一区切りして終盤へ

⑰ミドルEX:旧版を知っている人が驚く大胆なアレンジ!

 今回のエピソードタイトルには「ミドルEX」と表記することにしました。

 これによって、今までのミドルフェイズと比べても更に大きなアレンジが成されているんだよ~って事を示しております。


 そのアレンジがシナリオに及ぼす影響はとても重要で、もはや旧版とは完全に異なるルートに進んだと言っても過言ではないでしょう。


 さあ、それでは新版の面白さに存分に触れていこうじゃあーりませんか!




●吹雪に見舞われ洞窟へ


 リニアモーターカーごっこを用いても進むのが難しい大吹雪に見舞われ、ドラえもん達は近くにあった洞穴へと非難する場面です。

 この場面に関しては「エピソード021 ミドル⑪:トコヤミの宮を目指して」で大分触れてしまっていますね(苦笑)。大きな変更点は、注釈に回した「のび太の答案をどうしてドラえもんが持っていたか」の部分でした。

 気になる方はエピソード021の後半を読んでいただけると幸いです。




●遭難するのび太


 大胆なシナリオアレンジはここから。

 改めてのび太が遭難しているシーンの流れをおさらいしてみますと、


・電車ごっこから置いてかれたのび太が大吹雪で遭難している → 遂に幻覚が見えだす → さらなる幻覚でドラえもん達による裁判が始まる → 謎の喋るマンモス(タイムパトロール)に助けられ、スイッチを託される。


 旧版ではこんな感じでした。

 最も大きな意味合いを持つのは謎の喋るマンモスです。コイツが登場しなければ、ギガゾンビによって閉じ込められてしまった後の話に繋がりません。


 では、新版ではこの辺りの要素はどうなっているのか?

 ちょっと羅列してみましょう。



・遭難しているのはそのまま。

・幻覚として登場するのが「パパ」「ママ」なのは変わらないが、ドラえもん達の裁判(幻覚)がすべて無くなっている。

・代わりにのび太自身の幻覚が登場。パパ・ママ・のび太の三人の言動が、のび太自身の後悔や葛藤などの心情を表現するものに変化。


・謎の喋るマンモスが登場しない!!<NEW>



 はい!

 先に書いてしまいますが、なんとマンモスが登場しません! 当然、体を温めるスープも発信機のスイッチも出てこなくなります。旧版を観ていた人からすれば超ビックリな展開です。旧版と同じオチにしようとしても、これではどうしようもないとしか思えません。


 私的な感想を台詞に変えるなら「のび太逝ったーーーーーーーーー!!!???」ってトコでしょうかΣ( ̄◇ ̄ノ)ノ



◆各アレンジによる変化


 まず遭難しているのはそのままなのでいいとして、幻覚に関して考えてみます。


 ストーブにあたっているパパ。

 ラーメンを食べ、残ったスープを捨てるママ。


 元々本作中においてエグい演出だったのですが、強調する意味合いが旧版とは異なります。

 旧版のパパは「のび太、こっちに来なさい。あったかいぞ~」と誘ってきましたが、のび太が近づいても暖かくない。だから彼は「全然暖かくならないよ」と文句を口にします。そしたら怒ったパパはストーブを持って消えてしまう。


 一方新版のパパはというと、のび太がストーブにあたりに行くとこんな事を口にします。


「のび太。誰の力も借りないんだろう?」


 とても穏やかで優しい、諭すような声色。思わずのび太は「えっ?」と声を漏らしてしまう。それでも暖をとろうとしますが、パパとストーブが大きめの石に変わってしまいます。そして自分が幻覚を見ていた事に気づいて飛びのいてしまう。


 この違いはなんなのか?

 それを念頭に置いて新版を観ることは、中々面白い思考を与えてくれる気がします。


 続けてママのシーン。

 凍えている息子の前であったかーいラーメンを食べており、「せめてスープだけでも!」と懇願しているにも関わらず容赦なく捨てるという薄情な場面ですね(苦笑)。旧版では最初からスープだけ捨ててた気もしますが、まあそこは些細な事なので置いときましょう。


 ママもまた、パパと同じようにのび太に問いかけるようなセリフを発します。


「一人で生きて行くんじゃなかったの?」


 これもまた、のび太が家出する際に言っていた言葉です。

 誰の力も借りず、一人で生きて行く。


 のび太はその言葉の重さを、大吹雪+遭難という死に近い状況で、実感するハメになってしまいます。

 小学5年生に対してご無体すぎるその言葉の数々は、のび太の気力をごっそりすり減らした事でしょう。


 ――のび太は雪に埋もれるように倒れてしまいます。


 そして最後に登場するのは、なんと自分自身の幻覚です。

 中々意地悪そうな顔をして責めたててくる彼。とりあえず悪(ワル)ノビタくんと呼称しましょうか。


 悪ノビタくんは次々に辛い言葉を浴びせてきます。

 まあまあ正確な台詞とは異なるところはありますが、


「あーあ、家出なんかしなきゃ良かったのにね」

「ママや先生の言う事をきいていれば、今頃は暖かいところにいられたはずなのに……」


 悪ノビタくんの言葉は、おそらくのび太の内なる一面そのものです。

 なんだかんだ言いながら後悔している(※特に今)ところを、代弁しているのでしょう。


「違うんだ……試したかっただけなんだ……」


 のび太は悪ノビタくんの言葉を否定しようとしますが、力が入っていません。

 それを見てここぞとばかりに畳み掛けられます。


「無駄だね」

「キミはひとりじゃ何にも出来ないんだ」


「そんなことより、もう寝ちゃったら?


 もう聞こえているかどうかも怪しい状態です。

 しかし、そんなのび太が発する次の言葉は――――、


「ククルを……」

「ククルを……助けなきゃ」


「ククルを…ククルを……」


 

 この台詞。短いながらも、のび太というキャラクターにとって大事なものです。

 自分自身の事で責められようとどれだけ後悔しようと、大事な友達を助けたい気持ちだけは変わらない。なんつー主人公っぷり。この場面で、のび太はとっても主人公主人公してます。


 その言葉を聴いた悪ノビタくんはというと、

 じゃあもう勝手にすれば―とばかりに消えてしまう。



 ある意味、自分自身に勝ったのび太なのですが。

 けれどもそれで状況が好転するわけではなく…………。


 謎の喋るマンモスが登場する機会なく、のび太はそのまま倒れ伏してしまいます。



 頼りの綱は「レスキューボトル」。

 こっちはツチダマレンジャーの1体に発見+破壊されてしまうため(※1)、のび太には届きません。こういうとこは旧版と同じなんだなーと(笑)。



(※1):「なんだアレは、怪しい……」とツチダマが口にするんですが……あえて言おう。オメーみてえな衝撃波を放つ空飛ぶ土偶に言われたくねえ!w 




◆今回紹介した改変の目的


 多数の改変によって何が行なわれたのか。

 ソレを簡潔にまとめるなら「のび太の掘り下げ」といって良いでしょう。


 とにかくのび太のキャラ性を掘る! 掘りまくる!

 のび太を中心に考えるのであれば、最初から最後まで続いた家でも、ククルとの出会いや交流も、ペガ達とのコミュニケーションも、ぜーんぶ「のび太を表現するためのモノ」です。


 その数多の演出が本作におけるのび太を形作り、何を考え、どう行動したのか。そして、どんな成長を遂げていったのかに繋がります。その魅せ方は非常に面白くて秀逸なのがにくい!!!(笑)


 それにしてもマンモスを消したのは、大胆なアレンジです。

 思いついても簡単には実行できません。シナリオを考えた人はどれだけの思考を繰り返し、最適な形で落とし込む努力をしたのか……。



 その成果が、クライマックスの●●●●●だったり、エンディングの★★★★★★だったりするわけですね! ワンダフル!!


※(一部情報は条件が整っていないため開示されません。ご了承ください)



 

 

 さて、次はドラえもん達の視点に移ります。

 そこで行なわれるのは、旧版よりも長く濃厚になったドラえもんvsギガゾンビのタイマンです。


 これがまた、作画枚数が多いのか中々にヌルヌル動くんですよね~(笑)。



 


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