第4話 夜の勉強(後編)

□□□


 本郷家のお風呂は広いです。


 人3人は足を伸ばせてくつろげるくらいの大きさの檜風呂にガラス窓から庭の綺麗な自然の眺めが広がっていてとても広々とした感じです。


 最初見た時は個人の家に檜!?と驚きましたが、今では慣れてしまいました。感覚が麻痺してます。


 お風呂では景色をぼーっと見てたり、これが葵様の残り汁かぁ、ぐへへ、とか考えながら入っています。



 そろそろ上がりましょう。葵様が私を呼んでる気がします。


 お風呂上がりは流石にメイド服ではなく普通のパジャマです。春になったとはいえ、まだ夜は肌寒いので長袖長ズボンのものです。そろそろ新しいのを買わないといけません。


 ちなみに、なんとなく下着は勝負下着にしておきました。ギリギリを攻めた黒のTバック……詳細は想像に任せます。


 すぐに葵様の部屋に行きたいところですが、私はメイド。一抹の理性は残っています。


 すぐに今日のメイドとしての仕事を終わらせに行きます。それさえ終わらせれば、葵様とのイチャイチャオールナイトを妨げられるものは無くなります。


 といっても戸締まりだけなんですけどね。


 さて、準備は整いました。葵様の部屋に突撃です。


 ゆっくり音を立てないようにドアを開けます。


「うーん、分かりません……」


 勉強に集中してるみたいですね。机に向かって勉強してます。その様子を見るとなんだか悪戯したくなりますね。


「だーれでしょう?」


 ノートに向かってうつむきがちの葵様の頭をぐいっと私の大きな谷間に引き寄せ、両目を手で覆い隠します。


 うふふ、ちっちゃくて、かわいいです。


 ですが、私もプロです。それだけで満足することはしません。


 引き寄せた頭の髪の匂いをさりげなく嗅いで、シャンプーのいい匂いですね、なんだか落ち着きます。


 そのあとは葵様の頭越しに服の隙間から葵様の小さいながらも成熟した柔らかそうな2つの小山を覗き見ようとして……


 くっ、ギリギリ見えませんね。


 ……しかし、なだらかな傾斜が始まろうとする山の麓の部分だけがお風呂上がりの艶やかな肌をさらしているのは逆にイヤらしい感じがします。


 スカートの中を覗こうとしてパンツは見えないけどそれによってむっちりとしたふとももがかえってえっちに感じるあの現象みたいで、これはこれでありです。


 これで少し満足です。これなら葵様から呆れられたとしてもおつりが来ます。


 ふふっ、ちなみにこれらのことを行うのに一秒もかかっていません。これがプロの為せる技です。


「穂花さん、邪魔しないでください」


 うっ、予想以上にキツめに言われました。ちょっと心にきますね。


 でも、普段はほんわりした感じの葵様に、こんなに冷たい態度で接せられると


「…Sな葵様……うへへ…」


 興奮しちゃいますね!


「穂花さん、ここの考え方が分からないのですけれど教えてくれませんか?」


 葵様が少しひきつった微笑みを浮かべながら質問してきました。あれ?私引かれてますね。


 まぁ、それはともかく。


「あっ、はい、もちろん良いですよ」


 ベクトルの問題です。高校2年生でもう数3の勉強してるんですね、流石は進学校ということでしょう。


「えっとですね、ベクトルは……」


 普段は葵様のことしか考えていない私ですが、この間までは大学生だった身です。この程度の問題なら教えるのは簡単です。


 知的に教えて私のことを見直してもらいましょう。


 


「……こんな感じなんですけど、分かりましたか?」


 どうでしょう。分かってもらえたでしょうか。


「ごめんなさい、穂花さん。もう一回お願い出来ますか?」


 あれ?聞いてなかったんでしょうか、珍しいですね。普段は一発で理解することが多いんですが。葵様にも集中できない時もあるんでしょう。


「もちろん、いいですよ!」


 私はにこやかに返事します。葵様からの頼みであれば何度でも喜んでやりましょう。




「ということは、ここは、こういうことですか?」


 やっぱりすぐに理解されました。私が教えなくても理解できたんじゃないかとも思うんですが、私のことを頼ってくれてるってことですかね。嬉しさでニヤニヤしちゃいます。


 いっぱい褒めてあげましょう!


「そうです!スゴいですよ、こんなにすぐに分かって!」


 褒めてあげると葵様は少しうつむきがちに顔を背けながら頬を赤く染めています。

 

 うっ、心臓にズキューンと来ました。破壊力が凄いです。


 なんかどうしようもなく葵様にえっちなことしたくなってきました。さっきので結構満足したはずなんですが、どうしましょう。


 普通に言っても断れるのがオチですからね、断れないような言い方で頼まなくてはいけません。


 そうですね……


「ご褒美欲しいですよね!ハグしましょうか!?」


 最初はいつもどおり普通に頼み込んでみます。


「いいです。結構です。えっちなのはイヤです」


 断られました。まぁ、これは想定済みです。次です。


「いやいや、ハグはえっちじゃないですよ。ハグは幸せホルモンであるドーパミン、オキシトシンなどの分泌を促してストレス解消に繋がるんです。勉強で疲れているでしょうから、今こそハグすべきです!」

 

 ハグはえっちなことではないと認識させる作戦です。これはどうでしょう。


「結構です」


 これもダメですか。では、最終手段一歩前の方法を試しましょう。


「そうですか、分かりました…」

 

「でしたら私にご褒美をください!」


「はい?」


 言葉巧みに騙す作戦です。

 

「私は普段から葵様のために朝早くに起きて朝食を作り葵様を起こし洗濯をして掃除をしてその他諸々の仕事をしています。確かにその報酬として葵様のお父様からお給金をもらっています」


「ですが、お仕えしている本人から報酬を貰っていないのはいかがなものでしょうか?」

 

 お金を報酬として既に貰ってるじゃん、と反論されればそれまでですが、優しい葵様はそんなことを思い付かないはずです。それに思い付いたとしてもそれを口に出すことはしないでしょう。


 優しさに突け込むようで心苦しいですが、背に腹はかかえられません。


「うっ……。それを言われると困ります」


「…分かりました。良いですよ」


 作戦成功です。うふふ、葵様をいっぱい堪能しましょう!


「ありがとうございます!」

 

 座っていた椅子から葵様の膝の上に乗り移ってドーン!と抱きつきます。


「穂花さん、危ないです」


 葵様の腰辺りと椅子の背もたれを足でがっちり固定して、だいしゅきホールドの完成です。


 身体が密着してトクトクと心臓が動いているのが直接感じられて、どうにかなりそうなほど興奮してきます。


 葵様は私のえっちな感情に気付かず抵抗せずに抱かれていることへの背徳感も相まって息が荒くなってきます。


 途絶えがちになる息を整えて葵様の耳もとで尋ねます。


「どうですか?意外と安心しませんか?」


「……はい」

 

 葵様が少しだけ悔しさの滲んでいるものの緩んだ様子で答えました。


「あむ……」


 もうダメです。我慢できません。


 息がかかるほど近くで葵様の声を聞き、なけなしの理性が完全に消し飛びました。


「あっ……!穂花さん!?」


 葵様の耳たぶを口の中に含んで舌でゆっくり濡らしていきます。柔らかくてもちもちしてます。


 私だけ楽しんでも駄目です。葵様にも気持よくなってもらわなくてはいけません。今こそ(ネット直伝の)耳舐めテクを体感させてあげましょう。


「ちゅっ…ぢゅぅ……」


「…んっ……穂花さん……やめ……」

 

 まずは耳の縁の部分から徐々に内側へ行くように舐めていきます。ゆっくり焦らすようにしてあげると、もっとシて欲しくなって興奮してくれます。


 ただ舌全体でベロっと舐めるのはいけません。舌先を使ってピンポイントに刺激を与えることで相手はより敏感になってえっちなのを感じやすくなります。


 それだけでも十分に気持いいんですが、吐息を優しく吹きかけてあげたり、唇でチュッと音を立てたりするとより良いです。女の子は男の人より音に敏感で、耳もとでえっちなのを聞くだけで気持ちよくなってしまうんです。


 だから……


「…んむっ……葵様…ここ、きもちいいですか…?」


 耳舐め中に相手が興奮するようなセリフを囁くのも効果的です。


 ふふ、葵様、だんだん身体がビクビクして表情も蕩けるみたいに、ぽーっとして、気持よくなってきたみたいですね。


 あくまで相手を気持よくするのが目的です。嫌そうにして離れようとしたり身体が強ばっていたりしたら止めてあげましょう。


 でも、葵様は凄く気持よさそうですね。葵様の心臓がバクバクして息が荒くなってきているのを感じられて、私もえっちな気分が高まってきます。


 最終工程に移りましょう。


「あんぅっ……!」


 いっぱい焦らしたあとは耳の内側、軟骨の辺りや溝の部分を攻めます。焦らして待たせた分より一層気持よくなれるんです。


 ここでも耳により近い分、囁き声が強い刺激になってくれます。葵様なら……


「本当に触られてるみたいでしょう?」


 きっとこんな感じですかね。葵様は周りからは清楚で純白に純粋なイメージだし本人もそうあろうとしているけれど、本当はすごくえっちで、そういうことに興味がある人です。


 今も身体をビクビクさせて快感で微かに身悶えさせています。


「女の子の耳にはですね、迷走神経、つまり性感帯があるんです。だから舐められてるだけで気持ちよくなっちゃうんです。」



 だから、こう言ってあげると自分がえっちなのをばれてしまって、すごく恥ずかしくなって、でも、きもちよくって仕方がなくなってしまうはずです。


「こんなにビクビクしちゃって、葵様はえっちですね」


「ちがっ……!」


 すっと身体を少し離して葵様の顔を正面から見ます。


 ハァハァと息を荒くして、頬はすっかり真っ赤に恥ずかしがって、でも、やっぱりもっとシたそうにしているのが感じ取れます。


 葵様を陥落させるのもあと少しです。


「知ってますか?性行為をするとオキシトシン、ドーパミンとかが分泌されてリラックス効果が得られるんです。それにあわせて睡眠の質が良くなったり相手との絆を深めたりします。たくさん健康にもいい影響があるわけです。」

 

「別にえっちなのは恥ずかしくないんですよ」


「だから……」


 耳もとに近づいて囁きます。


「もっとえっちなこと、してほしいですか……?」


 これでどうでしょう。いったはずです。


 葵様は少しだけ躊躇ったあと、腰回りに手を回して、ぎゅっと私の身体を引き寄せます。


 今さらながらに私の心臓がバクバクとより一層激しく鳴っているのが分かります。ずっとシたくてたまらなかったのに、いざその時になるとすごく不安で、でも、すごく嬉しくなります。


「葵様……」


 思わず名前を呼んでしまいます。もうどうしようもなく好きで好きでたまらなくなって口に出して叫びたくなるほどです。今すぐえっちなことをしたくてたまらないです。


「した……ぃ」


 葵様の息が漏れるみたいな肯定の返答に私はもっときつく、葵様と一緒になってしまうくらい近づけるように抱き締めます。


 やっと待ち望んだ本番です。


 嬉しい。



「…ぃや……ダメです!!!!」



 ……はぇ?


 え?


 ど、どういうことですか?


 しな、え?


 しないんですか!?ここまできて!?


 

 葵様は頭がぽかんとして事態を把握しきれていない私をそのまま有無を言わせず抱っこして持ち上げます。

 

「あっ、葵様!?まっ、待って!」


「ダメです!部屋から出ていってください!私は勉強しなくてはいけないのです!」


 え!?マジですか?本当にしないんですか!?

 

 葵様はその小柄な身体から想像出来ないくらいの力で私を持って部屋から追い出そうとします。


 いや、ちょっ、待って!


 高っ、すごい怖いです!


 めっちゃ視界がぐらぐら揺れて安定してません!


「わ、分かりましたから!お、下ろしてください!葵様、めっちゃふらついてますから!怖いです!!」


 分かりました!反省してますから!


 ごめんなさい!


 だから、ちょっと…!

 

「あ、葵様!走らないで!落ちる!落ちますぅ!!」


 走るのをやめてください!!


 お願いしますからぁ!!



 ……しばらくは葵様にちょっかいを出すのを止めようと反省する私でした。

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