第3話 夜の勉強(前編)
◼️◼️◼️
お風呂を上がって部屋で勉強しています。明後日には学校で数学のテストがあるのです。数学は苦手なので一生懸命頑張ります。
穂花さんは今、お風呂のようです。普段私が勉強する時は何処からともかくやって来て、隣に座って勉強を教えてくれるのですが。
とにかく、しばらくは1人で勉強です。11時くらいまでは頑張ろうと思います。
「うーん、分かりません……」
ベクトルの考え方があまりしっくり来ません。どうしたものでしょう。
「だーれでしょう?」
突然手で目を隠されました。息が頬にかかるくらいの近くで囁かれて、背中がゾクッと興奮、いえ、違います。ビックリしました。
「穂花さん、邪魔しないでください」
穂花さんは抵抗せずに手を離して隣に置いてある椅子に座りました。少し言い方が強かったでしょうか。ちょっとだけ心配になります。
だったのですけれど……
「…Sな葵様……うへへ…」
うわ言を呟きながら、にへにへと笑ってました。
心配無用でした。
私の背中に別のゾクッとした悪寒は走りましたけれど……
それはともかく勉強です。
「穂花さん、ここの考え方が分からないのですけれど教えてくれませんか?」
「あっ、はい、もちろん良いですよ」
正気に戻ったみたいですね。なんとなくいやらしい目線が胸の辺りに向いている気がしますが。
普段通りですかね。
「えっとですね、ベクトルは……」
穂花さんは変態さんですけど、教え方は上手なのです。説明されると頭の中が整理されて良く理解出来るようになることが結構あります。とても助かっているのです。
横目で穂花さんの顔を少しだけ覗きます。
コンタクトではなく眼鏡をかけています。お風呂上がりで濡れた髪を顔にかからないように上げる様子やそこから汗ばんだ色白のうなじが露になっていて凄く色っぽいです。
お風呂で火照っているせいでしょうか、とても胸がどきどきとしてきて身体が熱く感じてしまいます。
「……こんな感じなんですけど、分かりましたか?」
あ、話聞いてませんでした。
「ごめんなさい、穂花さん。もう一回お願い出来ますか?」
「もちろん、いいですよ!」
話を聞いてなかったのに嫌がりもせず、にこやかに説明してくれます。それにつられて私もしっかりやらなくては、という気持ちになります。
「ということは、ここは、こういうことですか?」
何分か丁寧に教わってようやく分かりました。
「そうです!スゴいですよ、こんなにすぐに分かって!」
穂花さんは本当に嬉しそうに褒めてくれます。手放しで私のことを褒めてくるので、こそばゆい感じがしますけれど、穂花さんの笑顔を見ているとやっぱり少し嬉しくなってしまうのです。
「ご褒美欲しいですよね!ハグしましょうか!?」
…何でしょう、いつにも増して性欲的な感じが穂花さんからします。夜中で気分がおかしくなっているのでしょうか。さっきの喜びを返して欲しくなります。
「いいです。結構です。えっちなのはイヤです」
「いやいや、ハグはえっちじゃないですよ。ハグは幸せホルモンであるドーパミン、オキシトシンなどの分泌を促してストレス解消に繋がるんです。勉強で疲れているでしょうから、今こそハグすべきです!」
凄い勢いで説得してきました。
別にハグするのはいいのです。でも、その必死さが何かイヤです。
「結構です」
今回は結構キツめに拒否しました。これで穂花さんも諦めてくれるでしょう。
「そうですか、分かりました…」
分かってくれたみたいです。
「でしたら私にご褒美をください!」
「はい?」
…何を言っているのでしょうか。穂花さんは。
「私は普段から葵様のために朝早くに起きて朝食を作り葵様を起こし洗濯をして掃除をしてその他諸々の仕事をしています。確かにその報酬として葵様のお父様からお給金をもらっています」
「ですが、お仕えしている本人から報酬を貰っていないのはいかがなものでしょうか?」
「うっ……。それを言われると困ります」
断りづらい頼み方の上、私は普段から穂花さんに助けてもらってばかりなことを気がかりに思っています。この言い方はタチが悪いです。断れる訳がないです。
「…分かりました。良いですよ」
「ありがとうございます!」
許可を出した途端に穂花さんが突進するみたいに抱きついてきました。危うく椅子から転げ落ちるところでした。
「穂花さん、危ないです」
穂花さんは私の膝の上にのって私の首の後ろに手を回してぎゅっとハグしています。
重心が後ろにいって椅子が倒れてしまいそうになるので、私も穂花さんの方に体重を寄せて身体をくっつけなくてはなりません。
そのせいでお互いの身体が紙1枚分の隙間もないくらいきつく密着します。
お風呂上がりの穂花さんの身体はとてもあったかくて日向ぼっこしてるみたいに気持ちがいいのです。
「どうですか?意外と安心しませんか?」
「……はい」
仕方ないけど認めます。結構リラックスしてしまっています。
けれどそうしていられるのも少しの間でした。
「あむ…」
「あっ……!穂花さん!?」
耳たぶが柔かい唇に甘噛みされ始めます。
穂花さんが何もしないわけがありませんでした。油断していました。
「ちゅっ…ぢゅぅ……」
「…んっ……穂花さん……やめ……」
耳の回りを優しく嘗められていきます。その度に穂花さんの生暖かい吐息が耳の穴の奥を、敏感なところ全部くすぐるみたいに刺激して、無意識に身体がビクビクと反応してしまいます。
穂花さんの服の隙間から漂う汗と混じったシャンプーの甘い香りが凄くえっちに感じられて、お腹の辺りがむずむずして、心臓がバクバク、自分じゃないみたいに激しく動いて
息苦しくて吐き気もするのに、すごく気持ちいい。
「…んむっ……葵様…ここ、きもちいいですか…?」
そう言って穂花さんは私の耳の中に舌を伸ばして
「あんぅっ……!」
一気に私の身体に足の先まで電気がほとばしるみたいに快感が貫きます。
まるで本当に…
「本当にアソコ触られてるみたいでしょう?」
穂花さんが小さく、面白がった、イジワルな声で耳もとで囁きます。さっきので一層敏感になった身体に容赦なくゾクゾクした興奮を与えてきます。汗が滲み始めて身体がじんわりと濡れてきます。
「女の子の耳にはですね、迷走神経、つまり性感帯があるんです。だから舐められてるだけで気持ちよくなっちゃうんです。」
そう言って穂花さんは私の背中に手を回してじっくりと堪能するみたいに脇腹から背筋、肩甲骨の辺りまで指を這わせてきます。
こんな、背中を触られただけで、反応したくないのに、どうしても我慢できなくて、息遣いがどんどん荒くなってきて、絶対ダメなのに、私も穂花さんにえっちなことがしたくてたまらなくなってしまいます。
「こんなにビクビクしちゃって、葵様はえっちですね」
「ちがっ……!」
穂花さんが抱きつくのを弛めて私と正面に向かい合って言いました。そのほのかに上気した顔を見て衝動的にキスしたいと思ったのを必死に押さえ込んで否定します。
そんな私を見透かしたみたいに小悪魔な笑みを浮かべて続けて言いました。
「知ってますか?性行為をするとオキシトシン、ドーパミンとかが分泌されてリラックス効果が得られるんです。それにあわせて睡眠の質が良くなったり相手との絆を深めたりします。たくさん健康にもいい影響があるわけです。」
「別にえっちなのは恥ずかしくないんですよ」
「だから……」
耳もとに近づいてきます。
「もっとえっちなこと、してほしいですか……?」
官能的な囁きに鼻血が出そうなくらい顔に血が集まっていって、もう何も考えられないくらい、どうしようもなく穂花さんとしたくて、たまらなくなって。
穂花さんの腰辺りに手を回してぎゅっと抱き寄せます。
「葵様……」
「した……ぃ」
「…ぃや……ダメです!!!!」
ダメです、ダメです、ダメです!!
えっちなのはダメです!!
もう少しで魔の手に落ちるところでした。
ハグだけと言ったのにこんなことして、穂花さんは悪い人です。悪い人にはお返しをしなければなりません。
抱きついていた姿勢からそのまま穂花さんをだっこして持ち上げます!
「あっ、葵様!?まっ、待って!」
「ダメです!部屋から出ていってください!私は勉強しなくてはいけないのです!」
「わ、分かりましたから!お、下ろしてください!葵様、めっちゃふらついてますから!怖いです!!」
結構重たいです。けれど、このまま穂花さんの部屋まで持っていきます。少し怖い思いをさせればきっと反省するでしょう。
「あ、葵様!走らないで!落ちる!落ちますぅ!!」
とっても怖がってる穂花さんの様子を見て、少しだけ楽しくなって、はしゃいでしまった私なのでした。
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