香川県民の日常

うどんだけじゃないけん、香川県

「それではみなさん、香川をもっとアピールできる案を、班で考えてみましょう！」

ホームルーム授業、教壇に立つ教師から香川のアピールポイントを話し合えと言われた。

班員は幸運にも仲のいい人で組むことを許されている。

周りの三人は仲のいい樋口、竹本、酒井。

全員で配られたプリントに目を向ける。

『うどんだけじゃないけん。香川県』

全員の思考が一致した。

「「「だけでは？」」」

「うん。だけだね」

「香川の文化…空海生まれの地善通寺が…」

「あ゛？今何つった樋口？空海生まれの地は海岸寺だろうが」

樋口の何でもない一言に竹本が激昂する。

それもそのはず。空海生まれの地として全国的に有名なのは善通寺。だが一説には海岸寺とも言われている。両派閥には深い溝が…というわけでもなく海岸寺派が善通寺派を極端に敵視しているだけだ。尤も、竹本はとんでもない過激派だが。

「はいはい。わかったから静かにしろって」

班唯一の良心、酒井が突っ込む。

「じゃあ酒井、なんかある？」

「えーと、、醤油豆？」

「そんなおいしいか？あれ？」

「まあおいしいけど…うどんほどのパンチはないよね」

醤油豆、却下。

「そうだ、善通寺のキウイフルーツはどうだ？」

竹本が思いついたように声を上げる。確かにおいしい。

「いいな。確かに美味い。でも…」

「いや、なにそれ」

「知らねーんだが」

「この有り様だぞ。県民にすら浸透してない。却下だな」

「ちぇー、善通寺の誇れるものなんだけどなぁ」

美味いが特産ですらないんだわ。

「えーっとじゃあ、、らりるれレタス？」

「言いにくい。却下」

「りふじん」

「じゃあほら！讃岐弁か！」

「ほぼ関西弁のパクリでは？むしろ劣化版。誰もつこーてないし」

「えーと、、玉ねぎ！」

「淡路島は兵庫だアホ！！！」

全く良さそうなものが出ない。さすが香川。辺境の地。

…そうだ、あれがあるじゃないか。

「オリーブってどうだ？全国で生産できてないしそこそこの知名度もある！」

「おおいいなそれ！」

「もうそれで行かね？」

「じゃあ俺書く…わ…？」

「どうした？」

そう言って四人で再びプリントに目を向ける。

『うどん以外で三つ書きましょう』

…………

「「「っざけんじゃねえよこのクソホームルームッ！！」」」

結局、オリーブ、四角いスイカ、空海にまとまりましたとさ。