旧ドラえもんと新ドラえもんの劇場版から学ぶ-シナリオ構成と面白さ-

⑲ミドルＥＸⅢ：再会と捜索＋生贄にされる一歩手前？

　ドラえもん達がトコヤミの宮へ辿りついていた頃。

　遭難していたのび太は一歩も動けない状態になっていました。そんな彼が取った行動は「ククルの犬笛を吹く」事です。

　作中ではどうして笛を吹いたのかは説明されません。

　朦朧とする意識の中、生き残るための本能がそうさせたのか？

　頭の片隅にククルとロウのエピソードがよぎったのか？

　はたまた、近くに“誰か”がいると希望を託したのか…………。

　この理由については、これまでの物語を観てきた視聴者が感じとったものが答え。私はそれで良いと思います。

　犬笛の音が雪山に響き渡り、上から見下ろす形でのび太を映していたカメラが引いていくような形で上空へと向けられます。かくしてそこに映りこんだのは飛行する３匹の影。

　大きな月をバックにして行方不明だったペット達が主の下へ、ようやくたどり着くのです。

●奇跡の再会

　気を失っていたのび太が目を開けると、そこには心配そうにしているペガ・グリ・ドラコがいました。

　吹雪は止んでおり、寒さに凍えていた身体も動く。

　どうやら愛するペット達がのび太を温めてくれていたようです（※１）。

　無事生存！　さよならデッドエンド！

　再会の嬉しさと感謝から来るのび太の全力ハグが、彼の喜びようをガッツリ現わしています。

　その後、三匹と合流したのび太はドラえもん達を追って移動を再開。スピードはよいとして、問題は仲間の痕跡を発見できるかどうかがミソですが……。

　飛行中にグリがナニカを発見して拾いに行きます。

　咥えられているソレは……キーアイテムである“のび太の答案用紙”！（笑）　まさかの再登場アイテムにのび太も驚きますが、そんなものがあるって事自体が大きなヒントになるわけでッ。

「だったら、ドラえもん達はこの辺りに――――」

　手がかりを得たのび太の顔にズームアップしたところで場面は切り変わります。

（※１）：ペット達と書きましたが、厳密には温めているのはドラコがメイン。グリとペガは見守っていたようです。ところで、この場面を観ていると「やっぱりペガ達は規格外だな～」と改めて感じてしまいます（笑）。

　たしかあの雪山は「－50℃」の世界なんですが、あの三匹は一匹としてその気温が堪えた様子がありません。寒さに対する完全耐性持ち？ｗ

　あの状態ののび太を復活させるドラコのお腹はどんだけあったかいのか。なんか柔らかそうにも見えますし、回復効果のあるベッドと同等の効力があるのかもしれません（笑）。ドラコのお腹クッションとかあったら人をダメにしそうですね。

●謎の儀式と吊るされたドラえもん達

　マンモスは出てこず、ギガゾンビ側の強さ表現がパワーアップしてきた、この流れ。

　そのまま新規演出で繋げてくるのかと思いきや、一旦旧版と同様のシーンが出てきます。

　何言ってんのかよくわからんクラヤミ族と呪術師っぽい事やってるギガゾンビ。

　敗北したドラえもん達は公開処刑寸前といった感じに縄で縛られ吊るされている状態です。やはりというか、しずか・ジャイアン・スネ夫も捕まってしまった形ですね。

「まさかドラちゃんまで負けちゃうなんて」

「面目ない……」

「肝心な時に役に立たねえなぁ」

「だから謝ってるだろ！」

　絶体絶命の割には余裕がありそうな会話をしますが、別段秘策があるわけでもなく（苦笑）。

　ツチダマその①が溶かされた場面でも出ていたサーベルタイガーがけしかけられます。（※２）

　のっしのっしと獲物に近づくタイガー。

　旧版であればダッシュ一発かました後に、空中から来たペットに阻止されてますが……その姿はありません。

　まるでいたぶるかのように、その爪がかるーくジャイアン＋スネ夫の方へと振るわれます（※当たらないけど）。

「食べるならジャイアン！　グルメならジャイアン！！」（※３）

「もうダメェ！！」

「みんな諦めるなぁー！」

　どんな言動を取ろうが押し寄せてくる絶望感。

　遂に飛びかかるサーベルタイガーの牙と爪が憐れな子供達を切り裂く――――。

　――そんな友達のピンチに登場するのが、ヒーローってものですよね？

　今回はここまで。　

　次回：１カット、２カット、３カット、からの～～～、

　「みんな、助けにきたよッ！！」

　いよいよ新版における私の最も好きな場面の回がお目見えです！

（※２）：このサーベルタイガーのデザインが大きく変わっており、牙が旧版よりずっと短かったり、体毛が白っぽくなってます。新版が作られるまでの約20年の間にサーベルタイガー自体の外見がより鮮明になったのかな？　あるいは、極寒地域の虎だからユキヒョウみたいなデザインにしたのかもしれません。

（※３）「スネ夫テメェ！？」とジャイアンが怒りますが、そりゃそうだ（笑）。

　『日本誕生』はスネ夫の見せ場が少なめなのもあって、この台詞が印象に残りやすいと思います。命の危機になったからといって友達売ったらアカンでスネ夫ｗ　とはいえ、こういう態度をとってしまうキャラが１人いるのも自然かもしれないので、今回はスネ夫にワリをくってもらった形ですかねぇ。

　ちなみに本作におけるスネ夫の名言（見せ場）は、クライマックスに集中しており、個人的には＠２箇所あります＾＾