第16話 優奈の隣
月曜日
俺はいつもの穴場で悠生と大志でだべっていた。
「僕さ、田島さんと一緒に二人きりでご飯食べることにしたんだ」
「ほお、それ完全にデートじゃん。やるな悠生」
「いや本当に田島さんかわいくてさ、つい僕から誘ったんだけど、二つ返事だった!」
俺が悠生を褒めると彼は恥ずかしそうに後ろ髪を引っ掻いた。
悠生は高校までずっとガリ勉だったから女性経験がない(なんなら俺も同じである)。
だから彼からアタックしたのは賞賛に値することだ。
「そういう司はどう?合コンやってから何か変わったこととかある?」
「お、俺か……」
悠生が興味ありげな目で俺を捉えた。
大志もメガネをかけなおして、俺を横目で見てくる。
まあ、
こいつらは俺の昔の事情を知っている。
高校ん時に性犯罪者みたいな人から一人の女の子を救ったということを。
隠してもこいつらはおそらく気付くだろう。
なので俺は優奈について二人に伝えた。
「「マジか!!!!!!!」」
「っ!!!びっくりした!んだよ声大きい」
「これが叫ばずしていられるのかよ!なんていう偶然だ!」
悠生が俺の肩を抑えて揺らし始める。
「合コンのとき桐生さん頻りに司のこと意識してたからちょっと気になってたんだよな!なるほどなるほど。そういうことだったか!」
悠生は嬉しそうに頷いてはまた口を開く。
「応援するよ」
「いや、応援って、そんなことあり得るわけがないだろ?」
「なんで?」
「合コンの時見ただろ?あのイケメン二人が猛アタック仕掛けたから。俺なんかがなんとかできる相手じゃないぞ」
「ん……違うと思うけどな」
「違う?」
「司なら、いけると思うよ」
「なんで……」
「だって、司は僕たちをまとめてくれるいいやつだからな」
「お、俺がお前らをまとめる?いやむしろ逆だろ」
わけのわからないことを言っている悠生に俺は小首を傾げた。すると、今度は大志が俺の背中を勢いよく叩いた。
「っ!大志……」
「司くんには資格がある」
「し、資格?」
「ほら、ギャルゲー主人公ってヒロインと過去に何かあるパターンが多いだろ?」
「いや、それはゲームでの話だ」
「ゲームでもリアルでも人の本質的なところは変わらないよ。俺はさっき言ったイケメン二人なんかより司の方が比べ物にならないほど魅力あると思うんだけど。俺も応援するから」
「……」
「司くんならできる」
アニオタの太っている大志の言葉が妙に耳にこびりついてなかなか離れない。
否定しようとしていたけど、二人は熱い視線を向けてきた。
先日のメイドカフェで男スタッフたちが向けていた視線じゃない。
俺の心を落ち着かせるいつもの眼差し。
本当に俺はいい友達を持っている。
そう心の中で感謝の言葉を言ってから、俺は口を開く。
「ありがとな」
二人の言っているようなことは実現しないだろう。
昔助けたことを恩に着せて、得をしようとするけしからんことはしたくない。
でも、
ああ言ってくれたおかげで、俺はなぜか心が満たされる気分になった。
優奈はトラウマがある。
そして、俺はいまだに彼女を早く助けられなかったことで、ものすごい罪悪感を感じている。
だから、今のままでいいのではなかろうか。
そして、優奈が恐怖を感じるような時には助ける。
優奈が俺の助けを気持ち悪いと思わない限りは、俺は彼女を助けないといけない。
2年前の彼女の顔を思い出すだけでも、いまだに心が痛くなる。
「……」
しかし、今頭に浮かぶのは過去の彼女ではなく
楓さん見透かすような視線。
そして、優奈が向けてくる何かを強く我慢するような表情。
二人の友達の言葉によって安らぎを感じていたら、今度は二人の姉妹のことが俺の脳裏をよぎった。
X X X
カフェの前
講義が終わった。
電車が事故ったから15分ほど遅れてしまった。
「……」
ここは以前優奈が俺に感謝の言葉を言ってくれたカフェだ。
中に入ると、おばさんが「いらっしゃい」と言ってサイフォン式コーヒーを淹れる。
俺が周りを見渡すと、赤髪ツインテールの奈々が手を振ってくれた。なので、俺は早速注文を入れて彼女のいるテーブルへと向かう。
そこには案の定、奈々と優奈がいた。
奈々は短いスカートが印象的な服装だ。童顔で、体も小さいことから、制服を着れば高校一年生だと言っても全然信じてしまいそう。
あとは優奈。
本当に現実離れした美貌だ。
大人になった彼女を見るのはこれで3回目だ。
なのに、いまだに彼女の美貌に慣れてない。
肩まで届く亜麻色の柔らかな髪。
蝋人形を思わせる艶のある皮膚とかわいく整った目鼻立ち。
そして、明るい系のデニムは彼女の足のラインの美しさを強調していて、肩の露出の激しい薄い紫色のニットは彼女の体にとてもマッチしていた。
そして何より、薄い紫色のニットを押し上げる凶暴な二つの存在が俺の視線を引き寄せる。
「綺麗……」
思わず漏れた言葉。
優奈はというと、眉根を顰めて俺を睨んでいる。
まあ、15分も遅れちゃったからしょうがないか。
「ごめん。電車止まってて」
と言って、俺が奈々の隣に座ろうとしたが、奈々が手で止める。
「ん?」
「司っちは優奈の隣ね。ひひひ」
と、小悪魔っぽく笑う奈々。
正直に言って、奈々の方が話しかけやすい印象があったので、彼女の隣に座ろうとしたけど、俺は仕方なく優奈の隣に腰掛けた。
俺は隣の優奈を横目で見る。
優奈は相変わらず機嫌があまりよろしくない。
だけど、やがて表情を変えて、いつもの冷静な表情をしたのち彼女は距離を詰めてきた。
「……」
香水ともシャンプともとれるいい香りが俺の鼻腔をくすぐる。
本当に何を考えているのか全然わからなくて緊張してしまう。
優奈の顔を見た瞬間から既に緊張していたけどな。
美少女二人と一緒にカフェで話すのは初めてだ。
どうなることやら……
追記
これからもっと頻繁に投稿していく予定です!
魅力的なヒロインを書けるように頑張ります!!
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