⑤ミドルⅢ:楽園創造の後半+現代へ一旦帰る

では引き続き場面を追っていきましょう。


 少し足早な説明になりますが、


・ククルが時空乱流によって現代に出現する(※1)

・場面は原始に戻り、楽園の完成・ペガ、グリ、ドラコの三匹が誕生

・気持ちが落ち着いた一行、現代へ一旦帰る


 こんな感じにシーンが続きます。

 ピックアップすべきはペットの3匹。ペガサスの「ペガ」、グリフォンの「グリ」、ドラゴンの「ドラコ」でしょうか。


 実はやれば出来る子のび太の天才的発想によって、7万年前の日本に幻想生物が3体も生み出されました。彼らはのび太くんをお母さんと認識して甘えてくるのですが、のび太くんは一度彼らの存在を隠します。皆を驚かせたいという悪戯心と見栄からくる言動でしょうかね。


 ドラえもんから受け取ったペット用の餌をあげて、きっと彼らはスクスクと育つはず――その成果は再び楽園を訪れた時に発揮される事になるので一旦この話題は横に置きましょう。


 新築の洞穴住居に集合する一行。ご飯も食べてお腹いっぱいになった後は、ひみつ道具で作ったらしき虹をみながらのんびりします。

 そこでジャイアンの一言を皮切りに「一旦現代へ戻ろう。ココにはまた来ればいいじゃない」と話が進んで、ドラえもん達はストレスを発散した状態で帰還することを選びます。


 ドラえもんに至っては家出した原因を忘れているので、よほど楽しかったのでしょうね。


 

 ところで、ココまでのストーリーだけを切り取れば『ドラえもん』の1~2話分のエピソードとして成立します(※ククルの要素を外す必要はありますが)。

 特に新版だと、のび太のパパとママが家出したのび太に関して話をする・登場するシーンが追加されており、エピソードの区切り感はさらに強くなっています。コレが短編のエピソードであれば、ストレスを発散したのび太くん達は改めて現実の問題と向き合うようになった、そんなオチになりそうです。



 ある意味、ここまでが本編の準備段階。

 私はミドルの位置づけにしてますが、長めのオープニングと判断するのも十分考えられます。


 『日本誕生』での冒険パートはもう少し先。ドラえもん達がククルと出会う事でようやく始まるのです(※2)。




(※1):映画を観る限りではククルがのび太くん達の時代にはじき出されたのは「偶然」です。勿論メタ的にはドラえもん達と素早く合流させたいからでしょうが。

 ただ「何故この時代に?」と考えてしまうと答えは得られないので、サクサク進行させる事でその疑問が浮かぶ時間をなるべく与えないようにしてると思われます。


(※2):ゲストキャラであるククルとの出会うタイミングですが、総合的な尺から考えると「割と遅い方」になります。もし『日本誕生』の上映時間がもっと短かった場合、ドラえもん達とククルの出会いはもっと早くなったでしょう。どうしてそうしなかったのか? 勝手な予想ですが「夢を叶えるドラえもん」というお約束を最初に展開して、楽しい家出・原始時代の楽園という強い掴みのシーンを入れたかったのかもしれませんね。

 同時に、ククルやヒカリ族 (原始時代の人間)を守ろうとギガゾンビと戦う動機の一助にもなってそうです。

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