⑱ミドルEXⅡ:ドラえもんvsギガゾンビで近接戦闘!?

 本編ではのび太サイド・ドラえもんサイドが行ったり来たりしてますが、

 今回はドラえもん側の流れに絞って追いかけてみたいと思います。


 のび太の遭難が発覚した後、洞窟で暖をとりながら一行は「レスキューボトルの成果」(※1)を待ちます。その際、居てもたってもいられなくなったスネ夫が奥の方へ向かうと、そこには地下深くに続く階段が! この発見によって一行はココが「トコヤミの宮」と理解することになるのですが……。その光景はギガゾンビにバッチリ見られています。


「よくぞここまで来た。誉めてやろう」的な台詞が出てきますが、ギガゾンビさんめっちゃ余裕です(笑)。まあ、この時点でドラえもん達は脅威として見られてないし、上から目線の発言としては満点なんですが。


 話し変わって、この場面で注目して欲しいポイントについてです。

 細かな違いではありますが、ジャイアンとスネ夫のポジション(役割)が変わっている点があります。


 旧版では、最初に洞窟の奥へ向かうのは「ジャイアン」です。

 新版では「スネ夫」になっています。


 この変化による違いは何か?

 それは「のび太を最も心配していると思えるジャイアン」が「のび太の安否を気にしている度合い」の強さでしょう。


 新版におけるジャイアンは、洞穴の入口で外を見張り続けています。この演出は「涙を流しながら心の友を心配するジャイアン」として非常にしっくりくるものです。旧版だと「寒い寒い、奥の方があったけえや」みたいな感じで移動してしまいます。

 この二つを見比べた時、どちらが「友達を心配しているように見えるか」と問われれば……一目瞭然ですね(笑)。

 



(※1):一番良いのはのび太が自力で辿りつく事。次点で捜索可能なレベルまで吹雪が弱まるとかでしょうか。

 もしかしたらレスキューボトルは内包した栄養ドリンクで救助した後、案内する機能もあったかもしれませんが……いずれにせよツチダマに破壊されてしまうので叶いませんね。



●地下深くに広がるトコヤミの宮


 ひたすら階段を下った一行は、さらわれた多くの人々(ヒカリ族含む)が奴隷のように働かされている場所(※2)に辿りつきます。

 この場面の流れを簡易的にすると、


 発見 → ククルが鞭で打ちすえられそうになる → ジャイアンが止めに入ろうと飛び降りる → ウルトラストップウォッチでザ・ワールド!! → 脱出ルートの確保で通り抜けフープ使用 → ドラえもんが単独でルート確認に行く


 こんな感じです。


 個人的にはジャイアンが飛び降りる前の台詞に注目したいところ。

 ここで彼は「奴隷だけは許さねえ!」と口にしますが、以前にも触れたジャイアン母ちゃんとのやり取りがココで意味を増してきます。

 ジャイアン的には自分は親の都合で奴隷のように扱われており、それが許せなくて家出したわけですからね。正に本当の奴隷を目の当たりにした彼が無茶な行動に出るのも納得しやすい。単に熱い男としても評価できますし。


 ――まあ、ゆうて「ウルトラストップウォッチ」によって時間が止まるので、せっかくのダイブもあんま意味ないんですけども(苦笑)。しっかり時間停止に巻き込まれ、解除した後に落下するのは笑うところでしょう。


 後の展開では特に大きな変更点はありません。

 強いて挙げたとしても、ドラえもんがとおりぬけフープで出来た道を通る際の演出が、


旧版:真っ暗な場所を進む

新版:ヤケにぐねぐねした道を進んでいる


 のように変わっているぐらいでしょうか。「作画コスト」と「違和感のわかりやすさ」を天秤ではかる形になりそうですが、どちらも一長一短な気がしますね~。とおりぬけフープで出来た穴を通過している演出は、『ドラえもん』全体でそんなに多くないと思うので「そもそも真っ暗なの?」とかも判別しにくいです(笑)。



(※2):この光景とギガゾンビの台詞からして、トコヤミの宮はまだまだ建設途中といった感じです。これに大きな意味があるかといえば……あるような無いような(苦笑)。というのも、ギガゾンビが本当に必要としている「亜空間破壊装置」は割と完成済みです。原始時代の人々は建設に駆りだされているものの、装置を作っているのではなく、ギガゾンビが欲している拠点を作っているわけですね。

 まあアレだ。「せっかくなんだから豪華な拠点を完成させたいじゃん」という気持ちが垣間見える、ラスボスの趣味嗜好みたいなもんでしょう(笑)。自分の趣味のために人を攫ってこき使うとは、なんて悪いやつw




●ギガゾンビと対峙


 ここから先は一方通行だ!! いや、こんな台詞はどこにもないけどもw


 ドラえもんとギガゾンビの1対1は旧版でもやっていた注目シーンですが、新版では「なんか明らかにレベルの違う機械(もの)で出来た広間」で行われます。

 この辺り、旧・新の間にある約20年の差を感じさせますね~。


 半球状っぽい広間の中心には(後でわかるのですが)「亜空間破壊装置」が設置されており、この場所だけが岩や土に囲まれていた原始時代の地下とは一線を画す異質さがあります。これにはドラえもんもビックリ。

 しかも時間停止しているはずなのに足音(杖をつく音)と共にギガゾンビが登場するので、二度ビックリです。


 そこで発覚する時間停止の解除。

 まさかの所業ですが、これでドラえもんは確信します。ギガゾンビは未来人であり、歴史を改変しようとしている時間犯罪者だと。

 とはいえ、これも旧版であった展開です。このあとドラえもんはギガゾンビの一撃で「し、しびれたぁ」といってコロンと転がるハメに――――新版だとなりません(笑)。


 ここで『ドラえもん』にしては珍しめな近接戦闘が行われます! その尺はしっかりとってありまして、10秒と立たずに痺れて転がってた旧版とはえらい違いです。


 ドラえもんの武器は常備のショックスティック(槍)。

 一方のギガゾンビはというと、なんかヤケに仰々しそうな杖を装備しているのですが……。


 なんかよくわからんけど、この杖がめちゃくちゃ強力です。

 闇色のオーラを纏った杖は容易にドラえもんのショックスティックの一撃を受け止め、自分はノーダメージでドラえもんにだけ大きなダメージを与えていきます(※3)。


 そこからはドラえもんも全力全開。ショックスティックをパワー全開(※そんな事できたんかいw)にして、ひたすら攻撃・攻撃!・攻撃!! それをギガゾンビは受ける・いなす・弾き飛ばす! なんかこう「絶対に勝てないボスとのイベント戦闘」ばりの戦いが演出されます。

 不恰好でも必死に打ち込むドラえもんに対して、舞うかのような所作のギガゾンビ。

 これには筆者も思わず手に汗握る。まさか『ドラえもん』でこんなに動きの良い近接戦闘が見られるなんて……といった感動すらありました。


 最終的に攻撃を受けすぎたドラえもんが敗北します。

 その直後の台詞回しが非常に印象的でして、要約すると、


「そんな……未来の道具が通用しないなんて……」

「22世紀の化石のような道具が私に効くか」


「私は23世紀の人間だ!!」



 この台詞が強敵感を演出するにあたって超カッコイイ&超わかりやすいのデスよ!!

 挙句の果てにはドラえもんが投擲した槍を、ギガゾンビは手をかざしただけで真っ二つ&バラバラに壊しますからね(※3)。これが100年分の圧倒的科学力差!!


 

「残念……1世紀負けた」(ガクリ)


 そんな台詞を残して気絶するドラえもんはコメディ要素満載ですが、絶望感は変わらないのでコレはコレであり……かな? あまり敗北感を演出しすぎると視聴してる子供がショックを受けるかもしれませんしね。




(※3):この時のダメージ演出は、ドラえもんの焦げつき具合――というか煙と表情+倒れている状態で表現されています。おそらくその気になれば易々とドラえもんの胴体を貫通する威力があるんでしょうが、子供向け作品のドラえもんでそんなシーンやられたらトラウマものですわぁ。


(※4):正確には掌に刻印があり、それを向けたら道具がバラバラになったといった感じ。この「掌をかざす」は案外ギガゾンビの最強技なんじゃなかろうか。

 後々の戦闘シーンを含めて考えますと、この掌は「あらゆる機械を無効化・破壊する」といった力があるように思えます。遊戯王かギャザのカード効果みたいですね(笑)。


 そして、これが最重要施設にドラえもんを呼び込んでも問題ないと判断させるギガゾンビの自信に繋がっていたのでしょう。もしこの掌が「ドラえもんに直接使用」されていたら? …………おそらくドラえもんは見るも無残なことになっていたに違いない。トラウマ物にならなくてよかったよかった。






 さあさあ、いよいよもって夢を叶えてくれるドラえもんすらギガゾンビの前に倒れてしまいました。

 ドラえもんは敗北。そもそも万能のひみつ道具が効かない。しずか・ジャイアン・スネ夫は時間停止が解けたために、大勢のクラヤミ族に囲まれて万事休す。


 このままドラえもん達は敗北してしまうのか。

 旧版だったらタイムパトロールが助けにきてくれたかもしれませんが、新版では喋るマンモスもいません。当然スイッチも出てこない。


 残された最後の希望は――――――。




 ……なーんて次回予告ができそうな勢いですが、今回はドラえもんの敗北までで終了です。。

 シーンの切り替わり先は、デッドエンド間際だった……そう、のび太くんサイド。


 友達を救おうと頑張るのび太の大活躍が、今ようやく始まろうとしているのです――――。

 





 


 






 

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