第一九話 同級生は四人
「はい、今日から転校生二名だよー、みんなで歓迎してあげてください! じゃ二人は自己紹介お願いします」
「は、はいっ……今日から……様と一緒に勉強を、その……あの……秋楡 千裕です、よろしくお願いします!」
「私は海棠 伊万里です、今日からよろしくお願いします」
担任を務める一級ヒーローハイプレッシャー……本名
千裕は四人が見ても緊張しまくって固くなっており、正直こいつ大丈夫なのか? と心配になるレベルだ……第一何を言おうとしたのか分からねえぞ、と困惑しっぱなしになっている。千裕の性格なのか、制服はきちんと着ておりその点は好感を持てる……だろうか。
伊万里はシンプルすぎて全く分からない……ただ、事前情報通りに彼女は素晴らしい美少女であり、青い髪と細身のスタイルが勇武の制服にとても似合っており、男子二人は思わずほう! と感嘆の声をあげてしまう。
ただ表情は硬めだが、どうやら彼女は意識して無表情を貫いているらしいことだけはわかった……隣に立っている千裕を少し意識しているのか距離感を測ってほんの少し横にずれたり、距離を取りすぎて戻ったりしている。
二人は模擬戦で戦っているという話なのでおそらく、そこで何かがあったのだろうと四人は理解した。
「はい、じゃあ今日から一緒に学ぶことになる同級生を簡単に紹介するよ、みんな立って」
雄蛭木の言葉に四人が立ち上がる……千裕と伊万里はその四人を見るが、全く統一感のない制服の着こなしに少しだけ困惑したような表情を浮かべている。
四人ともそれぞれ好きなように満面の笑顔だったり、手を振ったり、優しく微笑んでいたり、全然明後日の方向を向いていたりと特徴的すぎるメンバーだからだ。
そんな困惑する二人を完全放置して、雄蛭木は紹介を進めていく、それぞれクラスメイトの能力が紹介されるたびに千裕は感心したように軽く声をあげている。
身長は一六〇センチは無く、少し小柄な体型をしている……
少しぼうっとした表情をしているが、これは彼が能力の反動でいつも眠いのだと説明されている……
「とまあうちのクラスはちょっと特殊でね……この四人が今残っているメンバーだ。本学校は三年、プラス二年間上級専門クラスが設置されているから、一般の高校と合わせて二年間の短大が併設しているイメージかな」
「今後転入生が入ってくることはあるんですか?」
「ああ、予定はあるよ……ただ、数人来るかどうかってところだね。君たちみたいに満場一致で転入が許可される学生ばかりではないから……それとこの後は体育の授業なんで、いきなりなんだけど皆グラウンドに集合ね」
「おーし……今日午後の最初の授業はアタシだぁ!」
「え? 本当に……ライトニングレディ!?」
笑顔でグラウンドに立っている千景さん……学校ではライトニングレディ先生と呼ばれているが、まあとにかくいきなり彼女が授業に出てきたことで、正直僕は唖然とした表情で彼女を見ている。
周りの同級生は全員、超級ヒーローの登場に驚き、騒ぎ始めるが……そんな僕らを見て、彼女の横に立つハイプレッシャー先生が咳払いをする。
「お前ら急に騒ぐな、ライトニングレディが来るのは今日だけだ。明日以降で運動の授業は俺や別の教師が見る」
「えー、私ライトニングレディに教えて欲しいのに」
伊吹さんが口を尖らせながらハイプレッシャー先生に文句をいっているが、彼は苦笑いを浮かべているだけだ……ハイプレッシャー先生……ヒーローとして大活躍し、その手腕を見込まれて常勤で勇武高等学園の教師へと着任した現役バリバリのヒーローの一人だ。
まだ二〇代ということもあるが、現場から離れることを惜しむ声も多かったらしい……ただ、彼ほどの人材とはいえ、今現場には多くのヒーローが活躍していることもあって、現役に限りなく近い彼が若い生徒に対して良い刺激になる、という理由などで認められたという逸話を持っている。
彼の
下方向であれば相手を押しつぶし、横方向であれば相手を吹き飛ばす……自分自身にかけることで、跳躍距離を伸ばしたり短時間であれば浮遊する事もできるのだという。
「まあ、アタシは臨時講師だからね。今日は可愛い愛弟子の様子も見たくて無理を言ってお願いしたんだ……ハイプレッシャーの方が色々教えるのは上手いよ」
ライトニングレディは笑顔を浮かべて豪快に笑うが、伊吹さんや鬼灯さん、海棠さんもそんな彼女の言葉に喜んでいる。木瓜くんや捩木くんも似たような感じで騒いでいる……。
僕はというと、転入前に散々扱かれたこともあって、どういう教え方をするんだろう……と戦々恐々とした気持ちでいっぱいになっている。
「まずはランニングで体を温めるとするかね……このグラウンドは一周八〇〇メートルだったね」
「そうですね」
「じゃあまずは
ライトニングレディの言葉に全員が一瞬凍りつく……笑顔で走り出すライトニングレディの後を慌てて僕達勇武高等学園二年生の全メンバーが走り出す。
軽く三〇周……距離にして二四キロメートルを彼女は一体何分で走ろうとしているのか……やれやれと言った表情を浮かべたハイプレッシャーはのんびりと走り出す。
「ま、たるんでるよりはマシか……これからちゃんと鍛え直さないとな!」
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