第47話 誘拐犯との通話。
俺の元に誘拐犯から元に連絡が来たのは風探索に気付いた母さんから電話を貰って大体1時間後の事だった。
小夏のスマホからの着信だったがきっと相手は小夏ではない。
俺は慌てる事も喜ぶ事もせずに電話を取る。
「日向冬音さんですね?」
「お前は?」
「とりあえず奥様やお子様達は無事です。丁重におもてなしをさせて貰っています」
「丁重ね、ならなんでウチが荒れてて俺に一言も連絡がねえんだよ?」
こう言う場合、俺から小夏や秋斗の名前を出しても良いことはない。
「それは…奥様が拒絶をされましたので…」
「だろうな」
小夏の事だ、まず秋斗を連れて逃げようとする。
そして逃げ場を塞がれてもなんとかもがき、おばちゃんが人質にされていて受け入れたのだろう。
「酷く冷静ですね?」
「先に言うけど何かあれば世界は滅んでるよ」
「ご安心ください。お話しされますか?」
「出来るのか?」
すぐに電話先には小夏が出てきて「冬音」と声が聞こえてくる。
「合言葉、オニオンフライ」
「…もう、何それ?葡萄ジュース」
勿論そんな合言葉はない。
だが俺がチーズバーガーと言ったら小夏はコーラと言ってくれただろう。
「小夏だな」
「そうだよ。ここの人達は能力者の人で困ってるんだって」
「至上委員会か?」
「ううん。至上委員会の街は狭くて入れないからって野良になった人達」
野良って…てかその会話が許されんのかよ…。
「小夏、スピーカーにできる?」
「うん。もう、スピーカーだよ」
「野良って自分達で言ってんの?」
「そうだって。今、政府がここの人達は野良狩りって呼んでるけどそれをやってて困ってるから助けて欲しいんだって」
「俺に何をしろって?」
「人助け?」
なんか違和感がある。
いくら小夏が無敵の人でもこんなに好意的に話したりはしない。
「小夏、秋斗は?」
「…別室…お母さんと…」
「よくして貰ってるのか?」
「…うん」
「じゃあ今から行くから犯人に電話代わって」
これだけでわかる。
分断されていて俺を刺激せずに呼ぼうとしている。
電話を代わった男に「今すぐ人質なんてやめろ。お前達が生き残る方法は小夏と秋斗とおばちゃんを引き合わせて俺を待つ事だ。人質に何かあれば俺はお前達の敵になる」と言うと「何のことだか…」と言い出したが「バカが、俺と小夏の仲を舐めんな。わかるんだよ」と言うと「…もう迎えを出しています。1時間後に北ゲートに着くはずなので来てください」と言われた。
俺は連絡するなとは言われなかった事から母さんに電話をするとゴウゴウと風がうるさい。
「母さん?」
「あら冬音じゃない。進展はあったかしら?」
「まあね、犯人から電話がきたよ。母さんはバイクでも乗ってんの?」
「違うわよ。コイツらの態度と物言いに頭に来て議員会館を破壊してやろうと思ってるのよ」
それは本当だろう。
後ろからは「やってしまえ夢!」と言う楠木恋の声と聞き覚えのないオッサンの「我々も被害者なんです!やめてください!」なんて声が聞こえてくる。
「とりあえずこっちに帰ってきてよ。もしかしたら手が足りないかも知れないしさ」
「まあ良いけどどうするの?」
「1時間後に北ゲートとか言われたから行ってくるよ」
「萩月を連れて行きなさい」
「いいの?」
「多分こっちのトラブルと繋がっているから人手と証拠が欲しいのよ」
そう言った母さんは楠木恋に「平定に連絡、萩月達に冬音のサポートをさせて」と言った後で「逐一連絡しなさい。こっちは警察でもなんでも動員して追い付くわ」と言って母さんは電話を切った。
そしてすぐに弁当を持ったトンカツさん達が平定から言われたと言って玄関に集まってくれた。
「皆、ごめん。夜中だし厄介なんだけどさ」
「いいって、小夏達が待ってるよ!」
俺は感謝と同時に風で探しすぎて腹が減っていたのでその場でパン屋のカレーパンを食べておいた。
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