14-4 ~ 衝動 ~
──酷過ぎるだろう、それは。
何が酷いって、これでも
何しろ、人工妊娠とは言え、精子の優先順位は当然のように第一位……むしろ配分を決める側であって望めばいつでも妊娠は可能であり、しかも他の女性が望んで叶わない男性と対面で会話することさえ容易に実現できる立場にいる。
むしろ、男性によって選ばれる
そういう訳で、
「ああああ、どうしたらどうしたらどうしたらどうしたら……
わたしは、よしゅうもまだだったのに、こんなことになるんだったらもっとはやく、でもそんなじかんなんてどこにも……」
だからこそ、性欲が暴走してしまい、俺を押し倒した段階になって、次に何をするのか分からず……悩み悩んで困り果てて、
──どうしたものかなぁ、これ?
本来ならば瞬時に学習を終えられる筈の
だからこそ眼前の
当然のことながら、
「まってまってまってまって。
どうしたらこれいっしょうにいっかいの、でも、どうすればあああああたまにはいらないもっともっともっともっと……」
次から次へと仮想モニタを開いては目を滑らせて閉じては開きを繰り返す彼女の様子は、残念なことに、俺には非常によく理解できた。
初体験あるある、というヤツだろう。
エロ漫画とかなら色々と最初から上手くやれるものだが、現実だとキスの力加減から位置、タイミング、ブラの外し方に触れる順番に力加減、その他全ての言動が手動であり、AVのように自動ではいかず……もしくはページをめくったりテキストクリックしたりで次に進むように簡易化されてはいない。
そのお陰で、何をどうするかと考えれば考えるほど焦ってしまい、野郎の場合は焦りの所為で海綿体の硬度低下を招き……とろくなことにならなかったり。
何となく大昔の黒歴史が噴き出しそうになった俺は、大きく溜息を一つ吐き出すと……たったのそれだけで全身をびくっと震わせ、上気していた顔から血の気が引いていく姿をリアルタイムで見せつけている眼前の
「……あ、あのあああああのわわわわたしはそのあの……」
俺はそんな彼女の震える肩へと手を伸ばし、そっと彼女の背を押して、彼女の細い身体を……俺よりも若干大きいだけの身体を抱きしめる。
「……ぁ」
「そう焦らなくても大丈夫だ。
時間も機会も、まだまだあるんだから、な?」
ぽんぽんと、なだめるように触れた俺の手のひらは、彼女に対して鎮静効果をもたらしてくれたらしい。
極度の緊張から解放された彼女の精神はそのまま極限の不眠状態を思い出したのか、ふっと彼女の全身から力が抜ける。
どうやら意識を失ってしまったと気付いた俺は、大きく溜息を吐き出し……不意に気付く。
──柔らかい。
──その上、女の匂いがぁあああああああ
ほんの数分前まで、俺に性欲はなかった。
いや、ちらっと見える下着を視線が追いかけるような男性的走行性が『習性』として残っていたのは否めないものの、女性を押し倒したいとかナニしたいという本能的な衝動はさっぱり消えてしまっていたのだ。
だけど、今は違う。
意識を失った
ついつい俺は身体の奥底から湧き上がってくる衝動に任せ、彼女の背に触れていた両の手を上から下へと動かしてみたのだが……
「……ん」
リリス嬢が漏らしたその微かな吐息が、俺の理性をガリガリと削って来て、俺は慌てて彼女の背から手を放す。
「おーけー。
落ち着こう、俺」
流石に寝ている相手に色々とやらかすのはフィクションの中だけで十分である派の俺は、睡姦に挑むつもりにはなれず……数度の深呼吸をすることで、俺は身体の奥底にある熱量を減らそうと試みる。
だけど、それは逆に俺の周辺空気中に散布されているらしきフェロモン物質を呼気と共に取り入れてしまうことになってしまい……残念ながら何度深呼吸したところで俺の冷静さは戻って来てくれそうにない。
いや、そもそも肉体的な問題によって本番は不可能であるからして……それでも本番寸前までなら、少なくともパンツ職人までなら出来るし絶対に起きないだろうし、したところで罪にならないだろうしと凄まじい心拍数が俺を誘惑し続けて……
「だぁああああああっ!
何で勃たねぇんだよ、くそたれぇああああああああっ!」
結局、行き場のない衝動と葛藤との二律背反を前に何の結論も出せなかった俺は、熟睡している
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