第9話 小悪魔っぽい奈々
合コンがあってから一日が経過した。
今日は日曜日ということで二人の友達(悠生、大志)が俺の家に遊んできた。
俺たちはリビングで大志が持ってきたアニメのBlu-ray(魔法少女もの)を鑑賞中である。
この無駄に広い一戸建てでも、俺たち3人が集まれば結構賑わってくるものだ。
オープニングが流れると、図ったように昨日一緒に合コンに参加した元ガリ勉出身の悠生が口を開いた。
「昨日、田島さんが連絡してきたよ。メッセージやりとりしていくうちに仲良くなった」
「田島さんって、昨日の合コンの金髪女子?」
「そう」
「すごいな。なんか金髪だけど、綺麗で明るくて優しい感じの子だったよな」
「はあ……最初に見た時からいい感じだなって思ったんだよな。僕みたいなやつにもいよいよピンク色の青春が……」
「いや、メッセージのやりとりだけだろ。なに喜んでんだ……」
俺がドン引きすると、悠生が目を細めて自信満々に言う。
「ふふふ、司、お前は一つ大事なことを理解してないぞ」
「ん?なに?」
「もし、僕があの人数合わせの合コンに参加しなかったら、田島さんと会うことすらなかったはずだよ。つまり、ちゃんと僕の意志を示したから、こんな美少女と連絡する仲になったわけさ」
「おお……」
確かに言われてみればそうだな。
俺も偶然ではあるが、合コンに参加したから優奈に会うことができた。
悠生にしてやられたな。
俺はちょっと申し訳なくなり、悠生に言う。
「頑張れよ。応援するから」
すると、悠生が目を丸くして俺にサムズアップした。
「ああ!司、お前も頑張れ!」
俺は満足気に頷く。
本当にいいやつだ。
俺が安堵のため息をついていると、ぽっちゃりした感じの大志がスナックをつまみながら口を開く。
「司くん!」
「ん?」
「アニメに集中よろ。序盤から面白い展開だから」
「ああ、わかった」
大志に言われた俺はテレビに視線を向ける。
すると、OPが終わって二人の魔法少女が一人の魔法少女と対峙している場面が出た。
『ルビ!!そんなに寂しかったの?黒化するほどルビは辛かったの!?』
『なんで今までなにも言わなかったのよ!』
魔法少女二人が向かいにいる黒化した魔法少女に話しかける。
確か、あの3人は元々仲間だったけど、あの黒化した魔法少女は二人の見えないところで二人の尻拭いをしたり、後片付けをすることで、二人を陰で支える役割だった。
でも、自分の努力を二人に分かってもらえず、疲れが鬱積していくが、あいからわず二人のことは大好き。
だが、結局虚しい感情が彼女(ルビ)を支配して黒化したわけである。
『ええ。寂しかったの。この気持ち……誰も理解してくれないから。でも……でも……私、二人のことが大好き』
『『……』』
『だから、私、二人をずっと支配したいの。そして、私、二人にずっと甘えたいの。こっちおいで、私の色に染めてあげる』
「っ!!!!」
支配と甘え。
この単語を聞いただけで、俺は武者震いがした。
ブー
携帯が鳴った。
ポケットから携帯を取り出して差出人を見る。
『桐生優奈:お礼がしたいの。会える?』
X X X
数日後
俺は優奈が通う女子大にやってきた。
ここは基本男性も出入り可能なので、男性の姿も見かける。
おそらく女子大の学生たちの彼氏とかだろう。
今日の俺は午前の授業しかなく、優奈が通う女子大は割と近い事から、彼女の大学の周辺で会うことにした。
どれどれと学校の正門へ言ったらそこには見覚えのある女の子がいた。
赤髪の童顔の奈々。
彼女も相当綺麗な方なので、やっぱり異彩を放っている。
奈々は誰かを探しているようであたりをうろちょろしている。
「あ、司っち!!」
「え、えっと……神崎さん?」
「奈々いいよ」
「……奈々」
奈々は小悪魔っぽく笑って恥ずかしがる俺の腕を自分の肘で突いた。
「ふふ、優奈から話は聞いてるよ。昔、優奈を助けてくれたよね?」
「あ、うん……」
俺があははと作り笑いしていると、奈々は口角を吊り上げてさらに俺の脇腹を突いてきた。
「なかなかやるじゃん!」
「い、いや……俺はその……」
俺が戸惑いつつ、奈々から離れようとしたけど、彼女は俺にもっと近づいてきては、
耳打ちする。
「本当に、本当にありがとう。私、優奈の幼馴染だから、ずっと優奈のこと見てきた。だからわかるの。ふふっ。優奈っちのことよろしくね。あの子感情表現が苦手だけど、心を開いたらすっごいんだから」
「っ!」
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