第46話

「ところで、あなたは何百歳も生きているそうだけど……。魔神族って皆、そんなに長生きなの?」

「まさか! 通常の人間と変わらないよ。……そもそも、魔神って何かを暁くんは知ってる?」

「いや、名前だけ」

「そうなんだ。魔神ってのは、自分の崇める神様への天啓レベルが100に至った者の事を言うんだよ。天啓レベルが100ってのは、神様とほぼ100%同じ力を持つって事なんだ。――それが偶々、君たち他の人から見たら邪神だった。それだけなんだよ」

「……あ、ってことは、あなたも天啓レベルが相当高いんすか?」

「まぁ、そうだね。僕の場合は戦闘経験で得たレベルより、実験でモンスターの天啓レベルを移植させられるかって繰り返した結果だけどね。でも、何処からかは解らないけど……天啓レベルが上がっていったせいか、寿命っていう生物の理からも外れちゃったんだよ」

「成る程、『永久に働け』みたいで嫌っすね」

「はっはっは! 暁くんは面白い事を言うね」

「俺なんて、親父の借金返す為に気付けば働いてたっすからね。親父から貰ったまともなもんなんて『筋力に優れた男は女性を護れ、泣かせるな』って言葉ぐらいしか貰ってないのにっすよ? 一生懸命働いたのに、老後もなく地獄行きだって告げられるし」

「一生懸命働いたのに、安心して暮らせない老後とか、孫やひ孫の成長も見られない、そんな寿命にも価値なんてないよ? しかもその子孫まで人質に取られて迷惑掛けちゃって、本当に僕は就職先を間違えたってさ、申し訳ないよ。……入社時には都合の良いことばっか言って、実際に入社すると全く違うしさぁ。――生きる為に働くんであって、働くために生きるんじゃないのにね」

「いやぁ、本当にその通りッすわ。社会なんてその辺を理解してない人が管理してて真っ暗っすよねぇ~。口では人権だの労働者の権利だの言いながらっすからね。言動が一致してないって言うか」

「わかるぅ。本当、その通りなんだよね。――いやぁ、暁君って本当に話しやすいね。なんか、人と打ち解ける為の特殊な訓練とかしてたの?」

「あ、あざます。それは多分、生前は営業職とかもしてたからっすかね?」

「あ、営業か! 確かに、人当たりも良いし暁君は向いてそうだよねぇ~」


 その後も、俺達は培養液の中でプカプカ浮かびつつ、労働談義や身の上話を交わした。

 俺はまだ飲めないが、同期の友達といく居酒屋とかって、こういう感じなんだろうなぁ。

 俺達の交わす言葉を、研究員の方々は時々『ウンウン』と頷きながらメモしていた。

 実験とかではなく、共感できた言葉みたいなのをメモしている気がした――。

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