第7話 急変
月曜日。
勇太君の位置情報を確認すると会社の所在地を示している。安心というより、まるでストーカーになってしまったような気分が罪悪感を生んでいる。気を取り直せ。これは彼を守る為だ。そう言い聞かせる。
午前中は泉龍組本家へ情報データを届け、午後から警視庁へ向かう。安浦さんに直接データを渡す事は出来たが、生活安全部の保安課と組織犯罪対策部の刑事達に捕まり、その日だけで三時間は事情を聞かれた。
こうして、泉龍組や警察庁を行ったり来たりしながら、あっという間に四日が過ぎていった。本当なら、今すぐにでも磯崎を問い詰めて冠城さんの居場所を探したいが、あの伝言には『必ず法で裁いて豚箱にぶち込め』と書いてあった。オレが弁護士である以上、必ず法廷に引きずり出してやる。
木曜日、夜。
事務所で書類を作成中、スマホの着信音。画面を見ると紅美からだった。
「どうした」
「佐伯弁護士ですか?」
男の声。その瞬間、息が詰まる。
「誰だ!」思わず怒鳴った。
「すみません! 紅美さんは無事です。磯崎の手下が姐さんを誘拐しようとしたようで」
急激に息を吸った。心音が暴れる。すると、電話を代わると言われた。
「……
「怪我はないか⁉」
「うん……、怖かった」
普段から物怖じしない紅美が怯えていた。
「……はぁ。
そして、先程の男に代わってもらい、彼女の事をお願いした。
通話を切ると、今度は勇太君からメールが届いていた。
磯崎の手下に見つかりました
逃げ回って尾行をまきます
捕まったら何をされるか分かりません
助けてください
「クソッ」
すぐにGPSの位置情報を確認した。この距離なら車で移動しても約十二分程。しかし、ラッシュ時だから道が混んでいると到着が遅れる。すぐさま、安浦さんに電話をかけた。その後、勇太君からのメッセージ画面をスクショして安浦さんに送る。
黒の革手袋をしてから、万が一の備えを持って急いで車を走らせた。
「勇太君、なんとか踏ん張れよ」
磯崎は勇太君を消すつもりなのか。だとしても、絶対にそうはさせない。
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