第2話 総長 近藤武蔵
土曜日。
外が明るい。内容を隅々まで見ていたら徹夜してしまった。二本の電話を入れてからシャワーを浴び支度をする。封筒に入れた資料を鞄に入れ出かけた。
東京都某所——。
冠城さんの依頼主であり、私の
立派な門構えを車で通過して敷地内へ。手入れの行き届いた庭園。格式ある日本家屋。長い廊下の奥の座敷へ案内される。
「おう、桃源。勇人から連絡あったそうだな」
「朝早くから、申し訳ございません」
「固いこと言うな」
近藤さんは向かい側に座り、出されたお茶をすすった。
「冠城さんが一般人を介して、連絡をくれました」
資料を渡すと湯飲みを端によけ老眼鏡をかけた。私は続ける。
「磯崎が関わっている案件をまとめてあります。冠城さんが集めたものです」
彼は黙って資料に目を通すと、徐々に顔の表情が強張ってきた。
磯崎は泉龍組傘下、
近藤さんがひと声掛けると男がどこからともなく現れる。
「矢島と本田を緊急に呼び出してこい。内密にな」
その呼び出された男が素早くどこかへ行った。
「桃源、もう少し時間もらうぞ」
「はい」
「それで、勇人の居所は分かったのか?」
「まだですが、磯崎が居場所を知っていると伝言を貰いました」
彼は整えられた顎髭を手で触りながら考え込んでいた。
「……無事だといいがな」
すると、廊下の方から慌ただしく足音が近づいてきた。若頭の矢島だった。面識はあったが挨拶をしてから、他の部屋で待たせてもらう事にする。その間、紅美へ冠城さんからのメッセージをなんと伝えればいいのか考えることにした。
一時間後。呼び戻された私は後から来た本田にも挨拶をし、四人で話し合いをした。近藤さん側にとっても、仕事に影響がないというわけではない。だが、知っていれば対策は出来る。そして、まずは磯崎淳也を豚箱にぶち込みたいという思いは近藤さんも同じだった。
それから、ひとつお願いがあります、と改まって私は言った。
「おう、何でも言ってくれ」と近藤さんは答える。
「磯崎が紅美を狙っているようで、彼女に護衛をつけてもらえると」
「紅美ちゃんか。よし、それは任せとけ」
「冠城さんもそれを心配しているようです」
「大丈夫だ。あんな
「宜しくお願いします」深く頭を下げた。
そして、午後は長年付き合いのある刑事との待ち合わせ場所に向かった。
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