第2話 クロとの時間

カラララララララララ。

必死に車輪を回す。

車輪を回すために走る。

そんな僕を見て、ニンゲンたちは癒やされると言ったりする。

よし、少し休憩。いい運動になった。

車輪の近くにある皿に置いてあるヒマワリの種を齧る。

美味しい。運動のあとの種は格別だ。


僕はハムスターのまる

如月中2年A組の教室の一角を住処にしている。

僕の住処の2年A組はニンゲンたちが集まって行動するところだ。いる日もあるし、いない日もある。

ただ、毎日いるやつがいる。

僕はそいつがいつも黒い上着を着ているからクロと呼んでいる。

クロは、大体は多くのニンゲンに向かって口をパクパクしながら音を出している。残念ながら僕はその音が表す事を解読できない。

多くのニンゲンがいないときは教室でたくさんの紙を睨みながらいじっている。時々その紙を置いて僕のご飯を置いてくれる。クロの手のひらに行くと、優しく撫でてくれるから僕はクロが好きだ。


今日は多くのニンゲンはいない。

教室のドアが音を立てて開いた。

クロだ。クロが入ってきた。

たくさんの紙を持っている。

そういえば昨日はたくさんのニンゲンが紙に向かって無言で棒を動かしていた。たぶんその紙を、持っているんだろう。


クロは教室の前にある台に紙をドサッと置いて僕の方へ歩み寄ってきた。

僕が入っているカゴ開けて、僕を開放してくれた。クロはそのまま手を差し出したからそこにぴょんと飛び乗った。

クロは僕を優しく撫でた。

クロの手は温かい。とても気持ち良い。

もっと撫でてほしくて、クロの手に頬ずりした。

クロは目を細めて笑った。


しばらくクロに撫でられていると、クロは口をパクパクした。そして、優しく微笑むと僕をケージの中に入れようとした。


僕はまだクロと一緒にいたくて、クロの手の端についている細長い指を両手ではっしと掴んだ。

クロは僕の様子に苦笑いしながらまた僕を手に乗せた。


クロはそのまま僕をクロの台に連れて行った。

そして僕を台の上に置いた。少しひんやりしている。


クロは紙に棒で丸を書き始めた。

たまにばってんも出てくる。見ていて面白い。

紙も棒に合わせてシャッ、シャッと音を立てる。

丸、丸、バツ、バツ、丸。

バツ、丸、バツ、バツ。

二度と同じパターンはなく、不規則で面白い。

紙もリズムを刻んで歌っている。

僕もキュキュキュ!と歌ってみた。

クロはにっこり微笑んだ。


たくさんの紙も、全部丸かバツと記号が描かれた。クロは僕をケージに戻した。僕もキュキュ!と鳴いてお礼を言った。クロも口をパクパクして音を出した。

僕はなぜか、クロが「こちらこそありがとう。楽しかったよ」といった気がした。いや、きっとそういったんだろう。なぜか確信があった。


僕は、昨日よりもっと、クロのことが大好きになった。

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