六十二話 私の半生6


 どちらが上なのかを分からせるために高圧的に。


 初めての会話で心の余裕なんて全く無いが、それを悟られないようにゆっくりと話す。


 今の私は神。

 自己中神マインドをかける事でなんか強そうな奴になりきる。


 思い出せ。


 転生・転移ありの異世界系ラノベに登場する神の中でも、私欲で主人公を転生・転移させるタイプの身勝手な神を。


 今の私はあれなのだ。


『……何故か急に罵倒された気がする。初対面だろうに失礼なやつだ』


 普通に喋っていたら反応して欲しいフレーズ以外の場所でコウジは引っ掛かりを覚えたらしく、不愉快さを顕わにしてくる。


『俺に話し掛けてきている奴の顔が見てみたい。どうせ憎たらしい顔に違いないだろうけどさ』


 しかもコウジは、あろう事かこの私の顔に不当な評価をくだそうとしてきた。


 見ても居ないというのに、嘆かわしい。

 早くコウジに私の顔を見せてやりたい。

「こんなに綺麗だったのか!? 酷い事言ってすまなかった……!」という反応が見たい。


『……って、え、神様って言ったか?』


 はらわたを煮えくり返していたら、コウジがやっと触れて欲しい所に触れてくれた。


『待ってください、本当に神様なんですか』


 急に、敬語に変えて来た。

 求めていた反応の一つのはずだが、先程まで「なんだこの失礼な奴は」みたいな反応をしていた奴が急に態度を変えて敬語を使って来るのは一種の気持ち悪さがある。


 不味い。

 コウジに対して解釈違いを起こしてしまいそうだ。


 話せなかった時間が長すぎて期待値が高くなっている。

 思ったよりも、普通の人間らしい反応ばかりしてくる事に嫌気がさしてきてしまっている。


『確かに頭の中に直接声が届いているような気はする。これはもしかして相手が神様だからこんな芸当が出来るのか?』


『いや、待て待て。でも神様なんてそんな存在が居るとしても何故俺に話し掛けてくるんだ?』


 ありきたりな反応ばかり返って来る。

 オタク系主人公が超常の存在に遭遇した時に言いそうなセリフランキングトップ10を総舐めしようとでもしているのか。


『さっき一回無理やり落ち着いたけど、また混乱してきた』


「落ち着け。うるさいぞ」


『すみません神様。……いや、でも言い訳させてください! 落ち着く方が難しいと思うんですよ神様! 何を司る神様かは知りませんが、なんで急に俺の所に!? なんか俺、知らず知らずのうちに徳を積んでいた感じですかね? それで声が届いたみたいな……?』


「黙れ。ありきたり」


 脳内がうるさい。

 ずっとコウジと喋りたいと思っていたのに、喋りたくなくなってきた。

 自分がどんな顔をしているのかの反応をする所までスキップしたい。


 ふん。で、どこが憎たらしい顔なのだ?

 とか言ってやりたい。


『あ、はい。すみません…………』


 あ、コウジがシュンとしてしまった。

 どうしよう、落ち込ませるつもりは無かったのに。

 ただちょっと、「憎たらしい顔」とか言われて腹を立ててチクチクしてしまっただけなのに。


 会話が難しい。


 私はまだ一歳なのだ。

 言葉――というか日本語――が異常に喋られるだけで、会話の経験値は無に等しい。


 まだスライムを倒した事もないような駆け出し冒険者なのだ。


 そうだ、確か前に父上と喋った時に「我を呼びたい時に唱えろ」と呼び声の魔法を教えてもらった。

 それを使えば、私と違って会話レベルの高い父上が来てくれるはずだ。


 ――助けて、父上。


 よし。


「……私一人では説明が大変そうだから今助っ人を呼んだ。直に来る」


『だ、誰が来るんだ? 神様が呼ぶ助っ人だろ? 相当な人が来るって事だよな……?』


 この流れで「父上を呼んだ」とは言いにくい。

 もしそう言ってしまったら、「え、父……? 神なのに?」とか言われそうで嫌だ。


 いや、父上は神を自称しても問題が無いような存在ではあるのだろうが。

 一万歳は超えているとか言っていたし。


 ……話を逸らしておくか。


「まあ、お前が取り乱す気持ちは分かる。それに私も言い過ぎたな。助っ人が来るまでに一つだけ質問に答えよう。今何を一番知りたい? どうせこの後、色々と説明はされるだろうが、混乱を解く材料にはなるだろう」


 あ、早口でベラベラ喋ってしまった。

 威厳を出し続けていたかったのに、これではまるで特定分野でだけ饒舌になる奴みたいじゃないか。


 会話難しい。


『正直、一つと言わず全部教えて欲しい気持ちしかないが……うーん、何を聞くべきか……』


 コウジはあれこれ考え何を聞くかを決める。


『俺は、今どういう状況なんでしょうか? 実はさっきから身体を起こそうとしているのに起きられない』


 ふむ……。


 身体の起こし方なんてむしろ私が教えて欲しいくらいなのだが?


「知らん」


 逆に私が「どうやって私の口を動かして喋ってみせたのだ?」などと聞きたいくらいだ。


『……はーん? なんでも一つだけ質問を聞いてやるって偉そうに言っていたのに答えないんだ』


 む、なんだこいつは。


 これが手のひら返しというものなのか。

 実際に食らったらこんな気持ちになるのか。


「なんでもとは言っていない」


『……そうだっけ?』


「言っていない」


『すみません、すみません、すみません、調子に乗りました神様!』


 む、なんだこいつは。

 また高速で手のひらを返した。

 調子の良い人間だ。


『えっと、えーっと、そうだ! 貴方は一体、何の神様なんでしょうか!?』


「それは私の正体を知りたいってことか?」


『はい、そうです!』


「ふーん……嫌でも長い付き合いになるだろうから、こんな流れで自己紹介をしたくないのだが、他に何も無いのか?」


『何も思いつかないです』


 こんな消去法みたいな感じで自己紹介するのか……。

 しかも自己紹介するという事は自己中神マインドも取っ払う必要があるだろうし億劫。


 それに自己紹介というのはどう言えば良いのだろうか。

 やった事がないから分からない。


 それに、普通こういうのは名前の順でするべきではないのか。


 私はアズモという名前だからア行で一見順番が先のように見えるが、日本人みたいに苗字を先にしたらネスティマス・アズモになる。

 それなら沢畑コウジよりも後になるから、コウジから先に自己紹介をしろ……と言いたいが。


 この流れでそれを言うのは難しいか……。


「私は……アズモ。アズモ・ネスティマス。神様でもなんでもない。ただの赤子だ。お前……コウジと一つの身体を共有しているただの赤子だ」


 自己紹介なら仲良くなるために他に言った方が良い事があるのかもしれない。

 趣味とか、特技とか、休日に何をしているとか。

 だが、思っていても実際に口から出て来る言葉はこれだけ。


 思いを全部、口から出す事は出来ないのだ。


『……えーっと、どういうことですか? 一つの身体に二人? 俺の身体に神様がいるってことなんですか? しかも赤子? 俺は今、赤ん坊になっている事か? …………駄目だ理解が追い付かない』


 コウジからも言葉足らずな事を指摘される。


 当然の反応だ。

 ただでさえ置かれている状況が状況なのに、会話レベル1の私の説明では分からない事だらけ。


「うむ、お前の国には一心同体って言葉があるようだ。分かりやすく言うと、二心同体というわけだな。あと言っとくが、お前の身体じゃない。私の身体だ。……いや、お前の身体でもあるが、後から入って来たのはお前だ。どうだ、混乱を解消する答えにはなったか?」


 また早口。


 私は何をやっている。

 これだと更に混乱させるだけだろう。


 こんなはずじゃないのに。


『全く分からないです! 余計分からなくなりました!』


『え……つまり、どういう事なんだ? 言っている事の現実味が無さ過ぎて何も分からない』


『でも、事実ここでこんな意味分からない会話をしているって事は、俺の身に何か良くない事が起こったって事なんだよな? 流石にそのくらいは、混乱した今の俺の頭でも……いや俺の頭ではないのか? だってこの身体は俺のじゃないんだろ?』


 ああ、最悪だ。

 私の拙くて相手の状況を考えていない物言いのせいでコウジの混乱が深くなっている。


 心臓の鼓動が早くなる。


 身体を共有しているせいでコウジの動揺が手を取るように分かってしまう。


『なら、なんて言えば良い? というか、俺の頭じゃないのなら、どうして俺は今こうして思考する事が出来るんだ?』


『俺の身体はどこかにある?』


『じゃあ、なんで俺はここにいる?』


『なんで俺は……!?』


「やはりこうなるか。私から何も言わない方が良かったな……。こんなことになるなら初めから全て父上に任せておけば……」


 私のせいだ。

 やっとコウジと喋れるようになった事実に舞い上がって余計な事を喋った。


『ああぁ! ああぁぁあ!』


 泣いている声が聞こえる。


 ……これは私の泣き声だ。


 思い通りにいかなくて癇癪を起こす私の泣き声。


 泣いていると誰かに抱えられた。

 手の感触が背中に伝わる。

 コウジが起きたおかげで感覚が生まれている。


『アズモのお母さんか……?』


 私と同じく誰かに抱えられる感覚を得たコウジがそう言う。


『残念ながら、ママじゃなくてパパだ。遅くなってすまないな。アズモ、コウジ』


 父上が来てくれた。


「遅い」


 私は不貞腐れながら文句を吐いた。


『おっと、すまないな。重ね重ねすまないが、少し精神が安定する魔法を使わせてもらうぞ』


 父上は卑怯だ。

 そんな魔法があるのなら事前に教えておいてほしかった。


『ああああああ、あああ……うええ……あ』


 あ、泣き止めた。


 出会えたばかりのコウジに泣いている所を晒し続けるのは辛かったので助かった。

 助かったが、ちょっと文句を言わないと気が済まない。


「……いつまでも父上の胸に抱かれているというのは恥ずかしいのでいい加減解放してもらいたい」


『嫌なら逃げればいい。赤子じゃそんなことは出来ないと思うがな。数年もしたらこういう事が出来なくなる。今は我慢してパパの愛を感じるのだな』


『あの、俺の脳内で親子の会話しないで貰えないですかね……』


『む、コウジ。お前も我の子供であることに変わりはないのだから、しようじゃないか。親子の会話を』


『自分のことを我とか呼ぶ親は嫌だなぁ……』


『そのくらいは許して欲しい。長い付き合いになるのだ、早めに慣れた方が身のためだ』


 す、凄いな、コウジは……。


 私と同じで先程まで混乱していたというのに、初対面であるはずの父上と普通に話している。

 しかも冗談を交えながら。


 これが、会話強者……?


 私はコウジの事をありきたりな奴と馬鹿にしていたが、あれも逆に会話レベルが高いから繰り出せた技だったのでは。

 テンプレの反応をするって事は、要は求められる反応を返せるって事だ。


『親か……俺の両親は今頃何をしているんだろう』


『色々と不安事があるだろうな。我はコウジのような体験をしたことがない故、分かってやれない。が、お前の記憶を見させてもらった時からどうしても言いたかったことがある』


『あ、あの……、脳内で会話をさせられているだけでも、俺のキャパシティ一杯なので、追加で当たり前のように記憶をみたとか言ってほしくなかったんですけども』


 なるほど、記憶をみたとかは軽々しく言わない方が良いのか。


 会話に混ざれなくて聞いている事しか出来ないが、上手い返しが出来るように考えながら話を聞くようにしよう。


 なんて考えていると、視界が再び開ける。

 いつか父上から見せてもらった景色と同じだった。


 私の部屋に陽光を届ける唯一の窓。


 そこから広がる景色を父上がコウジに見せている。


 胸が高鳴ったのが分かった。


 これは先程までの困惑一色の高鳴りではない。


 八割の困惑と、二割の期待。


『ようこそ異世界へ!』


 父上はお茶目にそう言った。


 その瞬間、私は確信した。

 確かに私は父上の子供なのだと。


『あんあおあああああああああああああああああ……!!!』


 異世界の光景を見たコウジはそう叫んだ。

「うわあああああ!」よりも「うおおおおおお!」に近い叫び声だった。


 いつか見た事のある、山の頂上にそびえる大きな花がペッと何かを吐き出し、窓に何かが張り付く。


『ああああああ!!!』


 その何かに気付いたコウジが再び叫ぶ。

 今度は「うわあああああ!」に近い叫び声だった。


 コウジはリアクションが良い。

 私はなんとも思わないから何の反応もしないが、こういう風にオーバーなリアクションが出来る方が友達も出来やすかったりするのだろうか。


 外が暗くなった事で、部屋の様子が窓に反射する。


 コウジはで確認出来るようになった私の顔をまじまじと確認する。


『驚愕しているせいで変な表情にはなっているが、髪の毛を少し生やした意外と顔立ちの整った綺麗な顔』


 ほれ、見た事か。


『たぶんきっと、このアホ面を晒しているのが俺なんだろうな』


 は?


 こいつ、あろう事か私の顔をアホ面って言った……!


 絶対許さない。


『きっと、将来はイケメンに育つんだろうな』


 ……?

 どこか違和感の残る評価をくだしたコウジはそのまま父上の顔を見て、気絶した。



―――――



「以上が私の半生だ。これを読んだコウジは反省して私への態度を改めるように」


 最後のページまで読んだ事に気付いたアズモが俺の事を見上げてそう言ってきた。

 アズモは真面目にやりたいから今回は対面に座ってジッとしているなんて言っていた癖に、気付いたら膝の上に座っていた。


「ええ、この話で俺が怒られるような所あったか? なんかボロクソに言われているなとは思ったが……」


 手に持っていた原稿用紙を机の上に置きながら、アズモにそう返す。


「憎たらしい顔していそうとか、アホ面って言った」

「顔……。いや、確かにそう言っていたんだろうけど、あれ心の声なんだよな」

「心の声だからなんだと言うのだ。私は知っているぞ。今でも私の事を『ふてぶてしい顔』って思っている事を」

「それも心の声なんだよ。勝手に盗聴された上に文句言われているんだよ俺は今」

「私の顔を見てみろ」


 アズモはそう言って、俺の方に向き直って座る。


「どう思うか正直に言ってみろ」

「どう思うって言われてもな……」


 改めてアズモの顔をジッと見てみる。


 今のアズモの姿は七歳児の姿。


 間違いなく綺麗の部類に入る目鼻立ちをしている。


「まず、目が強いよな」

「ほう……?」


 バッチバチに伸びた睫毛と、アメジストのような瞳。

 瞳には夜空に輝く星のような模様もある。

 それでいて眼光が鋭く、見られるだけで飲み込まれてしまいそうな怖さも持ち合わせている。


 だが、思いを眼に反映しないせいで絶望的に感情が読み取りにくい。


「次に、口が強いよな」

「ほほう……?」


 キュッと真一文字に結ばれた口からは、意思の強さが伺える。

 滅多な事では口元が崩れず、微笑も冷笑も浮かばない。

 ただひたすらに不動。


 そのため、絶望的に感情が読み取りにくい。


「やっぱふてぶてしい顔しているよなあ……」

「むっ」

「良い意味で」

「そんな言葉で取り繕っても許さん」


 頬を膨らませたアズモの顔を片手でベチャっと潰し、空気を抜く。


「正直めちゃくちゃ可愛いと思うぜ。俺が小一の時にクラスにアズモみたいな子が居たら絶対に気になっていたと思う」


 アズモが不貞腐れていたからそう言った。

 だけど、これは本心だ。


「その言い方だと、私の事は好きじゃないと言っているように聞こえるが」


 アズモは頬っぺたにかかった俺の手を取りながらジト目でそう言う。


「好きだぞ、ちゃんとな。だがこれは、家族に対する好きってやつだ」


「そういうと思った。一体どうしてそう強情になる。こんな可愛い子から迫られているのだから素直に心を開けば良いのに」


「アズモの顔は見慣れているから、今更心を揺れ動かされる要素にはならないんだよな。というかな、俺がアズモを恋愛的な意味で好きになっちゃ駄目だろ」


「何故だ」


「歳だよ歳。俺は十七で、アズモは七。好きになるにはとても難しい年齢差だろ」


「それならば問題ない。あの時からもう十年も経って、今この世界に居る私はもう十七歳になっているはずだから」


 それはそうだが……それはどうだろうな。

 異性として見る云々の前に、半身のような存在だったアズモを他人として見る事が出来るだろうか。


 それほどまでに俺は、アズモと一緒にいた。

 俺は自信が無い。


「……話を変えるが、さっきまで読んでいた漫画、私の半生という割には短かったな。保育園の事が入って来ると思っていた」


 話を続けにくかったから、話題を変えた。

 アズモは目を細め「全く……」と呟いてから俺の話に乗る。


「確かに私の半生を時間で分けたら保育園まで入って来るだろう。だが、私の人生を段階で分けるのならコウジと出会う前と出会った後の二つに分かれる。実際に経過した時間ではなく、体感時間で分けてもそうなる。……それほど、コウジと出会うまでの時間が私にとっては長くて、コウジと出会ってからはあっという間だった」


「だから半生なのか」


「ああ……コウジに出会うまでの時間は本当に苦しく、長い物だった」


「そうか」


 そう言って俺は机の上に置いた原稿用紙を手に取る。


「この落書きみたいな奴がアズモの事を救っていたんだな」

「だから落書きではないと言っているだろう。私の顔を描くよりも時間が掛かっている」

「ほんとかよ……」


 アズモが机の方に向き直り、書いては消してを何度も繰り返していそうな跡を指差した。

 渾身の落書きだと言いたいのだろう。


「こう改めて見ると、最初にあった頃の俺ってこんなに生意気そうな奴だったんだな」

「何度『こいつ……!』と思ったか覚えていない」

「それに比べたらアズモはあまり変わっていないな。昔からずっとふてぶてしい」

「こいつ……!」


 アズモがまた頬を膨らませながら振り返ったので、空気を抜く。


「俺はこんなに攻略難度が高そうな奴に気に入られていたんだな。しかも割と序盤の俺が知らない内に」

「そうだぞ。コウジは私の事を救ってくれただけでなく、光をくれたから」

「それに関しては全く自覚が無かった。というか知りようがなかったな」

「コウジは私にとっての全てだった。……だから私はコウジがいなくなったら駄目だったのだろうな。きっと、コウジを失った私は闇の中を彷徨い続けている」

「ああ……」


 目先の問題を一つずつ解決して、アズモに少しずつ近づいて行こうと思っていたが、俺のやり方は合っているのだろうか。


 もっと早くアズモに会う方法があるのではないだろうか。


 目の前にいるアズモを見る度に、この世界に残してしまったアズモの事が脳裏に浮かぶ。


「……隠し事はなしだったか」


 黙ってアズモの事を考えていたら、不意にアズモがそう言った。


「私達にはタイムリミットがある」


「タイムリミット?」


「前に時間を繰り返している、と言った事を覚えているか」


「あ、ああ、覚えてはいるが……」


「半年だ。半年で魂竜アズモは消滅する。その時が来たら魂体化の限界が来て消えてしまう。だから私達に残されたタイムリミットはあと五ヵ月しかない」


「は……?」


「もう少しだけ話をしよう、私達に課せられた事の話と、会ってはいけない家族の話を」


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