16-8 ~ セクシーランジェリー ~
まず、最初に部屋へと入って来たトリーはと言うと、人として許される最低限度の衣類のみを身に付けており……まぁ、一言で言ってしまえば下着姿である。
しかもただの下着姿ではなく、薔薇を模したレース模様の入った黒の上下で……俺の趣味に合わせるかのように、薄手のストッキングにガーターベルトまでもをセットで身に付けていた。
要所要所が微妙に透けているのは、まぁ、この手の勝負下着というもののお約束なのだろう。
20世紀の頃に洋物の映画が大好物だった俺は、たまに出て来る女優のセクシーランジェリー姿はまさに垂涎の的であり、思い返してみれば確かに、三姉妹に向けてその機微を語った覚えはあるのだが……残念ながら彼女の場合、その発育が少々問題となる。
この際なので俺の性癖を語るならば、ストライクゾーンが上下に幅広く……多少熟女入っていようが成長し切っていない若い果実だろうと問題ない、所謂「無節操なタイプ」であるという自覚はある。
──勿論、あまり若いと気後れしてしまうけど、な。
とは言え、そんな俺であっても透けた黒の下着を身に付けるのは、発育し切った25~30歳くらいの、フェロモンが身体中からまき散らされているような女性であるべきだ、という概念くらいは持っている。
少なくとも、胸もろくに育っていない女子中学生くらいの女の子の衣装としては、正直ギャグか罰ゲームくらいにしか思えない。
──で、次はヒヨ、か。
三姉妹の二人目も、これまた酷い格好だった。
彼女はすけすけのピンクのネグリジェを身に付けており……いや、その下は下着らしい下着が確認できなかったので、要するにそれだけという服装である。
布面積で言えばトリーと大差ないにして、果たしてコレを服装と呼んで良いモノかどうかの疑念は置いておくにしても……この格好もやはりトリーの時にも感じたように発育のよい女性が身に付けるべきだと俺自身は考える。
ちなみに個人的な好みではあるが、そういうセクシーな外国人女優が身に付ける場合、ピンクよりも黒もしくか赤辺りが好みではあるのだが、褐色系の女性だった場合、白という選択肢も捨てがたいと強弁したい。
──タマは……うん。
三姉妹の中の末っ子……元々都市全体が一人の男性の遺伝子から生まれたものであり、俺の感覚で言えばその都市で生まれた子供全員が姉妹みたいなものではあるが、それは置いておくにしても。
警護官三人娘の中で最も幼く、それ故に最も発育の悪いタマには流石にエロ下着は早いと判断したのか、それとも他の二人のようにはっちゃける気にならなかったのか……彼女はスポーツブラにシンプルなパンツを身に付けていた。
むしろ、それ以外の衣装を「姉二人に剥ぎ取られてしまった」ように感じられるのは、彼女たちのやり取りをある程度見て来た所為か。
下着のデザインがあまりにも粗末な所為で、違う場所で勝負をしようとしたのか、それとも別の事情があったのか……彼女の下着の色合いは度肝を抜いていた。
何と言うか、下着の存在を疑ってしまうほどに、『色が薄い』のである。
最初は本当に下着があるのかどうか首を傾げたほどであり……存在の有無を確かめるためについつい彼女の身体をガン見してしまい、タマは現在進行中で顔を真っ赤にして最後尾に逃げ込んでしまっている訳ではあるが。
とまぁ、三人が三人、所謂勝負下着と言っても過言ではない服装で俺の部屋へと来ているのである。
──未来においても、勝負下着という定義は変わってないのか?
彼女たちを目の当たりにした結果、性欲を司る後頭葉や小脳中部が活性化してしまうこともなく……何故か微妙な頭痛を感じ始めた俺は、声に出さないまま胸中でそうぼやいていた。
ふと気になって
一つは吸水性。
全てがそうではないらしいものの、そのまま尿を流しても吸収される……そんなおむつ擬きの下着まで開発されているようだった。
尤も、「デザインがどうしても野暮ったくなり着心地もあまりよろしくないため、幼児期と出産適齢期を過ぎた女性以外はあまり好まない」と
そして、もう一つは持続性。
繊維技術が進歩した結果、経年劣化や摩擦等での損傷により生地が傷まず色合いが落ちず……要するに長年使い続けられるばかりか、そもそも繊維の色合いを外的刺激で好き勝手に変えることも可能、らしい。
そんな機能を自分は使ったこともないし、誰かの下着の色合いが現在進行形で変わっていくのを目の当たりにしたこともないのだが……まぁ、そういう機能もあるようだった。
恐らくではあるが、末っ子のタマが身に付けている色気のないデザインの下着が半透明になってしまっているのも、もしかしたら普通の下着でしかなかった彼女のソレを、姉二人が勝手に色合いを抜いてしまったのではないだろうかと推測される。
閑話休題。
そもそもではあるが、女性の社会進出が普通になったこの未来社会では、女性が下着に拘ること自体、21世紀と比べると激減しているらしく……女性自身も
──じゃあ、何でコイツらは?
そうして首を傾げた直後、
尤も、タマだけは別で……彼女は真っ当にゲームやらドラマやらの遊興費に突っ込んでいるようだったが。
男性の気を引くことに全てを費やす……それが
とは言え、だ。
──恥ずかしがってちゃ、意味ないよなぁ。
「せっかくのセクシーランジェリーなのだから、胸を張って見せびらかせなければ意味がないだろう?」と言うのが、洋物映画を長年嗜んで来た俺の主張だった。
彼女たちの肢体がまだ幼過ぎてセクシーとは程遠いという大前提は置いておくにしても、俯いてお互いの身体で下着を隠そうとしていてはその服装の意味がない。
勿論、そういう恥じらう姿ってのは嫌いではないと言うか、俺としては大好物ではあるのだが……それも彼女たちの発育が少しばかり引っかかる。
ついでに言うと、俺自身は性欲を少しばかり取り戻したとは言え、まだまだ欲情して女性を押し倒すには程遠い。
「……さて、何で呼び出されたと思う?」
唐突なセクシーランジェリーに思わず驚いてしまったものの……取り合えず話を進めなければ何にもならない。
そう思った俺は、どこかの上司が部下を怒るために発したような一言を思わず口にしてしまった訳だが……残念ながらこの場合はパワハラよりもセクハラに近かったようだ。
「そ、そりゃ、あたしたちを呼び出すなんて、なぁ?」
「う、うん。
あんなお祭りの直後だし……そういうこと、っしょ」
「……覚悟、完了」
彼女たちのその言い分を聞いた俺は、天を仰いで失敗を悟る。
実際問題、数日前に勃起祭りなんて訳の分からないお祭りを開催して、俺が生殖可能になったという事実を都市全体に知らしめたばかりである。
俺としてはあのクソみたいなお祭りから既に数日が経過していて、もう『直後』とは思えなかった訳だが、平均すると人生に一度性行為すれば御の字みたいなこの未来社会においては、一年以内ならばすぐだと言えるのかもしれない。
──そういう、ことか。
今更ながらに俺は、彼女たちが何故こんな珍妙な格好をしてきて、日頃よりも恥じらいつつも何処となく怯えを見せていたのかを理解し……天を仰いだまま大きな溜息を吐き出したのだった。
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