第37話 止まらない2人。

確信はあった。

こうなったら俺も小夏も引くに引けない。


真っ赤な顔で手を繋いで家に帰る。

不思議と誰にも会わなかった。


一瞬、心のどこかで誰かに会って出鼻を挫かれたい気持ちもあった。


だが躊躇を許さないように誰にも会わず、下手をしたら信号待ちすら無かった気がする。


喉がカラカラになっていた。

手にはジュースを持っていたのに気付かなかった。


家に入った小夏は熱い息遣いで「日影さんの袋を見てくるね」と言って寝室へと消えた。

冬でなくてよかった。


冬なら小夏の息は蒸気のようになっていただろう。


少しして小夏は俺を呼んだ。

こっちに来るのではなく寝室に俺を呼ぶ。


まさかの期待に俺はうわずった声で返事をして寝室のドアを開けるとそこには猫の着ぐるみパジャマを着た小夏が俺を待っていた。


なんとなく一瞬でホッとして力が抜けた。


これが全裸の小夏だったら危なかった。

だが小夏は着ぐるみパジャマで俺を呼んだ。


「可愛いよ。イチャイチャしながら寝ようぜ」

俺が前に出ると小夏は着ぐるみの前をはだけさせた。


そこには大神茜が選ぶようなエロ下着、セクシー下着に身を包んだ小夏が居た。


「こ…ここ……小夏?」

「日影さんの袋に入っていて、手紙にいきなり下着姿はダメだって、着ぐるみパジャマで出迎えて冬音がホッとしたら見せてあげるんだよって…」


日影一太郎恐るべし。

しかし俺にはそんな事を考える余裕は無かった。


確かに小夏がセクシー下着で待ち構えても冷める。

それは着ぐるみパジャマでも同じだ。現に俺はホッとして力が抜けた。


だがこの緩急の付け方は凄い。


俺はうわずる声で「小夏……可愛い」と言って近付いていた。


小夏は俺に抱きつくと「冬音、我慢できないよ。冬音の赤ちゃんが欲しいよ…」と囁いてきた。


もう俺は止まらなかった。


やり方なんてわからない。

時間はあったから色々調べてしまった。


なんで取り締まらないかわからないがコインランドリーにそういう本もあって気分転換に銭湯に行った日には小夏を待ちながら読んでしまった。

大神茜を馬鹿にできないがエロ本見ながら何とか自分の知識を補うしかなかった。


小夏の声と反応を見て必死に拒絶や我慢じゃないかを考える。

それでもわからない事は小夏に聞く。

聞きながら小夏を受け入れて小夏に受け入れて貰った。


昼飯もまだだった俺たちだったが時間を忘れてしまった。


気付くとあっという間に5時間も経っていた。

我慢した約2年は一度や二度では収まらなかった。


それは小夏も同じだった。

一度も昼飯の事を言わずに止まらなかった。


時計を見て窓の外から見えてくる夕焼け空を見て「…ごめん。お昼…時間忘れてた」と言うと小夏も真っ赤になって「無理だよぉ、ご飯どころじゃなかったよ」と言う。

そう言って2人でベッドの上で笑い合う。


だが俺の能力は安定して食べないと一気にカロリー不足に陥る。

俺は半裸で小夏は下着無しで猫の着ぐるみパジャマでリビングに行って備蓄の菓子を食べながらスマホを見るとメッセージが入っていた。

画面を見ると母さんからで「急で申し訳ないけど月曜日から3日間休みね。ちょっと予定変更が入ったの。ずっと正月も何もなく土日以外休み無しだったからのんびりしてね」と入っていて、小夏の方はおばちゃんから「皆さんに第二至上都市の視察に呼んでもらえたから今から行ってくるわね。何日か向こうで生活してみて旧人類として意見を述べる事になったの。お仕事をしたいと言っていたから呼んでもらえて嬉しい。頑張ってくるわね。冬音君にもよろしくね」と入っていた。


日影一太郎恐るべし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る