ついに

1.卵です。

  私は今幸せいっぱいです。

  優しい優しい食パンさんに挟まれているんですから。

  どうやら出荷の時が来たようなんです。

  それでこの食パンさんはここに来たそうです。

  でもそんなのどうだっていいんです。

  食パンさんは私を、小さくて可愛い、良い匂いがするって褒めてくれます。

  私たちは重ねられて袋に入れられます。

  私は優しい食パンさんと憧れのハムさんに挟まれてるから怖くないんです。

  ハムさんも何だか幸せそうですし、ハッピーエンドですね!




2.ハムよ。

  とうとう私たちも出荷される時が来た。

  私は卵ちゃんと、それからなんとレタス君に挟まれることになったの。

  卵ちゃんは新しく現れた食パンと隣になれて嬉しそう。

  私は食パンから離れられただけで嬉しいのに、隣がレタス君だなんて。

  幸せでしかないわ。

  なんだか私を食パンから守ってくれてるみたい。

  出荷って怖いと思ってたけど、これなら平気ね。

  背中はほんのりあったかい。

  前はひんやり。

  あぁ、幸せ。

  欲を言えばレタス君に私の方を向いてお喋りしたいんだけど。

  なぜか食パンが私に話を振ってくるからまぁいいわ。




3.食パンだよ。

  僕たち出荷されるんだ。

  やっとレタス君とハムちゃんの恋が実ったところなのに残念。

  でも2人が隣同士になれたから良かった!

  なのにレタス君ったら僕の方にばかり話しかけてくるんだよ。

  照れてるんだろうね。

  だから僕、ハムちゃんに話を振ってあげるんだ。

  そしたら2人が話せるでしょ?

  ハムちゃん、顔真っ赤だよ。

  レタス君は汗がすごい。

  2人とも緊張してるんだね。

  可愛いね。

  ハムちゃんの向こう側では卵ちゃんがもう1人の食パンと楽しそうにしてる。

  実は僕のお兄ちゃんなんだ。

  とにかく、みんな幸せそうで良かった!




4.レタスだ。

  出荷される前に食パンの好きな人がいないっていうのを聞けて良かった。

  だってまさかの隣になれたんだから。

  反対側はハムちゃん。

  これで食パンがハムちゃんのこと好きだったら、いたたまれないよな。

  きまずすぎるだろ。

  でもそんな心配もしなくていい。

  最高だ。

  1つ問題は、俺が緊張しちまって汗がひどいこと。

  でもそんな俺を受け止めてくれるのが食パンだ。

  嫌な顔ひとつせず吸い取ってくれる。

  そんなところが好きだぞ。

  ついつい食パンにばっかり話しちゃってたけど、

  ハムちゃんが1人なのに気づいた食パンが話を振ってあげてた。

  さらっとそういうことが出来るのがかっこいいよな。

  これが幸せってやつか。

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パンと、パンにはさまれた具材の気持ち 水月 都 @m-miyako

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