平穏少しずつ崩れる
お昼休みにさぁご飯を食べながらゲームするぞ!と意気込んでいると廊下から女の子たちの黄色い声が聞こえてきた。
そしてその原因は私の目の前にやって来た。
体が冷水を浴びたかのような冷たい感覚と嫌な思い出がフラッシュバックする。
「ねぇ君と話がしたいんだけど良いかな?」
睨みつけて見ているが目の前の男は何も感じていないのか何なのかニコニコと笑っている。
「…どうしてですか?」
「君と仲良くなりたいだけだよ」
他の女の子たちと違い私の表情はひきっつている。
愛想笑いとか他人相手に出来たはずなのに今回はそれも出来ないくらいには嫌悪感を覚える言い方だった。
「そうですか…なら距離感考えた方が良いですよ?急に距離が詰めると嫌な子はいますから」
主に私だけどな?!
「そっか…じゃあ連絡先とか交換しようよ」
強制的に浅野成哉の連絡先を手に入れることになった。
私はそれを無言でブロックしようとするが彼はそれを止めて来た。
「目の前でやる?普通?」
「影でこそこそやるのも良くないなってやるなら目の前でやった方がいいですよね?」
イケメンの笑顔が若干崩れている。
だが相手は顔面偏差値高い男だ。多少のことでイケメンは崩れない。
「私お昼ご飯食べてゲームしたいんです。今やらないと絶対に後悔するので、私とお話しても面白くないでしょうからお引き取りください」
こっちは忙しいんだ、お前に構う余裕などこれっぽっちもない。
「また放課後会いに来るから、邪魔してごめんね」
「そんな無理して来ないで良いですよ」
来ないでくれ。お願いだから来ないで欲しい。
「
香恋ちゃんは驚いた様子で私を見ている。
私はそれを全力で否定した。
「他人!断じてあんな野郎が知り合いだなんてありえない!
海も顔は良いけどアイツは何故か発作が起きない。
イケメンと会話をしていると気分が悪くなるのだ。
昔付き合った先輩のせいでそんな風になってしまった。
「おーいそれは俺をディスってる?」
「馬鹿にしてないよお前はだって平気なタイプのイケメンだもん」
「…そうかよ…体調は?」
あら意外、海が私の心配をしている。
「顔色さっきよりはマシだけど死ぬほど悪いのは変わりないぞ」
「大丈夫縁ちゃん?保健室行って休んだ方が良いんじゃないかな」
香恋ちゃんが不安そうに瞳を揺らして私を見ている。
私はこれ以上心配させたくないなと思って保健室に行くことにした。
海は一応倒れるわけないのに香恋ちゃんに付き添いで行ってきてと言われてついてきた。
「あのさ…やっぱりまだあの人のことで…」
「昨日思い出しちゃってずっとこれ、ちなみに男子に話しかけられるとゾワッとする」
何で海が私の付き合っていた最低最悪な私の人生にとって一番の汚点であるクズな元彼を知っているのかといいますと、私実は一度死にかけたことがある。
その日は頭がぼーっとしてて赤信号なのに飛び出そうとしていた所を寸前で海が助けてくれたのだ。
「死んでも良いことない」「俺も手伝うから頑張ろう」って。
思い出すとお腹がよじれるくらいに面白い笑い話となったがこの男のおかげで私は今生きている。
「お前男全般ダメじゃん…俺もちょっと距離置いておいた方が安心する?」
「お前は大丈夫だよ」
「俺は一体どう見られてるんだ…?」
「犬かな…ってうそうそ恩人であり唯一の男の友達だよ」
喜怒哀楽が分かりやすいから本当に海をからかうのは面白い。
「あいつ来た時に間に入れば良かったよな」
「大丈夫だよ放課後会いに来ても心へし折るつもりで会話するし」
「だから止めるの!お前が!そういうこと!やる前に!」
え?私なの?私を止めるために海が間に入るの?
そこはさ逆じゃない?私を助けるためにーとかじゃないの?
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