⑬ミドルXI:トコヤミの宮を目指して

 不安は現実へと変わる。

 ドラえもん達が到着した頃には日本に作ったヒカリ族の村は襲撃された後。人っ子一人いやしません。

 

 でも仮にクラヤミ族&ギガゾンビの仕業だとすれば、どうやって中国から日本まできたのか???

 疑問を解決する間もなく、空に巨大なギガゾンビの姿が映し出されます。


「ヒカリ族を取り返したければトコヤミの宮へ来い」


 高らかに笑うギガゾンビに向かってジャイアンが槍を投げますが見事に素通り。空に浮かんだギガゾンビは幻に過ぎず手を出すことはできません。



「行こう、トコヤミの宮へ!」


 

 ギガゾンビの本拠地トコヤミの宮を目指して、ドラえもん達は行動を開始します。




●で、トコヤミの宮はどこにあるのさ???


 目指すのはいいけど場所がわからない!(笑)

 ひみつ道具をいくつも使いながらドラえもん達の探索がスタートします。


①どこでもドアでクラヤミ族と戦った場所中国大陸まで移動

②たずね人ステッキで大体の方向を割り出す

③タケコプターで移動する


 以上の手順が踏まれます。

 それぞれ上から順に「大幅なショートカット」「目的地がある方向への割り出し」「飛行移動」ですね。元々クラヤミ族は北の方へ向かっていたようなので、その辺は事前情報で持っています。たずね人ステッキはその補足と見て良いでしょう。


 岩山をいくつも越えてしばらく移動していくと、段々周囲の景色が白く変化していきます。

 雪と氷に覆われた白い大地。ドラえもん達は北へ北へと向かっている内に極寒の世界へと足を踏み入れたのです。


 そしてココで困ったことにタケコプターが限界を迎えてしまいます(※1)。

 メイン移動手段を失った一行は地上に降り立ちますが、気温は-50℃! エアコンスーツを着ていなければ一瞬で凍っちゃう程に寒い過酷な環境です。その上氷の大地がゆっくりと動いているせいで大変危なっかしい。徒歩で移動するにも何か道具が欲しいところ……。


 はい! ここで登場するのが「リニアモーターカーごっこ」!


 一見電車ごっこをするためのロープにしか見えないその道具は、なんと複数人が時速300キロオーバーで移動できるようになるすごい道具です。ただ難儀なことに動かすのは自分の足で、移動するのは一直線の線路ではなく雪山です。使う側もそのビジュアルと性能にちょっと渋々笑。


 それでも他に良い手はありません。

 一行は300キロオーバーの高速電車ごっこで雪山を爆走します。


 どこまでもどこまでも、見えている雪山の向こうまで。



(※1):映画ドラえもんをいくつも視聴していると、タケコプターが故障する場面をよく見かけます。ドラえもんのひみつ道具というヤツは超万能ガジェットなため、いつでもどこでも何にでも使えるとなると制作側としては中々に困ってしまいます。ドラえもん達をピンチにするのが難しくなるからです。

 そこで「どうやってひみつ道具が使えない・効果を発揮しない状況にするか」は大事なポイントなのでしょう。その代表格として定番道具タケコプターは「よく故障」します。


 結果、便利な飛行能力が一時的に失われる=主人公達の有利な点が1つ無くなる わけですね。


 




●いつの間にか1人足りなくない?


 ひたすら走り続けて辺りが暗くなった頃、一行は猛吹雪に見舞われます。

 走り続けた疲れもあってヘトヘトなドラえもん達でしたが、運よく吹雪から逃れられる洞穴を発見!

 わずかな幸運に感謝しながら洞穴に入って暖をとります。


 この時、ドラえもん達はのび太を褒めていますね。ぐずでのろまなのび太くんだけど、みんなと一緒に高速電車ごっこを乗り切りました。その頑張りは皆も感心するところだったのでしょう。


 が。

 肝心の のび太の返事がありません(※2)。周囲を確認しても姿どこにもない=どこかではぐれてしまったようです。外は命が危うい猛吹雪。そこで単身迷子になったとあっては気が気じゃない。

 映画版では友情に篤い男ジャイアンが真っ先に外へ探しに行こうとします。ドラえもんが引き止めますが、


「だってこのままじゃアイツ死んじゃうじゃんか!」


 さすが映画仕様のジャイアン。普段は乱暴者ですがこういう時は熱い。

 それでも無謀には違いないため、ドラえもんが新たなひみつ道具「レスキューボトル」を取り出します。


 ソリに乗った犬型のボトルといった見てくれの「レスキューボトル」の中には栄養ドリンクが入っており、鼻先の部分に遭難者の匂いを記憶させると匂いを辿って遭難者をレスキューしてくれる……のはいいんですが。


「……のび太の匂いって?」

「あ」


 本人がいるわけないし、現在地は雪山の洞穴外は猛吹雪です。のび太の匂いがわかる物なんてその辺にあるはずもなく……ちょっと抜けてる猫型ロボットに呆れと怒りが半々といったところ。


 ポケットの中を漁るドラえもん。

 なんとそこには「のび太くんの答案用紙0点」がありました!(※3)


 これで匂いはバッチリ。

 レスキューボトルが雪原を走り去っていきます。あとはなんとかなるはずだから、自分達は身体を休めよう。




 ――――少しだけ安心したドラえもん達は知らないのです。

 頼みの綱のレスキューボトルが、ツチダマに補足されてしまう事を…………。

 



 

 今回はここまで。

 そろそろミドルの終わりが見えてきましたが、また次回へ続きます。





(※2):高速電車ごっこ時、のび太は前から二番目にいましたがどこかですっぽ抜けてしまったようです。猛吹雪の場面になってから少しすると画面右から左へドラえもん達が走ってきますが、スロー再生してみるとその時点でのび太がいません(苦笑)。視界最悪+高速移動に集中していた他メンバーがのび太がいなくなった事に気づかなかったのも仕方ない。



(※3):なんでそんなもん持ってんねんww とツッコミたいとこですが、実はよーーーーーーく観ると本編中のド頭で伏線が張られていたり。

 のび太が「家出するー!」と言い出してた頃でドラえもんが勉強を促すところで0点の答案用紙を持っています。そして騒いでいる間に答案用紙は流れるようにポケットの中へIN! こうして後々レスキューボトルに使われるわけですね。


 面白い伏線です。

 ただ、伏線回収までがかなり長い+アレが伏線だったと気付きにくいので、アハ体験にはなりづらいかもしれません。あと「ドラえもんなんだからのび太の答案用紙ぐらい持ってるべ」と気にされない可能性もあります^^;

 逆に考えると「まさかアレが繋がってるなんて……」と思わせてくれる伏線としては良い例。ついでにこの答案用紙はもう1回だけ活躍する機会が用意されており、風に飛んで岩だかに引っかかるのが伏線になっています。

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