第38話 終わらない2人。

急に降ってわいた月曜日から3日間の休日。

第二至上都市に視察に行って帰ってこない母さんとおばちゃん。


これはどう考えても日影一太郎の策略だ。

だがそんな事を言われてもこれ以上はない。


常備薬に付いていた避妊具は使い切っている。


流石に子供は居たら楽しいが今じゃない。

こんな仕組まれた日に授かってたまるか。


一箱を5時間で使い果たした俺にはどこか余裕があった。


このペースならまた一年くらい我慢できるんじゃないか?


そんな余裕をかまして夕飯は何となくお祝い代わりに美味しいものでも食べに行かないかと小夏を誘おうとした俺だったのだが…。


小夏は急に真っ赤な顔で「あのね、紙袋は少し大きかったよね?」と言った。

俺が不思議そうに「小夏?どうした?」と聞くと小夏は「日影さんがくれたのは下着だけじゃ無かったんだよ」と言って寝室に消えていく。


俺の「は?」と言う返事も無視して寝室に消えた小夏が戻ると紙袋の中には更なるセクシー下着と大量の避妊具が入っていた。


そこに添えられたメモの1枚目は最初の緩急をつけるといいよと言う提案で2枚目は「冬音君は我慢するタイプだから備蓄の分が終わって当分我慢とか言ったらこれを見せてあげてね」と書かれていた。



日影一太郎…恐るべし。


当然、しない言い訳はことごとく消え去った俺は紙袋を指差しながら「飯作る時間も勿体無いから食べに行くか弁当を買おう。後その水色の奴着てよ」と言うと小夏は嬉しそうに「上は犬?」と聞いて来た。茶色のワンコの中身が水色下着の小夏もいいが今の俺はピンクのウサギだ。


俺が首を横に振って「ハズレ、ウサギ」と言うと積極的な俺に嬉しそうに目を輝かせた小夏は「わかったよ〜」と言って紙袋から水色のセクシー下着を取り出した。


こうして休みの間馬鹿みたいにやらかした俺達に日影一太郎はお土産と言って更に避妊具を持ってきた。


俺たちを何だと思っているのか…。

だが次の補充までを考えるとありがたい。

本当にありがたい。


「どうも」

「おや、嫌がらないねぇ」


嬉しそうな日影一太郎に「今回は俺の負けだよ」と言うと日影一太郎は「今夜は祝杯かな。花子の遺影と美味しいお酒が飲めそうだよ」と言って「お幸せに」と言って帰って行った。



ちなみにおしゃべりな小夏はおばちゃんと母さんにキッチリ報告をしていた。


いや、「冬音とやりました!」なんていくら小夏でも言わない。


「赤ちゃんが来てくれたら色々教えてね!」とおばちゃんに言い、母さんには「お仕事が忙しいとは思うんですが赤ちゃんの事では助けてください!」と挨拶しに行っていた。


まあ直訳すればそう言う事をしたから万一の時はよろしくと言うわけで2人して「おめでとう」と言いながら俺に「孫は任せてバリバリ働いてね」と言ってきた。



あ、トンカツさんは早々に小夏から聞いていて除染の日に水源で「やっと?」と言われた。

ちなみに小夏は麓待機で弁当を用意してくれている。


俺は小夏の口の軽さに「…小夏…マジか」と驚きを口にするとトンカツさんは「もう、私は小夏が来られなくなったら日向のエネルギー補充係を代わって欲しいって頼まれたの」と言う。


小夏は一応「冬音としたよ☆」ではなかったようで安心したが、その気の回し方はバラしている事と同義だから辞めて欲しい。


「……ご飯係なら銘菓君とかおにぎり君とか居るのに…」

「馬鹿じゃないの?小夏だってあの2人にそんな話出来るわけないでしょ?」


言われてみれば確かにそうだ。


だがまあ噂なんてすぐに出回る。

肉屋のおっちゃんは嬉しそうに「冬音君の為にパワーアップしたニンニクマシマシマシマシチキンステーキだ!」と言ってウチまで持ってきてくれた。


話が出回った事を知った俺は恥ずかしくて当分商店街に行けなくなったのだが、日影一太郎から「恥ずかしくても堂々と行った方がいいよ?姿を見せないと巣篭もり子作りをしてると思われちゃうよ?」とメッセージが届いて俺は小夏と腕を組んで商店街を闊歩した。


自棄なのは言うまでもない。

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