第4話 最強魔術師の隠された過去

それに加え、せっかくの宴会だというのに、妙に暗い雰囲気を漂わせている。


「こんばんはっ」


愛想よくそう言って彼女に話しかける。


二度目の人生で復讐を成功させる第一歩、まずは裏切らない仲間調達だ。


怪しまれないよう、優しく、気さくに。


「……誰? また、わたしを馬鹿にしにきたの……?」


「馬鹿にする……? っいやいや! そんなつもりは!」


が、僕の作戦は失敗。なぜか彼女は馬鹿にされると思っているらしい。


だとしたらなぜ、一体何に対して、馬鹿にされると思っているのだ。


僕、そんなに怪しい格好でもしていただろうか。


すると、彼女は再び口を開く。


「だったらどうして? なんで私に話しかけてくるの?!」


どうやら人選ミスをしてしまったかもしれない。面倒くさそうなのを選んでしまった。


「ちょっと待ってよ。なんで僕が君を馬鹿にする?」


そう言うと、彼女は俯きながら口を開いた。


「だって、私のスキルはみんなより劣ってて……そのことを知って私のとこに来たんでしょ?! 馬鹿にしに来たんでしょ?!」


……どうやら彼女も僕と同じハズレスキルを引いていたらしい。


それにこの村のことだ、もう噂になって避けられていたのかもしれない。


これはこれは気の毒な少女だ。────しかし! もしそうだとしたら、好都合。俺が彼女の唯一の理解者になればいい。


そうなれば絶対に俺を裏切ることは出来まい。


「なんだ、そんなことか。僕は友達がいないから、一緒にまわる友達が欲しかっただけさ」


「……わ、私と一緒に?」


僕はここぞとばかりに彼女を引き連れようと試みる。


千載一遇のチャンスだ。逃す訳にはいかない。


「無理にとは言わない。まあその場合、僕は孤独で寂しいお祭りになちゃうけどね」


「ふーん。……本当に? 本当にそうなの?」


彼女は僕を疑うようにみていたが、諦めたように立ち上がった。


それもそうだろう、ここでついて来なければ野垂れ死ぬだけだ。


「勿論だよ。とりあえず、どこかいこうか」


と、僕は屋台の方へ向かおうとするが、ハッと気が付き、後ろを振り向く。


「あ、言い忘れてたけど、僕はノア=ホワイト。ノアでいいよ」


「私はリナリア=マーフィー」


「それじゃリアだね。いこっか」


そう言って強引に彼女の手を引いて歩き始めた。


それから僕たちは。鶏の丸焼き、ピザ、かき氷を頬張ったり、射的や輪投げなど、沢山の場所を二人で巡った。


話を聞くと、僕と同じく両親は他界済みで、やはりハズレスキルを引いてしまった彼女は、他の村人から距離を置かれていたらしい。


行くあてがあれば僕のとこになんて付いてこないだろうし、さほど驚きはしなかった。


「リアはこれからどうするつもり?」


店の近くのテーブル。魚の塩焼き片手に僕はリアに問いかけた。


すると、問いかけられたリアは口ごもってしまう。先のことは考えたくもないのだろう。


「あてがないなら、僕の家なんてどう?」


そう言うと、リアは疑うように俺を見つめた。


「ノアの家?」


「いやいや! もちろん変な意味はない!」


俺は慌てて、そう言う。


「うん、行く。私このままじゃ死んじゃうし」


よっしゃあああ!! 僕は心の中で叫んだ。順調すぎるほどに仲間調達が進んでいる。


まっていろよデバリア! 僕は絶対に許さない!


とはいっても正直、ダメ元で言ってみたのだが、やはり言ってみるもんだな。


「よーし。それじゃ、次はどこ行く?」


それから僕たちは、再び色々な屋台を巡り、目一杯、この祭典を満喫した。


「……ふう。食った食った」


家の帰り道、祭り去り際にデバリアから貰ったジュースを吸いながら、腹を摩った。



♢ ♢ ♢



あれから数時間、すっかり打ち解けたリアは申し訳なさそうに口を開く。


「お家、呼んでくれてありがとね」


「ああ。……それより、寝る場所なんだけど。僕はここのベッドで寝るからリアは地下にある布団で頼むよ」


僕がそう言うとリアは立ち上がって地下室へ向かう。


「うん、分かった」

「それじゃもう遅いし。私、寝るね」


「地下室の入り口はそこの階段だよ」


そして部屋に一人きりになった俺は急激な睡魔に襲われた。


「さてと、僕も寝るか……」


そう言ってベッドへ向かった。



♢ ♢ ♢



……どうしてか身体が重い。窓からは光が差し込んでいる、恐らく朝だ。


そして、妙に頭が痛い。そうだ昨日、あのジュースを飲み干した後、急激な眠気に襲われて……。



「ふふ、おはよ」

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