お前より良い奴はいる
本当は適当な理由を考えてバックレようとしていたのだが、今日の昼休みの様にこちらに会いに来る可能性を考えると頭が痛いので我慢して
放課後に教室に行きますというメッセージを保健室で先生にバレないようにこっそり送ると体調を心配する言葉が返ってきた。
それには何も返さずにスマホをポケットに突っ込んで目をつぶった。
覚悟はしてきたはずなのに帰りたいと思った。
手が若干…結構震えているのは気のせいではないし気持ちが悪くなってきた。
でもこれ以上は
そして何より私の平和な日常の邪魔はされたくない。
私は教室のドアを勢いよく開けた。
そこには待ってましたと言わんばかりの笑顔で浅野成哉が出迎えてきた。
「ごめんね体調悪い時に」
そうかそう思うのであれば呼ばないでくれお前のせいで私の体調が悪くなったんだけど?
本当に反省して欲しい。
「要件があるのなら早くしてくれませんか、体調良くないので」
「あ、そうだったでね要件何だけど…俺と付き合って」
…聞き間違いだな。
「じゃ!私帰ります」
「待て待て待て!」
先程の嘘っぽい笑顔が崩れて慌てて私を浅野が止めてきた。
何だ話は終わっただろう帰りたいんだが?という気持ちを込めた視線を彼に向けた。
「俺の話聞いてた?」
「ふざけてるみたいだから私帰りたいです」
「真面目に言ってるんだけど」
私は頭を抱えた。
そして気分が悪くなったから近くの席をお借りして座った。
「で返事は?」
「…はっきり言って不愉快だからお断り」
「何で?!俺顔も良いし勉強だって出来るし運動も!」
私は大きなため息をついた。
頭が良くても分からない事ってあるんだなと思った。
問題の男はそれを聞いて口をポカーンと開けていた。
「どうして断る?どの女だって俺が好意を向ければ皆…いつも首を縦に振るのに…」
「…馬っ鹿じゃないの?」
「は?!馬鹿ってなんだよ!」
顔を真っ赤にして浅野は怒っている。
私は椅子から立ち上がって彼の前に立った。
近づくと余計に気持ちが悪くなるけどこの馬鹿には分からせる必要がある。
「あんたにとって女は自分のことを絶対に好きなってくれる人なんだろうけど、そんなことないからね?…はっきり言うけどあんたよりも良い人なんているよ」
言いたいことを全部言って私はその場を去った。
最後に見た浅野の顔は目を見開いて呆然と立っている姿だった。
急に緊張の糸が切れたのか私は玄関に来てしゃがみ込んだ。
ぜぇはぁと肩で息をして必死に空気を取り込む努力をする。
そんな時にポケットに突っ込んだスマホが振動した。
こんな時にかけてくる空気の読めないやつはどこのどいつだ。
私は震える手で取り出して誰からかかってきたかも確認せずに耳に当てた。
「もし、もし?」
「あ、良かった
電話をかけてきたのは海だった。
私は安心したのか目から涙が出てきた。
「部活終わったからさいるなら迎えに行くよ」
「げ、玄関ちょっと泣いてるから…」
待っててと言おうとした時にブツりと通話が切れた。
ドタバタと大きな音を立てて海がやってきた。
「来ないでって言おうとしたのに…」
「わ、悪い泣いてるって聞いたら体が勝手に動いて…」
ハンカチを渡してくる彼はさながら王子様といったことろだろうか?
私にとってはただの海だが。
「どの女の子にもそんなことしてたら勘違いされるから気をつけなよ」
借りたハンカチで目元を拭いながら私は言う。
その言葉に彼は何か言いたげな顔をするが「そうだな」と肯定した。
「落ち着いたら帰るか、帰りにコンビニ寄ってお前の奢りで肉まん」
「いいよハンカチのお礼に買ってあげる」
「え?!まじ?!じゃあ高いやつ頼む!」
仕方ないそれくらいなら奢ってやるとするかと思って私は海の手を握って立った。
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