第3話 蘇る記憶


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「あれれぇ? どうして村まで降りてきたのかなぁ?」


「き、今日は遊びにきたん──」


デバリアは僕を嘲笑うかのようにそう言って、手に持ったシャベルで突き放した。


シャベルの土で汚れた服を払い、そう言いかけると、デバリアは呆れ笑い、言葉を重ねた。


「ふっ、ハズレスキル持ちの小汚い餓鬼の分際で。……また一緒にこの村の子供たちと遊べるとでも思っちゃったあ?」


デバリアが嘲笑しながらそう言って、再び僕を突き飛ばすと、思わず足がもつれて倒れてしまう。


すると、デバリアはざまあみろ、と言わんばかりに高笑いを始める。



そしてしばらくの間、デバリアはバカにするかのように笑い続けた。


しかし、その間抵抗する力もスキルもない僕に為す術などなく、ただ睨むことしか出来なかった。


笑いがおさまったかと思うと、デバリアは僕の顔をニヤニヤと覗き込んだ。


「あ〜あっ。……でも、ざ〜んね〜ん。この村の子たちはあなたと違って有能あたりスキル持ちなの知ってる? ってか誰が君みたいな負け組と遊ぶの?」


「ちがっ、僕達の関係ははスキルなんかで崩れたりしない」


そう言うと、デバリアは呆れたように続けた。


「……はぁ。あれを見れば流石のむのうでも分かるんじゃない?」


そう言ってデバリアの指さす方に目を向けると、かつての友達は軽蔑するかのような目で、じっと僕を見つめていた。



♢ ♢ ♢



「これで準備はおっけい」


俺は過去をかき消すように、水で顔を洗い準備を終えると、そそくさと玄関へ向かい家を出た。



♢ ♢ ♢




夜であることを忘れてしまいそうなほど、明るく装飾された村。


そして置かれている様々な食材たち、まるでお祭りのような雰囲気になっている。


そんな光景に思わずボーッとしていると


「あ〜っ! ノア君! 来てくれたんだ!」


待ってましたと言わんばかりに、デバリアがこちらへ近づいて来た。


一度目の今頃は、ぐっすり家で眠っていたことを考えると、不意に悲しい気がしてきてしまう。


しかし、今度は二度目だ、張り切っていこう。と、愛想よく振る舞う。


「もちろんです。デバリアさんからお誘いいただいたんですから!」


「ふふ、ありがとうっ♡」


お祭りの明かりに照らされたデバリアは、そう言って再びニコッと笑う。


すると、なにやら背後から聞き馴染みのある声がした。


「お、ノアじゃねーか!」


そう言うと、その男は僕の近くに寄り、強引に肩を組んでくる。


「えーっと、君は……」


「おいおい、忘れちまったのか? 俺はガザニア、親友だろ?」


ガザニア。一度目の人生で僕のスキルがハズレだと知ると、いち早く軽蔑し始めた元親友。


僕が当たりスキルだとデバリアから聞いたのかニヤニヤしている。


「そういや、お前いいスキル発現させたらしいじゃん。お前の活躍、期待してるからな〜?」


「ああ。ありがとう、頑張るよ」


「いつでも親友である、この俺を頼れよ」


「私を頼ってくれてもいいんだからねっ♪」


そんなたわいもない話をすること数分、二人ともそれぞれの場所に戻り、この祭りを満喫していた。



♢ ♢ ♢



と、そのまま一人になった僕は、複雑な気持ちの中、この会場を歩き始めた。


それにしても、豪華な祭典だ。村中の人達が集まっている。


こんな中、一度も呼ばれることのなかった僕は相当嫌われていたらしい。


僕は悔しさと悲しみの中、さらに歩みを進めた。


「……ん?」


通り過ぎようとすると、なにやら、ぽつんと座り込んでいる女の子を見つけた。


ここの村人だろうか。なぜか一度目の世界では見たことのない顔だ。

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