第40話 能力限界を測る日々。
俺は日影一太郎の言葉に関して最大限の警戒をした。
俺の目指す世界を聞いた日影一太郎は間違いなく自分が目指す世界と違っていれば妨害をしてくる。
そして俺自身、日影一太郎を危険視していて避けている。
それで旧人類と新人類の壁を取り除くなんて出来るのか、いや…これが適切な距離なんだと自分に言い聞かせた。
周りは小夏が妊娠をして張り切っていると言っていたが、そうではなくそれを理由に能力限界を測定するように力を奮った。
報告書を見た母さんからは「やだわ。冬音の本気って凄いわね」と笑われた。
「でも慣らさないとキツイね」
「よく言うわよ深山湖を一瞬で浄化なんて離れ業すぎるわよ。それでも十分凄かったけど半年前は1日仕事だったじゃない」
「難しいのは水の浄化に力を入れると湖底の浄化が甘くなるんだよ」
「それは仕方ないわよ。貴方の能力はあくまでイメージの発露、再現力であって萩月のように水の本質に触れていないのに力技でなんとかしているだけだもの」
母さんは能力に関して意見をくれる。
一応機械の測定は問題なしになるがゼロではないから困ってしまう。ゼロではないから徐々に再度汚染される場合もあれば徐々に自浄作用で浄化される場合もある。
そして「その力で日本を浄化したいのね?」と聞いてきた。
「そうだよ。そうすれば誰も争わないで済む。距離が近いから人と人は争うんだよ」
「応援してるわ」
俺は可能な限りやれる事、思いついた事を試してみた。蓄電池にしても100の蓄電池をブースターケーブルで繋いでもらって一気に充電をしてみたり風の除染作業も風を何処まで飛ばせるかをやってみた。
東京まで風を飛ばした所で夢野勇太の風に触れた気がした俺は日影一太郎から夢野勇太の電話番号を聞き出して電話をしてみる事にした。
俺は電話番号を変えていなかったので夢野勇太は「おやおや、久しぶりですね」と言って電話に出た。
俺が「どうも」と挨拶をすると「奥様のご懐妊は聞きましたよ。おめでとうございます」と言われた。
「はぁ?どうやって知ったんだそんなもん?」
「広報誌は我々の元にも届きますし、発電所なんかで話していれば職員経由で話は入ってきます。とりあえず不満ではありますが充電や除染はありがとうございます」
確かに施設での会話は筒抜けだけど広報誌には参った。どうやって手に入れるんだ?配ってるのか?
「それで?久しぶりに声が聞きたいだけではないですよね?」
「ああ、そうだった。今日さ、風の除染で空の汚染を破壊しながら東京まで風を飛ばしたら夢野さんの風に触れた気がしたから確認。後は俺の風ってわかる?」
「成る程、確かに感じましたよ。日向君は県境に居ますよね?よくコチラまで風を飛ばせましたね」
「まあね。聞きたいことは聞けたよ。ありがとね」
「いえ、我々は敵ではありません。万一至上委員会が危険思想を持ち出したらすぐに逃げてきてくださいね」
「んー…、あんがと。俺は俺でやるよ」
俺は電話を切るとそこには母さんがいて「バカね、風のことなら私に聞けばいいのに」と笑っていた。
「あ、確かに。母さんは能力者と言うより母さんって位置付けで忘れてたよ」
「まったく、冬音といるとたまにただの母親になってしまうのよね」
「嫌かな?」
「ばかね。嬉しいわよ」
「母さん」
「何?」
「小夏のつわりが酷くておばちゃんの所に行っているから夜食作ってよ」
「何をするの?」
「風を飛ばしてやれる事を教えてよ。忙しい?」
「いいえ。私の風は夢野勇太なんか比にならないわよ?」
母さんのホットサンドを食べながら風を飛ばす。
俺の風はやはり模倣なのだろう。母さんには勝てなかった。
だが母さんは泣いて喜んで「火は豊さんに似てて風は私似。ありがとう冬音」と言いながら色々と教えてくれた。
ちなみに母さんでも栃木県内までしか風を飛ばせないらしく、東京都辺りまで飛ばせる俺は規格外らしかった。
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