第47話
「――はい、ボク達がお邪魔するよぉっ!」
「軽く吹き飛びました! なんだか以前よりも力が強くなっている気がします」
「やるわね! 私も負けていられないわ!」
俺がキメラさんと一緒に労働に対する不満など雑談をしていると――金属が砕ける音と金属製のドアが吹き飛んできた。
「……いや、誰だよ」
見慣れた姿のカーラ、ニーナ、ハンネの3人。
そして見慣れぬ魁偉で、浅黒い歴戦の格闘家――ゲームとか漫画に出てきそうなのが1人。
こいつが扉を吹き飛ばしたんだろうけど――声はマリエなんだよなぁ……。
……マリエ、幻想魔法で自分の身体をロリから防御形態――筋骨隆々の男に変えたな。
ってか、あの魔法って見た目変えるだけじゃ無くてこんなドアを蹴破れるぐらい能力も変化してくるものなの? ヤバくね?
気の抜けた声のカーラは特に何もしてないはずなのに、強気だ。
ニーナやマリエという虎の威を借る狐という言葉がカーラには良く似合う。
金髪で、よく見れば狐っぽい顔つきに見えなくもないしなぁ。
「ななな、何だ!?」
「巨人にプリースト、女騎士!?」
「ちょっと、槍を持った神聖なる戦乙女も忘れないでくれるかな!?」
1人だけ無視されたカーラが、研究員さんに抗議している。
「まぁ、戦士なら盾とランスのニーナの方が強いしなぁ。煌びやかで存在感あるし」
「それにしても、あの巨人の存在感は凄いね。肉体と声のアンバランスがなんとも言えない。強化ガラスで護られてる僕までビックリしちゃったよ。――……ん? あの子……」
「キメラさん?」
キメラさんが真面目な表情で見つめる先にいるのは――最も存在感が薄いハンネだ。
「――ええい、役立たずどもめがッ! 貴様等ぁッ! 外にいたモンスターや人工知能搭載アンドロイド達はどうした!?」
個室にいたシムラクルムも、ただ事ではない騒ぎを聞きつけ飛び出してきた。
「無人機もあんのかよ、この世界……。――おい! 気を付けろよ、その豚肉は『シムラクルム』! なんか魔神軍幹部の1人らしい!」
「何ですって!? こんな自己管理も出来てない奴が魔神軍幹部!?」
「ええ、この豚玉さんがですか!?」
「筋肉達磨め、誰が豚玉かッ!」
魁偉からは想像もできない可愛い声を発するマリエにシムラクルムは怒り心頭だ。
「こここ、こんな初心者向け依頼で魔神軍幹部が出て来るとか、ボク聞いてないないんだけど!?」
慌てふためくカーラを見て、逆に落ち着いたのか――1度バサッと白衣を整え、シムラクルムは改めて自己紹介をした。
「初めまして、未来の脅威諸君。私こそが魔神軍幹部の1人、『狂気』のシムラクルムだ。――今、私は忙しくてね。そこの何にでもなれる空洞のような魂、そして肉体を持った救世主への研究計画を練っている最中なのだ。貴様等には――被検体として死んで貰おうか?」
「……ふん、碌に戦えそうな人材もいないじゃない! みんな栄養不良に睡眠不足で、もやしみたいな身体ね! あなた1人で私達を倒すつもりなのかしら?」
盾とランスを構え、いつでも突っ込める姿勢でシムラクルムへ対峙するニーナに――シムラクルムは哄笑した。
「はっはっは! 確かに、私1人では辛いかもなぁ。――おい、やれ」
誰に命令したのか。
俺は研究員を見るも、研究員達は誰1人動いていない。
「――動かないで」
「ひっ……」
鋭利な刃物を頸動脈に当てられたのは――カーラ。
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