末を操作すると不自然に船長席と壁の間に人が余裕で通れるくらい空いていた場所にポットがしたからせり出してきた。


そのポットの中にはこの船の中で最年少の双子姉妹より小さな見た目の白いワンピースを着た少女が入っていた。




「このポットには冷却機能と修復用のナノマシン生成機能も標準装備となっています。それでは初期設定していきましょうか」




「ええ、この端末でいいのかい?」




「はい、どうぞ」




『A-フロント社をご利用いただきありがとうございます。AIFシリーズ3000番台はより良い職場と私生活をモットーに提供しております。商品に間違いない場合は初期設定を始めてください』




「間違いありません」




端末の画面に映った女性が説明し始める。




『本製品は国際法11345条、通称AI人権法に法って販売提供しております。関連法は以下の通りです』






関連法の説明が5分間も続き途中で飽きた双子姉妹や他のクルーは担当者を連れてブリッジの中を案内させて計器の説明を受けたり、AI用のボディーを観察したりしていた。






『ここまでが関連法になります。もう一度ご確認しますか』




「結構です。次に進んでください」




『それではAIに名前を付けてください』




「サクラ、通称さくちゃん」




「あ、おい」




『名称サクラ、通称さくちゃんでよろしいですか?』




「よろしいです」




通信席で最新式の端末を自分用に調整していたオフェーリアがいつのまにか横に来ていて名前を勝手に決めてしまった。




「こら、勝手に決めるな」




「だって、私たちの赤ちゃんに名前つけたかったんだもん」




「この船の赤ちゃんであってお前の物ではないからな」




『初期設定完了いたしました。サクラ起動します』




登録されてしまったものは仕方ないので軽く叱るだけにとどめると設定が完了した。


先ほどまでは成人した女性の声での案内だったが、初期設定が完了したためか後ろのボディーにあった幼い見た目に合う声となっていた。




椅子に座ったままだと背もたれで見えなかったが、足元に冷気が流れ込んできたのでポットが開いたのが分かった。


起動確認のために椅子から立ち上がりオフェーリアに引っ張られてポットの前に立つとサクラが目を開けた。




「私はサクラです。よろしくお願いします。お父さん、お母さん」




子供のような無邪気な笑顔を向けてこちらに頭を下げてきた。




「いやいや、ちょっとま」




「なんて、かわいくて、賢くて、いい子なの。私はママでこっちはパパね」




「ママ?パパ?」




「そうそう。こっちおいで」




否定しようと口を開こうとするとオフェーリアに突き飛ばされてしまった。


そのままオフェーリアはサクラを抱きしめて妹の元へと連れて行ってしまった。




「はい、さくちゃん。この人はママの妹のあいちゃん。おばさんね」




「おばさん?」




「はい、余計なことを教えない。あいちゃんでいいのよ」




「あいちゃんよろしくお願いします」




「よろしく」




あまり笑顔がないアイシャが微笑んでいるのが見えてこの子を買ってよかったと自画自賛したが、早めにサクラの誤解を解こうとほほえましい双子の話に混ざることにした。




ーーTIPS--




船員の年齢




ライアル   50歳


アイシャ   20歳


オフェーリア 20歳


ラーゲル  157歳


D・A     36歳


フェーテル 104歳


アルタ    42歳


トール    42歳


サクラ     1日

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