魂が欠ける時 裏側編
伊桃 縁
第1話 アル・デンテ
見た目は普通のサラリーマン。童顔でおどおどしていたので、夜の世界、高級クラブのような所には一生縁のないような人間に見えた。
だが、いきなりあの磯崎に殴りかかった。相手を知っていたら、あんな事はできないはずだ。命が幾つあっても足りないぞ。疑問だらけだったが、冠城さんから預かったという伝言を藁にも縋る思いで受け取るしかない。そう思った。
行きつけの
メモ用紙に書いてあるメディアを探す。以前、私が冠城さんの誕生日プレゼントに贈った黒猫のぬいぐるみの中にマイクロSDカードが入っていた。次に本棚から
「これは……」
私は今一度、戸締りの確認をして部屋を出ていった。
自宅マンションへ戻ってから早速パソコンを立ち上げ、マイクロSDカードを読み込む。
――パスワード入力――
もう一度、メモ用紙を見る。
『パスは生娘』
――
これは私にしか分からない暗号のようなもの。弾力とか歯ごたえがいいとかいう理由で隠語として
すると、スマホの呼び出し音。画面を見ると紅美からだった。
「どうした」
「まだ起きてたのね、良かった」
「忙しいんだが」
「さっき、なんの伝言だったの?」
「
「そうかもしれないけど、ワタシだって心配なんだから……」
弱々しく声が消えていった。壁の時計を見ると深夜一時半を過ぎている。パソコンの画面にある幾つものファイル。そのひとつに目が留まった。
——ももちゃん&くみこ――
「……はぁ。情報を整理してからでないと。必ず、連絡する」
「絶対だからねっ」
「分かった。じゃ、切るぞ」
いつもなら、こんな丁寧に扱っていない。腹を満たしていたから、冷静に考え動けていると思う。
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