第十八章 「都市併合」
18-1 ~ 精通祭り準備 ~
精通祭りとかいう、何故そんなものを祝うのかすら分かりたくないお祭りの準備は、精通したその日の内に開始され……それから3日間、俺は忌々しい奇祭から目を逸らすかのようにゲームに没頭した。
と言うより、この未来社会の実際として「男性がやるべき仕事なんて何一つない」のが正確なところなのだが。
まぁ、数日前に開催された勃起祭りと同じく顔見せとして開催の挨拶くらいは必要らしいのだが……俺は俺でもう目立とうとも逆らおうとも思っておらず、与えられた原稿をただ読み上げるだけの機械に徹するつもりであり、今回は変な問題は起こらないだろう。
──しかし、精通祭り、なぁ。
前回の勃起祭りでは酒の勢いとは言え、目を覆うばかりの惨状を引き起こしてしまった張本人として、今回は
結果、名前の通り目を覆うばかりの奇祭である事実を理解してしまい……俺は今、現在進行形で頭を抱えている最中である。
「……食事と酒の提供は分かる」
ミドリムシ加工ですらない、食事という名の『人体が吸収できないナニカ』の提供は、食事を完全に規制され超過カロリーも脂質異常も糖質制限もなくなった未来社会の人類にとっては非常に珍しい現実の娯楽である。
勿論、食事が好きな人は普通に仮想空間で好き放題食べて食欲を解消しており……実のところ俺自身も一日一度くらいは21世紀の食事を取っているのだが。
……酒についても同様である。
俺の知っている『本来の意味でのアルコール』は、この未来社会では理性を焼き払い犯罪への衝動を増加させるばかりか、常習性のある毒薬とされ……21世紀で散々飲み会を続けて来た身としては言いたいことが多々あるのだが、まぁ、それは置いておいても……取りあえず現実で飲むことは禁じられている。
その代わりとして、
──野郎共は飲まずとも酔えるんだけどな。
そんな
問題は、その精通祭りのメインイベントである。
「……何だよ、白濁液の撃ち合いって……」
少しずつ取り戻しつつある俺の記憶の中で、このイベントに一番近いモノとなると……某イカの陣取りゲームか近いだろうか?
実在するお祭りでも、墨を塗り合うヤツやら色粉を塗り合うヤツやらと色々とあったらしいが、要するにそれの白濁液バージョンである。
──コレも、21世紀では『いかがわしい系』のお祭り扱いだよなぁ。
うら若き乙女たちが水鉄砲を用いて「ある程度の粘度を有する白濁液」をお互いに掛け合うのだから、ものの見事に絵面が酷い奇祭であるのだが……未来社会では何をどうトチ狂ったのか、どの都市もコレを過激に推奨しており、開催しない都市はないとまで言われているようだった。
──性行為そのものが現実と乖離しているとは言え、なぁ。
一滴の精液すらも無駄に出来ないこの未来社会では、AV用語で言うところのぶっかけは所謂ファンタジーに成り下がっているのかもしれない。
そういう意味では、トマトをぶつけあうスペインのお祭りを、日本で、しかもトマトを作ってない連中が行うのに近い、だろうか。
──まぁ、確かに見た目は眼福なんだけどな?
別都市で開催された精通祭りの画像を眺めながら、俺は少しだけ相好を崩す。
服が汚れるのを嫌っているのだろう、ビキニもしくは半裸という21世紀では街中を歩くとわいせつ扱いになりかねない格好をした適齢期の女性たちが、手に大き目の水鉄砲を構えて撃ち合うのだ。
バリア……もとい仮想障壁なんて野暮なものは存在せず、白濁液を撃った撃たれたで参加者のポイントが加減され、高得点を獲得した人は初回の精子提供に有利となるイベントとのことだった。
「……う~ん」
ビキニ姿の美女・美少女たちが水鉄砲で遊んでいる姿と言えばもっときゃっきゃうふふしている感があったのだが、精子提供優先権と言えば都市貢献、即ち納税額にかかる市民の一大権利である。
じわじわとヒートアップしていったそのイベントは、途中からタックルやらビキニ強奪やらがデフォの泥仕合へと化していく。
流石に素手での殴る蹴るは禁止されているようだったが、それなりに怪我をする女性たちも出ているようで……こうして過激なやり取りを目の当たりにしてみると、ぶっちゃけ禁止しても良いんじゃないかと思えるほどである。
「……そうか、お前は賛成派か」
とは言え、600年もの時間経過によって進んだ栄養管理と健康管理技術によって整ったスタイルに美肌の、美女美少女がビキニスタイルで躍動する姿は21世紀男子としては実に見ごたえのある光景であり……
少なくとも俺の理性は兎も角、本能を司る部位は彼女たちの姿を魅力的と思っているようで……元気に復活を主張する股間について、俺は一体どうしたものかと首を傾げることとなったのだった。
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