④ミドルⅡ:心配するママ&理解のあるパパ? から 一度現代へ戻った直後のイベントまで

今回追っていくシーンは以下のとおりです。

 


・現代、のび太ママとパパの追加シーン&ククルが現代にはじき出される

・楽園の完成&ペガ達の誕生(追加要素あり)

・みんなで満天の星空を眺める

・一旦家出を中断して家に帰ってみると??




●のび太ママとパパの追加シーン&ククルが現代にはじき出される


 原始時代に爆速で楽園が作られている頃、一旦カメラは現代へ移ります。

 旧版ではククルが現代へはじき出される場面ですが、新版ではククルとは別にのび太ママとパパが登場する場面が用意されてますね。


 場所はのび太家の居間。雲行きの怪しい空(※1)を見上げるのび太ママが映りますが、その仕草と表情からは不安が感じとれます。コレは家出した(外に飛び出でた)のび太を心配しているのでしょう。同じく居間にいたパパが、ママの心配を感じとって概ねこんな感じに声をかける。


「家出かぁ……僕にもそんな頃があったなぁ」

「大丈夫だよ。暗くなったら帰って来るさ」

(ケージにいるハムスターを外に出しながら)「いつも檻の中じゃ窮屈だもんな」



 なんと言いますか、凄い良いお父さんキャラしてますね(笑)。

 誰にだってそんな時期はある。のび太なら大丈夫だから、僕らはゆっくり帰りを待とうじゃないか。そんな風に言いたげです。このパパ、デキるぞ!

 

 以降パパの出番は ほぼ無いのですが、印象に残る名台詞集といったところです^^

 

 ママとパパの出番が終わると、入れ替わりで時空乱流からはじき出されるククルにカメラが映ります。が、ココは旧版との違いはほぼ無いのでご割愛。




(※1):今にも雨が降りそうな天気ですが、もしかしなくても時空乱流の影響でしょうか? 少し離れた空の雲は黒くないですし……。うーむ、芸が細かい。




●楽園の完成&ペガ達の誕生


 この場面の流れは旧版と基本的に変わりません。監督役のドラえもんがしずか→スネ夫→ジャイアン→のび太の順番に様子を見にいき、改めて必要なひみつ道具を渡します。その際、新版ならではの要素として各道具の効果について多少細かく説明されているか、実際に使っている描写が増えています。


 さて、この箇所でのメインといえば やはりペガ達の誕生です。


 大雑把に言ってしまえば少々演出が変わっている程度で変化がないように見えますが……実はそんな事なかったりします! 

 新版ではのび太とペット達の交流がより強く描かれていると同時に、各ペットの個性が豊かになっているのです。

 個性の演出は主にグリとドラコに追加されており(※2)、全てはエンディングに向けた布石となるのですが、今回の要注目ポイントはドラコ。


 なんと、ビジュアルが龍から竜(ドラゴン)になっています!!


 ――すいません間違いじゃないけど、大事なのはソコじゃない(笑)



 大事なのは、ドラコがペットフードを喉に詰まらせてるトコです。


 他の二匹と比べて「食いしん坊」の設定が付与されています。赤ちゃんがご飯を上手に食べれないのはよくありますが、ドラコは明らかに食べるスピードが速い。結果、喉に詰まらせてしまって お母さん(のび太)に背中をポンポンしてもらって吐きだしています。うーん可愛い♪


 ペットの場面が終われば、みんなで夕食。


「どーせ昼寝してたんでしょw」


 と、からかわれた のび太が「昼寝なんてしてないよ! ……居眠りしてたのっ」なんて冗談をかまして皆がずっこける場面も旧版では無かった要素ですね(笑)。



(※2):また別の項で書きそうではあると前置きしつつ。演出がグリとドラコに追加されていると書きましたが、ペガには無いって訳ではないです。ただ、この3匹の目立ち度合いだとのび太が乗る事になるペガが一番になりますので、その分他の二匹には多めに尺を割いているといった感じ。

 でも……ペガには最後の最後で泣ける演出が――(ry




●みんなで満天の星空を眺め、石槍に誓う


「自由だぁ……」


 各々がそう口にするこのシーンでは、満天の星空が広がっています(※3)。なんせ7万年前の夜空ですから、現代人にとってはさぞ素晴らしい眺めでしょう。


 面白い演出としては、最初に「自由」を口にする際は一同が清々しいというか解放感あふれる表情をしているのですが、そのあと一人一人がピックアップされる形で何か深く考えているような顔つき(※4)になっているところですね。


 誰からともなく「一度帰ってみる?」と、話が切りだされます。しかし、この意見にジャイアンが反対。たとえ皆が戻ろうとも自分だけは残る態度です。

 残るか、戻るか。その相反する意見に中間的な答えを出したのはのび太でした。


「家出は止めないよ。……ちょっと中断するだけだよ」


 だってこの場所にはいつでも来れるのだから。

 その折衷案には皆が大賛成。


 自分達が作ったこの楽園の事は誰にも教えないようにな! そう念を押すジャイアンを皮切りに、それぞれが持っていた石槍(ショックスティック)を高く掲げます。


「石槍に誓って!」(※5)

「「「「石槍に誓って!!」」」」


 仲間内で誓いを立てて、5人は一旦現代へと戻っていくのでした――。



(※3):旧版では虹を眺めていたシーンにあたる場面です。夜空を眺めるシーンに変わっているのは、時間経過に配慮したところもあるのでしょう。旧版では現代に戻るまでの間ずっと昼間でしたが、新版だと昼間→夕方→夜と時間経過を感じさせる背景に移り変わっています。芸が細かい!パートⅡ


(※4):彼らが何を考えているのかは台詞では表現されません。おそらくは不自由から解放された事で冷静になり、これからの事を考えていると思われますが…………いやー、表情だけでその心情を表現できてるのが大変素晴らしい。


(※5):『新・日本誕生』ならではの合言葉・掛け声・決め台詞ですね。今回を含めて全体を通して2回しか使われませんが、石槍を持っている作品だからこそ使える良い台詞。皆の心をひとつにする表現としてもナイスでございますれば。

 余談ですが『のび太の宝島』だと「アイアイサー!」が同じ意味を持ちます。コッチの方が使われる回数が多く、口にするキャラの組み合わせも豊富です。シーンが切り替わる合図という面もあったり。




●一旦家出を中断して家に帰ってみると??


 現代に戻ると、そちらも夜になっています(※6)。

 のび太とドラえもん以外はタケコプターで自宅へと戻っていき、ドラえもんは速攻でハウス(押入れ)に立てこもり(※7)。


 そしてのび太はというと…………物音を聞きつけたらしきママに見つかります。

 このシーンがのび太ママとのび太の心境をそれぞれ想像してみると、非常に深みのある場面となっていて面白いのですよ!!(強めの主張)


 まず、のび太ママが部屋に入ってくる際に、無事に帰って来たのかという「心配」 → 何事もなかった事への「安堵」の感情表現がなされます。


 続けて怒っている顔で詰め寄り、息子の肩を掴んでこう言うのです。

「こんな時間までどこに行ってたの!?」


 その言葉を聴いたのび太は震えあがります。目をつぶって次に訪れるであろうお説教タイムにビビリまくり!

 怯える息子の様子はママ視点で映し出されるのですが、ハッとした感じでママの表情が一転して柔らかくなる。そして一言。


「ご飯、出来てるわよ」

 

 お叱りどころかちょっと優しい? そんなのび太の動揺を感じたのか、ママは「食べないなら片づけちゃうわよ!!」と急かします。慌てて部屋を出ていくのび太くん、溜息を吐くママ。


 最後はドラえもんが「珍しい、ママがお説教しないなんて……」と普段と違うのだという表現をして親子のやり取りが終わります。


 一応〆にククルの遠吠えシーンがありますが、どちらが重視されているかは明白ですね。


 この場面以降もそうですが、のび太ママ&のび太パパが登場するシーンは『日本誕生』のメインストーリーとは少し外れた位置にあります。ママやパパのやり取りはギガゾンビを倒すヒントにはなりませんし、手助けをしてくれる助っ人としての登場もない。


 ですが、『日本誕生』の発端。のび太はどうして家出をしたのか? その家出によってどう成長したのか? 親子に起きた小さな変化、気づきとは?

 これらの要素を中心にシーンを並べてみれば、散りばめられたシーン達の繋がりや内包するテーマ性が見えてくるのではないでしょうか。それは本作にさらなる深みをもたらし、ククルとその家族、のび太とペット達にも影響がありそうですね。




(※6):本作においては現代・過去で過ごした時間は、基本的に遡ることなく両方に反映されているようですね。その辺について作中で言及してしまうと「じゃあ事件が起こる直前まで戻れば良くない??」と余計な思考を視聴者に発生させてしまうでしょうから、あえてオミットしてるのでしょう。


(※7):ハムスターが怖いからです(笑)。キミ、ついさっきまで忘れてたやんw



 

 多少長くなりましたが、今回はここまで!

 次回からは実質的な第二部のスタートからになります。

 

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