⑭ミドルXII:のび太ピンチ!・ドラえもん達の戦い・ギガゾンビの正体

さあ! ここからはミドルの終盤からクライマックスへ至る道の始まりです。


 前回の項でのび太が皆とはぐれてしまいました。

 ドラえもん達はのび太の安否を気にしつつも行動します。

 そしてギガゾンビ側にも視点が移動する。


 一応は3つの視点から物語が描かれていくわけですね。


 入り混じる形にはなりますが、この項ではそれぞれについて書いていこうと思います。



●はぐれたのび太サイド!


 高速電車ごっこから脱落したのび太ですが、猛吹雪の中を一人彷徨っています。どこが目的地なのかもわからず、エアコンスーツがあっても寒さで体力は限界。超絶ヤバい状況です。


 のび太自身は知りませんが希望は「レスキューボトル」!

 しかし、視聴者は知ってしまいます。レスキューボトルがツチダマに捕捉され、ギガゾンビの下へ持ち帰られた事を。それを見たギガゾンビがレスキューボトルを粉々に砕き、無自覚にのび太くんの希望を断ち切ってしまうのです。


 こうなると視聴者も安心できません。

 遂に動けなくなってしまったのび太くん。遂にはパパやママの幻覚※1まで見えてしまい……状況は悪化の一途。


「もっと良い子にしていればこうはならなかったのかなぁ……」


 後悔しても遅い。けれど彼は悔やまずにはいられません。

 もうダメなのか……なんかドラえもんみたいなのが数人でのび太を裁く裁判※2まで始まってしまいました。泣きながら嫌がるのび太ですが、そこに救いの手が! まるで天使のようなしずかが現れ、温かいスープを渡してくれたのです。


 …………うわぁ、いよいよのび太少年の幻覚もソコまでいったか。

 などと視聴者が感じるような映像ですが、


 あれ???

 背景が猛吹雪に戻っても飲んだスープの器が消えない???

 更には何やら重々しい声が響きます。


「……モウダイジョウブ。スグニ元気ニナルカラネェ」


 視点カメラが動くと、のび太の近くにいたのは“でっかいマンモス”! いきなり登場した新キャラ(?)ですが、マンモスなのはイイとしても、喋る+スープをくれる+なんか変な小箱もくれるというトリプル謎コンボが炸裂します。


 マンモス(?)に助けられたのび太はそこで意識を失ってしまい、マンモスは何やらぶつぶつ呟きながら去ってしまいます。


「やはり見つからない……」

「もし、キミが――見つける事が出来たのならスイッチを――」


 あのマンモス一体何者!?

 ってなところでのび太サイドは一旦閉じましょう。


(※1):『日本誕生』におけるトラウマになりやすいシーンその2。その1は時空乱流の説明時です。ストーブで暖をとるパパがストーブをとりあげたり、ママがラーメンのスープを目の前でこぼして見せたり……どちらも必要なのび太にとっては苦しすぎる幻覚……。家出をした負い目が彼にその光景を見せたのでしょうか。


(※2):こちらも幻覚、あるいはのび太の心象風景でしょうか。裁判官も弁護士もドラえもんそっくりで全員がのび太に悪い印象を持っています。ドラえもん本人も証言で登場しますが、けちょんけちょんに言いまくってますねツライ(苦笑)。

 この裁判風景は旧版にしかありませんので、比較して見るのであれば貴重な旧版専用シーンと言えそうです。



●ドラえもん達4人サイド


 洞穴に逃げ込んだドラえもん達は洞穴奥に階段を発見します。ラッキーなことにトコヤミの宮へ到着していたのです。

 スニーキングミッションよろしくで潜入する一行。


 長い階段と通路を進んだ先には、大きな大空洞が!

 そこではヒカリ族やククルを始めとした沢山の人々が奴隷のように働かされていました。クラヤミ族も相当な数がおり、監視と指示をしながらミスした者にはムチの罰を与えている状態です。


 状況を把握したからには一刻も早く皆を助け出したい。とはいえ救助者も敵も人数が多すぎます。

 そこでドラえもんはひみつ道具「ウルトラストップウォッチ」を使用。自分達以外の時間を止めて、「とおりぬけフープ」を併用して脱出路の確保を試みる。


 しずか・ジャイアン・スネ夫には少し残ってもらって、ドラえもんは脱出路がちゃんと出来ているかどうか確かめようと単独でとおりぬけフープの道を見に行きます。


 が。

 かなり長い間、道の終わりが見えません。


 コレにはドラえもんも訝しがりますがそのうち出口が見えたので一安心――できない!(笑) フープの先にあったのは“外”ではなく、何やら高度な機械満載の施設内だったのです。


「なんだこれわぁ?」


 ドラえもんが施設内を見て回ります。

 その時、こちらへ向かってカツン……カツン……と誰かが近づいてくる音がします。


「そんな……時間は止まっているはずなのにッ」


 とても驚くドラえもんの前に、遂にソイツが姿を現します。

 本作のラスボス・ギガゾンビ!


 このタイミングでまさかの主役&ボスのご対面。



 一体全体どうしてギガゾンビは止まった時間の中を動けてしまうのか。

 ――この謎と彼の正体については次の項に引き継ぎましょう。




●ギガゾンビの行動


 まずギガゾンビはドラえもん達がトコヤミの宮 (自分の居場所)に到着した事は察知していました。

 レスキューボトルに関しては発見したツチダマのお手柄かもしれませんが、どちらにせよ怪しい物は破壊するに限るって感じにぶち壊します。


→ 主人公達の希望を潰す事で視聴者を不安にさせる意味合いがある


 ついでに私見ですが、ギガゾンビは最も警戒している敵に情報を与えたくないからレスキューボトルを破壊したのかもしれません。小さいけど明らかに時代的な異物ですからね、怪しんで当然。


 その後は、おそらく高みの見物 (本編で描写はないですが)

 ドラえもんがどういう行動を取るのかを見張っていたのでしょう。かなり余裕のある態度&強者演出な感じ。

 

 ウルトラストップウォッチの時止めもなんのその。

 ついでにとおりぬけフープの出口もちょちょいといじって自分のいる場所に変更します。


 そこまでやって満を持してドラえもんとの対面!

 驚愕するドラえもんを見てさぞかし愉快そうに笑っていたのでしょう。用意周到、力の誇示、うーむ、いい感じにイヤらしい性格をしてますね(笑)。


 さてさて、視点をドラえもん側に戻して解説してみましょう。


 いきなりボスとバッタリなドラえもん。時間は止まっているはずなのに何故??

 その疑問に対してギガゾンビが応えます。



「お前の時間停止はワシが解除した!」

「解除ォ!?」



 つまり「ひみつ道具の効果を打ち消した」と。

 ひみつ道具は未来の道具。その効果を解除したというのなら、つまり……ドラえもんは真実に辿りつきます。



「わかったぞ! お前は未来人の時間犯罪者だな!?」



 時空犯罪者。

 タイムマシンを用いて歴史を改変しようとする大悪党。


 これまで原始時代の凄い呪術師まじないしと訊きつつも謎が多かったギガゾンビの正体は、ドラえもんと同じく未来からきた人間だったのです。


 ここでギガゾンビが嬉しそうに自分の目的を語ります。コレはドラえもんに話していると同時に、視聴者に対して制作陣が伝えたいものでもありますね。


→ 黒幕の正体&目的の提示 + 因果関係の開示


 要約すると。

 時間犯罪者たるギガゾンビは、歴史を自分に都合のいいように改変しようとしています。

 原始時代を選んだのは、未来人の力があれば原始人を従わせるのは赤子の手をひねるようなものだから。

 現在進行形で計画は進んでいる。ただ、最終段階としてタイムトンネルを破壊するための「亜空間破壊装置」はまだ完成していない、といった感じです。


 時間犯罪者の前には常に未来の警察「タイムパトロール」が立ちはだかるのですが、タイムトンネルを破壊さえしてしまえば幾らタイムパトロールでもギガゾンビを捕まえられなくなる寸法ですね。それとあまり説明されてませんが、亜空間破壊装置の実験は例の時空乱流を生み出しています。

 ククルが吸い込まれたのは偶然かもしれませんが、原因はギガゾンビ。『日本誕生』はギガゾンビの悪事からスタートしていた面もあるわけですね。


 そんな野望を放ってはおけない!

 ドラえもんはギガゾンビに挑みますが、速攻で一発KOされてしまいます(苦笑)。


 目下の邪魔者だったドラえもんを仕留めて、ギガゾンビも盛大にニヤリ。

 こうして主役達は巨悪の前に敗北し、捕まってしまうのでしたとさ。



→ ドラえもんよりも優れている存在だと見せつける! 絶望の加速。


 



 ……何一つめでたくないですが、今回はこれで終了。

 次回へ続きます!

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